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クリスマスデート
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あちこち探し回ったけど見つからなくて、もしかしてと思って駐車場にも戻ってみたけど、そこには俺の車が行儀良く収まっているだけで比呂人が待っている、なんてこともなかった。
「……腹減った」
時計を見るともう十四時を目前に控えている。半時間、探し回ったけど見つからなかった。着信もない。完全にやらかした。離れてしまった靴屋のほど近くにあるモール内のソファに腰を下ろし、深く深く項垂れた。
なんでこうなるんだよ。ほんと、最悪。確かに無視したのは反省する。比呂人ちゃんと謝ってたのに。でもそんなの……いつものことじゃねぇか。本気で怒っちゃいないし、比呂人が、比呂人が………。
あぁ、だからダメなんだな。
そう思った。いつも根良く機嫌取りをしてくれる比呂人に、俺はいつだって頼り過ぎてた。
「最悪だ」
「なにが?」
膝の上に腕を載せ項垂れていた俺の目に見たことのない靴が映った。俺の目の前に立って、「なにが?」なんて問いかけてきた……この声。
ゆっくり見上げ、やはり!と目を見開いた。
「雪村さん!」
「声でけぇな、おい」
迷惑そうに眉を寄せるこの人は、事務所の先輩、雪村涼だった。
すでに買い物を数点終わらせている彼の右手にはショッピングバッグが二~三個ぶら下がっている。
「お休みですか!?」
「あぁ、お前も?」
「はい!」
「奇遇だな。……で? 何してんの?」
頼りなく項垂れていた俺に呆れ顔で尋ねてくる。
「あぁ……その、先輩。俺と同じくらいの身長の、モデルみたいな男見かけませんでした?」
立ってみろよ、と言われて雪村さんの目の前に立つ。
「そんな大男見てねぇな、巨人め」
「ひっで!」
「事務所に入ってきた時はこんなでかくなかったはずなんだが」
「いつの話してんすか!」
そう叫んだ時、ずっと我慢していた腹の虫がここぞとばかりに鳴った。雪村さんが俺の腹に目をやり、そのままぐっと俺を見上げた。
「漫画か、お前の腹の虫」
「ほんと、漫画っすね」
苦笑を返すと雪村さんはひらりと踵を返した。
「飯奢ってやるよ。俺もまだ食ってない」
「ほ、ホントですか!?」
「あぁ。なに食う?」
比呂人のことがちらりと過ぎったが、この腹の虫が雪村さんにふらふらとついて行ってしまった。
ガラス張りのダイニングカフェに入った。女子率が高かったけど、俺が比呂人とはぐれたことを知る雪村さんは敢えてこの店を選んだようだった。決してそうだと口にはしないけど、たぶんそうなんだと思う。
ほらな、やっぱり。率先して通路側の席に座るだろ? この人は、そういう人だ。自然にやってのけるから、本当にカッコいい。顔だけじゃない。伊達の格好良さじゃないのが、雪村涼という男だ。
メニューを開き三秒でそれを俺に寄越した。
「え?」
「決まった」
すげぇ、その決断力。尊敬通り越してむしろ怖いわ。
雪村さんはピラフを、俺はパスタを注文した。
「なんではぐれたんだよ。携帯は? 繋がらないのか?」
電話してみろよ、雪村さんがそう言ってくれるから、俺は再び比呂人に電話してみるが、やはり出てはもらえなかった。
「喧嘩、したんスよね。しょうもないことで」
「喧嘩は大概しょうもないことだ」
「……腹減った」
時計を見るともう十四時を目前に控えている。半時間、探し回ったけど見つからなかった。着信もない。完全にやらかした。離れてしまった靴屋のほど近くにあるモール内のソファに腰を下ろし、深く深く項垂れた。
なんでこうなるんだよ。ほんと、最悪。確かに無視したのは反省する。比呂人ちゃんと謝ってたのに。でもそんなの……いつものことじゃねぇか。本気で怒っちゃいないし、比呂人が、比呂人が………。
あぁ、だからダメなんだな。
そう思った。いつも根良く機嫌取りをしてくれる比呂人に、俺はいつだって頼り過ぎてた。
「最悪だ」
「なにが?」
膝の上に腕を載せ項垂れていた俺の目に見たことのない靴が映った。俺の目の前に立って、「なにが?」なんて問いかけてきた……この声。
ゆっくり見上げ、やはり!と目を見開いた。
「雪村さん!」
「声でけぇな、おい」
迷惑そうに眉を寄せるこの人は、事務所の先輩、雪村涼だった。
すでに買い物を数点終わらせている彼の右手にはショッピングバッグが二~三個ぶら下がっている。
「お休みですか!?」
「あぁ、お前も?」
「はい!」
「奇遇だな。……で? 何してんの?」
頼りなく項垂れていた俺に呆れ顔で尋ねてくる。
「あぁ……その、先輩。俺と同じくらいの身長の、モデルみたいな男見かけませんでした?」
立ってみろよ、と言われて雪村さんの目の前に立つ。
「そんな大男見てねぇな、巨人め」
「ひっで!」
「事務所に入ってきた時はこんなでかくなかったはずなんだが」
「いつの話してんすか!」
そう叫んだ時、ずっと我慢していた腹の虫がここぞとばかりに鳴った。雪村さんが俺の腹に目をやり、そのままぐっと俺を見上げた。
「漫画か、お前の腹の虫」
「ほんと、漫画っすね」
苦笑を返すと雪村さんはひらりと踵を返した。
「飯奢ってやるよ。俺もまだ食ってない」
「ほ、ホントですか!?」
「あぁ。なに食う?」
比呂人のことがちらりと過ぎったが、この腹の虫が雪村さんにふらふらとついて行ってしまった。
ガラス張りのダイニングカフェに入った。女子率が高かったけど、俺が比呂人とはぐれたことを知る雪村さんは敢えてこの店を選んだようだった。決してそうだと口にはしないけど、たぶんそうなんだと思う。
ほらな、やっぱり。率先して通路側の席に座るだろ? この人は、そういう人だ。自然にやってのけるから、本当にカッコいい。顔だけじゃない。伊達の格好良さじゃないのが、雪村涼という男だ。
メニューを開き三秒でそれを俺に寄越した。
「え?」
「決まった」
すげぇ、その決断力。尊敬通り越してむしろ怖いわ。
雪村さんはピラフを、俺はパスタを注文した。
「なんではぐれたんだよ。携帯は? 繋がらないのか?」
電話してみろよ、雪村さんがそう言ってくれるから、俺は再び比呂人に電話してみるが、やはり出てはもらえなかった。
「喧嘩、したんスよね。しょうもないことで」
「喧嘩は大概しょうもないことだ」
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