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秘密の宝物
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「ふふ……。僕はね、亮介と桜を見に行きたいんだ」
そう言うと、亮介は僕の手の中の服を見て、そういうことかと眉を垂れた。
「今だからこそ、分かるよ。あの頃、どんなに苦労して花見デートの日を確保してくれたのか。本当は、絶対休めない時期だったんだよね?」
苦笑いする亮介だったけど、抱き寄せている僕の頭に頬を摺り寄せ、「だってさ」と呟いた。
「お前、珍しく俺をデートに誘ったから」
そんなこと……。
ほら、やっぱり。僕の言葉を尊重するよね。仕事を優先したって僕は全然怒ったりしないのにさ。
「出掛けたいって、桜が見たいって言うから、叶えてやりたかった。無理に休んで正解だったよ」
服を握りしめている僕の手に手を添え、亮介は柔らかく僕へ口づけをくれた。
「比呂人の大事な思い出になれてる。この服を着て、また新しい思い出を作ろう。桜は……難しいかもしれないけど、比呂人の願いを俺、一つでも多く叶えていきたいよ」
いつも……いつも甘やかされているな。
涙が出そうになるのを、息と一緒にぐっと飲み込む。そして僕は大きく頷いた。
「好きだよ……亮介。この気持ちにブレーキが掛けられない。怖いほど……愛してる」
僕もキミの願いを叶えてみたい。亮介は僕にどんな望みを持っているのかな。
「ばーか。俺なんかとっくにブレーキ壊れてるわ」
目を細め眉を垂らす亮介は、僕の猫毛を優しく撫でつけ、こつんと額をくっつけて来た。
「比呂人が我慢せずに、そうやって思ってることちゃんと言葉にしてくれることが、俺は何より幸せなの。それが我儘でも無茶ぶりでも、我慢されるよりずっといい。俺はね、比呂人の我儘を聞くために居る “恋人” なんだから」
恋人――。
親友でも、アイドルでもない。亮介は僕の、恋人。
我慢していた涙はやっぱりポロポロ零れ落ちて、それを隠すように両手で顔を覆った。
ずるいよ。僕だってカッコつけたいのに、全然……敵わないじゃないか。亮介の愛は深すぎるよ。溺れて死んでしまいそうだ。
「あ、そうだ。ちょっと待ってて」
泣き出してしまう僕の頭をひとしきり撫でた亮介は思い出したように寝室を出ると、隣の仕事部屋からガサゴソと音を立ててから再び僕のもとに戻ってきた。その手には、見たことのない分厚い本。
いや、本じゃない。
これは……アルバム。
「……うそ!」
持っているかもしれないとは思っていたけど、亮介はやっぱりちゃんとあの頃の写真を残してくれていた。
「一年四か月。俺たちの大切な記録。悪いけど、一度だって捨てようとは思わなかったぜ? 辛くて死にそうな日でも……、写真の中の比呂人の笑顔が偽物だったのかなって疑う日があっても、捨てようなんて思えなかった」
亮介の男らしい手がアルバムを開き、花見デートの写真を僕へ見せてくれた。
河川敷を歩く僕、お弁当を食べる僕、途中で買ったクレープに喜ぶ僕……。楽しかった、花見デート。
「綺麗だ……比呂人。この時の笑顔はやっぱり嘘じゃないんだな。それが知れて、俺嬉しい。もう一回、写真、撮り始めようかな」
その言葉は、僕の心臓を貫くような言葉だった。
「え……?」
そう言うと、亮介は僕の手の中の服を見て、そういうことかと眉を垂れた。
「今だからこそ、分かるよ。あの頃、どんなに苦労して花見デートの日を確保してくれたのか。本当は、絶対休めない時期だったんだよね?」
苦笑いする亮介だったけど、抱き寄せている僕の頭に頬を摺り寄せ、「だってさ」と呟いた。
「お前、珍しく俺をデートに誘ったから」
そんなこと……。
ほら、やっぱり。僕の言葉を尊重するよね。仕事を優先したって僕は全然怒ったりしないのにさ。
「出掛けたいって、桜が見たいって言うから、叶えてやりたかった。無理に休んで正解だったよ」
服を握りしめている僕の手に手を添え、亮介は柔らかく僕へ口づけをくれた。
「比呂人の大事な思い出になれてる。この服を着て、また新しい思い出を作ろう。桜は……難しいかもしれないけど、比呂人の願いを俺、一つでも多く叶えていきたいよ」
いつも……いつも甘やかされているな。
涙が出そうになるのを、息と一緒にぐっと飲み込む。そして僕は大きく頷いた。
「好きだよ……亮介。この気持ちにブレーキが掛けられない。怖いほど……愛してる」
僕もキミの願いを叶えてみたい。亮介は僕にどんな望みを持っているのかな。
「ばーか。俺なんかとっくにブレーキ壊れてるわ」
目を細め眉を垂らす亮介は、僕の猫毛を優しく撫でつけ、こつんと額をくっつけて来た。
「比呂人が我慢せずに、そうやって思ってることちゃんと言葉にしてくれることが、俺は何より幸せなの。それが我儘でも無茶ぶりでも、我慢されるよりずっといい。俺はね、比呂人の我儘を聞くために居る “恋人” なんだから」
恋人――。
親友でも、アイドルでもない。亮介は僕の、恋人。
我慢していた涙はやっぱりポロポロ零れ落ちて、それを隠すように両手で顔を覆った。
ずるいよ。僕だってカッコつけたいのに、全然……敵わないじゃないか。亮介の愛は深すぎるよ。溺れて死んでしまいそうだ。
「あ、そうだ。ちょっと待ってて」
泣き出してしまう僕の頭をひとしきり撫でた亮介は思い出したように寝室を出ると、隣の仕事部屋からガサゴソと音を立ててから再び僕のもとに戻ってきた。その手には、見たことのない分厚い本。
いや、本じゃない。
これは……アルバム。
「……うそ!」
持っているかもしれないとは思っていたけど、亮介はやっぱりちゃんとあの頃の写真を残してくれていた。
「一年四か月。俺たちの大切な記録。悪いけど、一度だって捨てようとは思わなかったぜ? 辛くて死にそうな日でも……、写真の中の比呂人の笑顔が偽物だったのかなって疑う日があっても、捨てようなんて思えなかった」
亮介の男らしい手がアルバムを開き、花見デートの写真を僕へ見せてくれた。
河川敷を歩く僕、お弁当を食べる僕、途中で買ったクレープに喜ぶ僕……。楽しかった、花見デート。
「綺麗だ……比呂人。この時の笑顔はやっぱり嘘じゃないんだな。それが知れて、俺嬉しい。もう一回、写真、撮り始めようかな」
その言葉は、僕の心臓を貫くような言葉だった。
「え……?」
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