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幸せバレンタイン
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「あの……あ、その……えぇと……」
彼女はしどろもどろになりながら、肩に提げたままの鞄の紐をぎゅっと握った。そして意を決したように僕を見上げた。
「あの……! あの、その、いつも……っ、その……うちの加藤が、お世話になって……るので、こ……こ、こ……これを……っ!」
こちらにまで熱が伝わってきそうなほど赤面している彼女は、呂律怪しく、ピンク色の包装紙に茶色のリボンが結ばれているバレンタインチョコを、僕へと差し出した。
「あのその、変な意味じゃなくて、日頃のお礼を込めまして……っ、加藤の代わりに……、いやその、あの……っ、いや、あのぅ……」
そうか……、それはビックリだ。まさか彼女が僕の事をそういう目で見ていたなんて今の今まで気付かなかった。なんなら、こんなに可愛くてふわふわした女の子が亮介のマネージャーなんて許せない、なんて思ってたくらいなのに。
「ありがとうございます。僕甘いの好きなのでとても嬉しいです。大事に頂きますね」
快く受け取ってあげると、彼女は赤面したまま嬉しそうに僕を見上げ、「カッコイイ」と心の声が漏れ出ている事に、全く気付いていないようだった。
聞こえてるよ、と言おうか迷ったけど、気分がいいのでそのままにしておこう。僕なんかよりよっぽどカッコイイ亮介のマネージャーをしているくせに、僕なんかが好みらしい。変わった子だと思う。
でも、ヘタに亮介に恋心を抱かれるよりはマシなので、このまま泳がせておくのが賢明だな。
「久しぶりにチョコなんか貰ったな。ホワイトデーを忘れないようにしないと」
本当は毎年アルバイトの女の子達や、お客さん達から貰っているけど、この子はそんなこと何も知らないから、どうとでも言える。
彼女はまた僕へ目をハートにすると、「そんなお礼が欲しいわけではないですから!」と首を振った。
ここまで彼女を泳がせておいてなんだけど、お礼は期待しないでね。本気度の低いものしか用意できないから。
彼女はその後、バタバタと仕事へ戻り、僕も亮介といってきますのキスを交わして仕事へ出かけた。
仕事へ向かいながら改めて思う。今日は、バレンタインか……と。
彼女はしどろもどろになりながら、肩に提げたままの鞄の紐をぎゅっと握った。そして意を決したように僕を見上げた。
「あの……! あの、その、いつも……っ、その……うちの加藤が、お世話になって……るので、こ……こ、こ……これを……っ!」
こちらにまで熱が伝わってきそうなほど赤面している彼女は、呂律怪しく、ピンク色の包装紙に茶色のリボンが結ばれているバレンタインチョコを、僕へと差し出した。
「あのその、変な意味じゃなくて、日頃のお礼を込めまして……っ、加藤の代わりに……、いやその、あの……っ、いや、あのぅ……」
そうか……、それはビックリだ。まさか彼女が僕の事をそういう目で見ていたなんて今の今まで気付かなかった。なんなら、こんなに可愛くてふわふわした女の子が亮介のマネージャーなんて許せない、なんて思ってたくらいなのに。
「ありがとうございます。僕甘いの好きなのでとても嬉しいです。大事に頂きますね」
快く受け取ってあげると、彼女は赤面したまま嬉しそうに僕を見上げ、「カッコイイ」と心の声が漏れ出ている事に、全く気付いていないようだった。
聞こえてるよ、と言おうか迷ったけど、気分がいいのでそのままにしておこう。僕なんかよりよっぽどカッコイイ亮介のマネージャーをしているくせに、僕なんかが好みらしい。変わった子だと思う。
でも、ヘタに亮介に恋心を抱かれるよりはマシなので、このまま泳がせておくのが賢明だな。
「久しぶりにチョコなんか貰ったな。ホワイトデーを忘れないようにしないと」
本当は毎年アルバイトの女の子達や、お客さん達から貰っているけど、この子はそんなこと何も知らないから、どうとでも言える。
彼女はまた僕へ目をハートにすると、「そんなお礼が欲しいわけではないですから!」と首を振った。
ここまで彼女を泳がせておいてなんだけど、お礼は期待しないでね。本気度の低いものしか用意できないから。
彼女はその後、バタバタと仕事へ戻り、僕も亮介といってきますのキスを交わして仕事へ出かけた。
仕事へ向かいながら改めて思う。今日は、バレンタインか……と。
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