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現在:10年目の再会

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 怖かったんだ……。優臣を忘れられない俺を許してもらえると思えなかったから。この先もずっと優臣を好きでい続けることだって、許してもらえるとも思えないからさ……。だから何も言えなかった。……優臣がもうこの世に居ないことを口にすることすら、俺はそう……怖かったんだよ。

 悔いが……ない、なんてことはない。
 だけど今日で全部おしまいだ。悲しかったことも、苦しかったことも全部忘れて……、俺はこれから……優臣に会いに行く。

「最後に殴られてくるよ、臣……。そしたら、傷の手当ては臣がしてくれよな。救護班なんだろ、お前? お前の壊れた愛車は、俺が天国で10年ぶりに走れるように直してやるよ。一緒にツーリングしようぜ。お前ほとんどペーパードライバーだろうけどさ」

 ははっと笑いを零し、俺はいつもより早く墓参りを済ませた。

「じゃ、またあとでな、臣。そっち行く前に、親の顔だけ見てくるよ」

 車を飛ばして実家に向かった。パートに出る前の母と半時間ほど一緒に過ごし、スーパーの店長をしている父にのそっと会いに行った。そのあと弟の家を訪ねる。今日は土曜日。仕事も休みだろう。突然の俺の訪問だったが、弟夫婦は快く俺を家に上げてくれて、お昼までお邪魔させてもらった。昼食を誘われたけど、遠慮しておく。

「じゃあな」

 まだ一歳にもなっていない甥っ子は、俺の持ってきたボールを手に持ちながら無邪気な笑顔を見せてくれる。最後に抱っこさせてもらうと、その体温に胸がじんとした……。

 今日で終る。全部サヨナラだ。

「元気でな、奏翔かなと

 弟の肩を叩き、俺は一度、自分のアパートに戻った。
 家の中には入らず、バイクに乗り換える。

 そして、初めて手ぶらで優臣の家の前に立った。
 どうせ殴られて終わりなのだ。そして今日で終わるんだ。手ぶらでいいだろう。

「けじめつけて終ろう……」

 玄関から見える優臣の部屋の窓。10年前から変わらないカーテンは、すっかり色褪せている。けど、珍しく……カーテンが開け放たれていた。いつもきっちり閉められているのに。

「珍しいな……」

 そう思ったけど、今日が土曜日だからかもしれないと思った。休みの日くらいカーテンを開けているのかもしれない。車も二台、家の前に停まっている。おじさんとおばさんは在宅だ。

 深呼吸をして、チャイムを鳴らそうとしたその刹那。

 玄関ドアが勝手に開いた。
 そしてそこに立つおじさんとおばさんが、

「待っていたよ、柄沢くん」

 俺の名前を……10年ぶりに呼んでくれた。
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