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X'mas SS
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パリッと焼いたさつまいものスナックを齧りながら、俺はチョコレートプレートに愛のメッセージを綴る。
"あいしてる"
出来上がったケーキを満足気に見つめ、俺は寂しくひとりで遅めのディナーを食べた。
いや……決して虚しいなんて思ってませんよ? 早く比呂人に会いたいだけ。嬉しそうに笑ってくれる顔が見たいだけ。優しい声でありがとうってキスして欲しいだけ。
そう、たったそれだけだ。
比呂人……。
* * * * *
ガバっと体を起こして目を覚ましたのは、真夜中2時だった。
付けっぱなしていたテレビは消されていたが、後片付けさえしていなかった晩御飯はそのままだった。
肩に掛けられていたブランケットはフローリングに落ち、冷蔵庫にすら仕舞い忘れていたケーキは、少しだけ食べられていた。
そして、チョコレートプレートに綴った愛のメッセージには、丁寧に返事が書かれていた。
"あいしてる"の文字の下に、残っていたチョコペンで不器用に書かれていた文字。それは……
『ボクも』
たった三文字。
でも……それで充分だ。
俺の前の席には、スーツ姿のままスヤスヤと眠る比呂人。その手にはフォークが握られている。
どの道、決してロマンティックなクリスマスにはならなくて、比呂人があの仕事をやめない限りきっとずーっとつまらないクリスマスだと思うんだ。
けど、けどさ。
俺は毎年どうにかしてお前とこの日を楽しむ努力をするよ。
面倒くさがりながらもこうやって返事を貰えるなら、いつまででも愛を囁くし、いつままでもしつこくイベントや記念日を大事にしていく。
「比呂人……。メリークリスマス」
もう日付は26日だけど、俺達のクリスマスはいつも一日遅れだから、たぶんこれで間違ってないよな?
眠る比呂人に手を伸ばし、その柔らかな猫毛を撫でた。
「おかえり、比呂人。風邪引くから、ベッド行こう?」
呻きながら邪魔くさそうに起き上がる比呂人に肩を貸し、今夜も仲良くベッドで眠ろう。
スーツを脱ぎながら、比呂人は寝ぼけ眼で俺を振り返り、柔らかく微笑んだ。
「あ、メリークリスマス。亮介」
ー 完 ー
"あいしてる"
出来上がったケーキを満足気に見つめ、俺は寂しくひとりで遅めのディナーを食べた。
いや……決して虚しいなんて思ってませんよ? 早く比呂人に会いたいだけ。嬉しそうに笑ってくれる顔が見たいだけ。優しい声でありがとうってキスして欲しいだけ。
そう、たったそれだけだ。
比呂人……。
* * * * *
ガバっと体を起こして目を覚ましたのは、真夜中2時だった。
付けっぱなしていたテレビは消されていたが、後片付けさえしていなかった晩御飯はそのままだった。
肩に掛けられていたブランケットはフローリングに落ち、冷蔵庫にすら仕舞い忘れていたケーキは、少しだけ食べられていた。
そして、チョコレートプレートに綴った愛のメッセージには、丁寧に返事が書かれていた。
"あいしてる"の文字の下に、残っていたチョコペンで不器用に書かれていた文字。それは……
『ボクも』
たった三文字。
でも……それで充分だ。
俺の前の席には、スーツ姿のままスヤスヤと眠る比呂人。その手にはフォークが握られている。
どの道、決してロマンティックなクリスマスにはならなくて、比呂人があの仕事をやめない限りきっとずーっとつまらないクリスマスだと思うんだ。
けど、けどさ。
俺は毎年どうにかしてお前とこの日を楽しむ努力をするよ。
面倒くさがりながらもこうやって返事を貰えるなら、いつまででも愛を囁くし、いつままでもしつこくイベントや記念日を大事にしていく。
「比呂人……。メリークリスマス」
もう日付は26日だけど、俺達のクリスマスはいつも一日遅れだから、たぶんこれで間違ってないよな?
眠る比呂人に手を伸ばし、その柔らかな猫毛を撫でた。
「おかえり、比呂人。風邪引くから、ベッド行こう?」
呻きながら邪魔くさそうに起き上がる比呂人に肩を貸し、今夜も仲良くベッドで眠ろう。
スーツを脱ぎながら、比呂人は寝ぼけ眼で俺を振り返り、柔らかく微笑んだ。
「あ、メリークリスマス。亮介」
ー 完 ー
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