ココア番外編

2wei

文字の大きさ
上 下
85 / 97
秘密の宝物

しおりを挟む
 風呂を済ませ、僕らは寝室のベッドの上に座り込んだ。

 亮介はズボンのポケットに秘密のナニカを隠し、僕は今のところ手ぶらだ。

「おい、準備する気もねぇのか」
「いや……、今簡単に取り出せない状態なんだよ」
「一体どこに隠したんだよ。この家にそんな難解な隠し場所があるとは思えんのだけど」

 うるさい男だな。ほっといてよ。出すとなると、亮介の服ごと取り出さなきゃいけないんだよ。どこまで僕を辱めたら気が済むんだ。

「じゃ一回部屋出てってよ」
「なんでだよ。これから拝見するんだから、隠し場所を秘密にする意味ねぇだろ」
「いいから、出てってよ!」
「嫌だね! どんな秘密工作してんのか、しかと見届けてやらぁ!」

 ベッドの上で取っ組み合いの喧嘩だ。いい年こいた男二人が本気で力比べをしている。
 亮介のヤツ、本気だ……っ!
 コンサートのために日常的に体を鍛え体力をつけている男と、一日中レストランを駆け回っているだけの僕とじゃ、当たり前に僕が押し倒された。

「さぁ、白状しろ。どこに隠した。ピンクローターでどこを虐めてほしいんだ?」
「ローターじゃないって言ってるだろ!」

 本気で殴ってやろうと拳を振ったが、ひょいっと簡単に避けられ、そのまま両腕をベッドへ縫い付けられた。細められた亮介の大きな瞳は前髪の隙間からこちらをじっと見つめ、整った唇はゆっくりと僕の耳へ近づいた。

「早く出せ……」

 その低く渋く……強烈に色気のある声。

 僕は、この声が苦手だ。
 ゾクゾクと体が震え、顔に血が集まってくるのが自分でも分かった。

 昔から、どうしてもこの亮介の声が……僕の性感帯に触れてしまう。

「や……め…っ」
「ほら、いい子にして? ……比呂人」

 ふっと耳に息を吹きかけられ、僕は湯を沸かす勢いで赤面して体を縮めた。

 亮介は卑怯だ。この声が自分の武器だって分かってやってる。僕の弱点をこんなところで突くなんて……、全然男らしくない!
 いや……、ビックリするほど男前な声なんだけど……さ。

「うぅ……」

 僕は呻き声をあげ、観念した。

「分かった……分かったから、もう……やめて」

 真っ赤な顔。亮介はそんな僕を満足げに見下ろし、「よし。いい子だ」と口元を吊り上げた。

 ム……ムカつく。

 僕はのそのそとベッドを下り、クローゼットの扉を開いた。

「……せーの、で交換だよ?」

 自分のキャビネットの引き出しを引っ張り出し、後ろの亮介にもう一度確認する。

「おう。せーの、で交換だ」

 後ろからはっきり返答を貰い、二人一緒に声を出した。


「せーの……!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

【新作】読切超短編集 1分で読める!!!

Grisly
現代文学
⭐︎登録お願いします。 1分で読める!読切超短編小説 新作短編小説は全てこちらに投稿。 ⭐︎登録忘れずに!コメントお待ちしております。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて── ※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。 ※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。 ※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。

選択的ぼっちの俺たちは丁度いい距離を模索中!

きよひ
BL
ぼっち無愛想エリート×ぼっちファッションヤンキー 蓮は会話が苦手すぎて、不良のような格好で周りを牽制している高校生だ。 下校中におじいさんを助けたことをきっかけに、その孫でエリート高校生の大和と出会う。 蓮に負けず劣らず無表情で無愛想な大和とはもう関わることはないと思っていたが、一度認識してしまうと下校中に妙に目に入ってくるようになってしまう。 少しずつ接する内に、大和も蓮と同じく意図的に他人と距離をとっているんだと気づいていく。 ひょんなことから大和の服を着る羽目になったり、一緒にバイトすることになったり、大和の部屋で寝ることになったり。 一進一退を繰り返して、二人が少しずつ落ち着く距離を模索していく。

処理中です...