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第一部 救われない魂たち

新たなる命

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――その日の夜・・・・
 その日は、ガレオスでお祭りのある日だった。
 花火がうちあがっており、夫婦で見学して、帰ってきての、フラウの突然のセリフだった。

永遠の王よネブヘオフ
 不死身の王子よヘカァト・エッタ
 命の神よ。ネチェル・アンフ
 永遠を創り給いし方よ。アーン・へフ
 と、二人で一緒に、手をつないででもいいのだが、詠唱するのだが・・・。

 フラウがララに贈った詩は、素敵な詩だった。

「なぜかは知らないが 心わびて
昔の伝説(つたえ)は そぞろ身にしむ
寂しく暮れゆく ラインの流れ
入日に山々 あかく栄ゆる

美(うつわ)し乙女の 巌頭(いわお)に立ちて
黄金の櫛とり 髪のみだれを
梳きつつ口ずさむ 歌の声の
神(くす)怪(し)き魔力(ちから)に 魂もまよう

こぎゆく舟びと 歌に憧れ
岩根もみやらず 仰げばやがて
浪間に沈むる ひとも舟も
神(くす)怪(し)き魔歌(まがうた) 謡うローレライ」

 フラウが、メッセージカードに書いたその詩を、ララに手渡した。
「僕が、ローレライ伝説から、とって自分で書いたんだ、ララ。君の、その美しさに、ローレライを思い起こしてね」と、フラウが言った。
「あら、私は魔女ってわけね」と言って、ララが笑う。
「そうじゃないよ、ローレライは精霊の一種だから。ララは魔法学んでないけど、魔法を学ぶものにとっては、なじみ深い題材なんだ」と、フラウ。
「ララは聖女だよ」と、フラウが言った。
「ありがとう、フラウ」そう言って、二人はキスした。

 やがて、ララは一つの命を身ごもった。

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