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第三章 レイラの涙

シャドウ襲撃

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三、襲撃

やがて、次の次の日に来たセアラ姫は、レイラが妊娠したことを告げられ、キャッとなり、「おめでとうございます、レイラ様、」とだけ言ったのだった。
「俺も嬉しいんだ、」と、ミナス=ジェライスがはにかみ笑をして言った。
「俺とレイラの子だもんな!な、レイラ!!」
「そうね、ジェライス」
(あらら、)と、セアラ姫は思ったのだった。
(すっかりラブラブだわ、あまり長居して、夫婦の時間の邪魔しちゃ、悪いわね)とも思った。
「あのぅ、レイラ様・・・」と、セアラ姫。
「どうしたの、セアラ」
「いつか、私にも、婚約者が現れるでしょう。その際、レイラ様とミナス=ジェライス様のように、いつもにこにこしている夫婦になる秘訣とか、ありますか」
 レイラは少し考え、
「セアラちゃん、あなたにも必ず王子様は現れるわ!いい人が。この人しかいない、って人がね。大切なのは、お互い思いやることかしら。夫婦だって、結婚する前は、ただの他人、ってよく言うでしょ。そんな感じかしらね」
「親しき仲にも礼儀あり、ってことですね、レイラ様」と、セアラ姫。
「そうね、セアラちゃん。そんな感じよ!今回の婚礼のことでは、あなたにもだいぶお世話になったわね!お礼を言わなきゃね!」
「いえ、レイラ様、母から、レイラ様にご挨拶をしておいて、と言い使っております。レイラ様は、私の母とも仲が良かったし。では、レイラ様、わたくし、もうそろそろ、お暇しなければ。公務の練習がありますので」と言って、セアラ姫はお茶を飲み切ると、にっこり微笑み、レイラとミナス=ジェライスと握手し、別荘を後にしたのだった。
(こう考えてみると・・・)と、セアラ姫は思ったのだった。
(ミナス=ジェライス様もかなりのイケメンよねぇ・・・レイラ様、羨ましい)
 セアラ姫を乗せた馬車が、車道を走り去っていく。

  *

「レイラ・・・」そう言って、二人っきりになって、ジェライスが、レイラを抱きしめる。
「俺がレイラを守る。お腹の子も。一緒に、二人で、育てような!!」
「はい、ジェライス・・・。性別はまだわからないけれど、二人の大切な子だから」
「そうだな」
 二人の幸せな日々は、2~3カ月ほど続いた。
 レイラを見る優し気なジェライスの瞳に、レイラは心が張り裂けそうになるのを感じた。
 11月ごろだろうか。
 雲が空中を覆い、雷が鳴る、そんな日々が続き、テルマールの国のシャドウ教の信者たちが、リヒテンシュタインの国に宣戦布告してきた。
 シャドウの元賢者が、オルレアン湖から、リヒテンシュタインの国に上がる裏口ルートを見つけていたのだが、ついに10万人ほどの教徒たちが、リヒテンシュタインに戦争をしかけてきたのである。
 リヒテンシュタインの人口は、35万人とちょっとだった。
 国中の兵士や魔法使い、騎士たちが、空中の異空間から現れるシャドウの武装した兵士たちと戦った。魔法使いたちも混ざっている。
 リヒテンシュタインの兵士たち(一般市民も含め)は、寿命が200年あるとはいえ、深い傷を受けると、死んでしまうのは他の下界の人間と変わらなかった。
 一般市民や、女子供は逃げまどった。
 戦いは、3日3晩続いた。
「レイラ様!!」と、ガウェイン・マササッチョ・アントニオ卿が、とある日、レイラたち夫妻の別荘にやってきた。
「マササッチョ卿!!」と、レイラが椅子から立ち上がる。ガウェインは、頭からちょっと出血していたが、重い剣を片手に携え、武装していた。
「無事か!?来るのが遅れたが・・・!!」と、マササッチョ。
「10名ほど、シャドウの奴らがこの近辺に現れたそうですが、ジェライスが始末しに行きました。今日は、まだ帰っていませんが・・・私も心配で・・・」と、レイラがはらはらと涙を流す。
「ジェライスが、この別荘には、シャドウが入れないよう、結界のようなものをはってくれました」と、レイラ。
「そうか、俺も助太刀に行ってくる!!」
「待って!」と、レイラ。
 レイラが、自身の涙の一粒に気が付いて、それを小瓶に入れ、マササッチョに、「かがんで」と言って、マササッチョの頭部の傷にふりかけた。
 と同時に、マササッチョの傷が、みるみる治っていく。流れ落ちる血も止まった。
「・・・そうだったな、あんたの涙には、そういう効果もあったんだっけな、」と、マササッチョが苦笑して言った。
「任せてくれ、俺があんたの旦那を守る!あんたには、その術だけは、使ってほしくなかったんだがな」と言い残し、ガウェイン・マササッチョは、駆け足でミナス=ジェライスの後を追った。
(ジェライス・・・!マササッチョ・・・!!)と、レイラが手を胸にあてて、心配して思う。
(どうか、二人が無事でありますように・・・!!)
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