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12月は嫌いだ。どれだけ楽しい思い出で上塗りしようとも、12月だけは好きになれない。
月末のクリスマスを比呂人と一緒にお祝い出来ないし、年明けを一緒に過ごすことも出来ない。俺は毎年カウントダウンコンサートに駆り出され、家に帰ってくる頃には、比呂人はすでに夢の中だ。
年明けなんだし、この日くらい彼氏の帰りを待っていてくれてもいいところを、比呂人はさっさと寝てしまう。そういう所は本当に昔から変わらない。
第一、12月はそれだけじゃない。嫌なことばっかりだ。
そのうちの一つ。
12月16日。
俺にとってこの日は悪夢だ。この日を好きになることは、この先きっとない。そんな風に思う。
比呂人はこの日をどう思っているんだろう。どんな気持ちで迎えているんだろう。
だってさ。比呂人はこの日、決まって俺を晩酌に誘う。いつもはそこまでお酒なんて飲まないのに。
それでも、その日が特別 "何か" ってわけじゃない。比呂人も俺も普通。いつもと変わらない。記念日でもないから豪華な晩御飯というわけでもないし、別れた日だからといって、お互いが陰気臭いオーラを出しているわけでもない。わざわざ別れた日だね、とほじくり返すこともないしな。
ただ朝から俺たちは「普通」を装おうとしている気がする。
けど、今年の12月16日は少し違った。
「飲まない?」
毎年のように晩酌に誘われ、俺はテレビから比呂人に視線を向けた。で。びっくりした。
短刀ほどの長いナイフを比呂人が片手に持っていたからだ。
ガタガタっとソファから落っこち、何事かと凝視すると、それは見覚えのあるサーベルだった。
「あははっ!新喜劇みたい!シャンパンサーベルだよ。忘れちゃった?」
キラキラ光るサーベル。
そうか……、俺が初めて比呂人の誕生日に買ったプレゼント。まだそんなに綺麗なのか。もしかしてちゃんと手入れをしているのかな?
「木崎さんがね、シャンパンを一本くれたんだ♪ 美味しんだってさ、これ」
木崎さんというのは比呂人の店に勤めているバーテンダーさんだ。彼がくれたというシャンパンのラベルは、季節感のある浮かれたクリスマスカラーで彩られていた。
「へぇ、そ、そうなんだ。いや、普通にビビったって。刀かと思った」
「腹切り~~って? あはは! ゲームのしすぎだよ」
いやまぁ……、刀のゲームしてるけどさ。
「シャンパンサーベルって使ったことある?」
突拍子もないことを聞かれた。
「ある訳ねぇだろ」
「見たことは?」
見たことくらいはある。地元の友人の結婚式とかで、何度か……。
頷く俺に比呂人はサーベルとシャンパンを差し出した。
「やってみる? スカッとするよ」
「いやっ! いいよ! 怖いし!」
「一歩間違ったら瓶が か な り 破損するから気をつけてね」
「いや、だからしねぇって!」
「はい、どうぞ♪ 」
「聞けっ! 人の話を!」
いつも通りだ。いつも通り比呂人は俺をからかうし、俺は比呂人に振り回される。本当にいつも通り。
楽しそうに笑う比呂人は、仕方ないなぁ~と言いながらゴブレットを俺に持たせた。
月末のクリスマスを比呂人と一緒にお祝い出来ないし、年明けを一緒に過ごすことも出来ない。俺は毎年カウントダウンコンサートに駆り出され、家に帰ってくる頃には、比呂人はすでに夢の中だ。
年明けなんだし、この日くらい彼氏の帰りを待っていてくれてもいいところを、比呂人はさっさと寝てしまう。そういう所は本当に昔から変わらない。
第一、12月はそれだけじゃない。嫌なことばっかりだ。
そのうちの一つ。
12月16日。
俺にとってこの日は悪夢だ。この日を好きになることは、この先きっとない。そんな風に思う。
比呂人はこの日をどう思っているんだろう。どんな気持ちで迎えているんだろう。
だってさ。比呂人はこの日、決まって俺を晩酌に誘う。いつもはそこまでお酒なんて飲まないのに。
それでも、その日が特別 "何か" ってわけじゃない。比呂人も俺も普通。いつもと変わらない。記念日でもないから豪華な晩御飯というわけでもないし、別れた日だからといって、お互いが陰気臭いオーラを出しているわけでもない。わざわざ別れた日だね、とほじくり返すこともないしな。
ただ朝から俺たちは「普通」を装おうとしている気がする。
けど、今年の12月16日は少し違った。
「飲まない?」
毎年のように晩酌に誘われ、俺はテレビから比呂人に視線を向けた。で。びっくりした。
短刀ほどの長いナイフを比呂人が片手に持っていたからだ。
ガタガタっとソファから落っこち、何事かと凝視すると、それは見覚えのあるサーベルだった。
「あははっ!新喜劇みたい!シャンパンサーベルだよ。忘れちゃった?」
キラキラ光るサーベル。
そうか……、俺が初めて比呂人の誕生日に買ったプレゼント。まだそんなに綺麗なのか。もしかしてちゃんと手入れをしているのかな?
「木崎さんがね、シャンパンを一本くれたんだ♪ 美味しんだってさ、これ」
木崎さんというのは比呂人の店に勤めているバーテンダーさんだ。彼がくれたというシャンパンのラベルは、季節感のある浮かれたクリスマスカラーで彩られていた。
「へぇ、そ、そうなんだ。いや、普通にビビったって。刀かと思った」
「腹切り~~って? あはは! ゲームのしすぎだよ」
いやまぁ……、刀のゲームしてるけどさ。
「シャンパンサーベルって使ったことある?」
突拍子もないことを聞かれた。
「ある訳ねぇだろ」
「見たことは?」
見たことくらいはある。地元の友人の結婚式とかで、何度か……。
頷く俺に比呂人はサーベルとシャンパンを差し出した。
「やってみる? スカッとするよ」
「いやっ! いいよ! 怖いし!」
「一歩間違ったら瓶が か な り 破損するから気をつけてね」
「いや、だからしねぇって!」
「はい、どうぞ♪ 」
「聞けっ! 人の話を!」
いつも通りだ。いつも通り比呂人は俺をからかうし、俺は比呂人に振り回される。本当にいつも通り。
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