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トコナツバケーション
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突き抜けるほど青く高い空。水平線の先まで綺麗なブルーを煌めかせる海の美しさ。どこまでも続きそうな白く眩い砂浜。そして隣には……愛しい人。
こんな風にゆっくりと休暇を取り、のんびりと休みを満喫するのはいつぶりだろうか。
短大時代以来かな?
ホテル時代は有休消化を纏まって取れなかったし、レストランを立ち上げてからなんて尚更そんなこと出来なかった。けどこの十月、僕は思い切って十日間の有休を取った。
来年、うちの店は二号店をオープンすることになり、副店長をしてくれている森本くんに店長を任せようと考えている。社員達の強化を図るためにも、自分が休んでしまうのが一番いい方法じゃないかと、そんな強硬手段に打って出た。
まぁそう思えたのは、亮介が旅行に行こうと誘って来たからだけど。
まとまった休みが取れそうだと嬉しそうに話した亮介。だったら、僕も何かしら理由をつけて休んでしまえと、僕にしては珍しく仕事を投げ出してみた。
南国の地は、開放的だ。深呼吸して、僕は砂浜に大の字で寝転んだ。
「え? まじで言ってんの?」
「うん。まじだよ、まじ。僕、かなづちだから」
そう告白し、この海水パンツの役目がほぼほぼないことをしっかりと伝え切った。
「えぇ!? その前情報今更報告する~!?」
「うん。今更言う。だから、亮介は海を存分に満喫しておいで。僕はここでトロピカルなジュースでも飲んでる」
「……っざけんなよ」
もはやその悪態に力さえない。
悪いが、溺れて死ぬくらいなら僕はココでこんがり日焼けすることを選ぼう。
「なんで、じゃあここにしたんだよ。他にも候補があったろ。パリとか、スペインとか……色々言ってたじゃん」
「亮介の半裸を見たかった」
「いつでも見てんだろ! こんの……っ変態!」
僕の冗談に全力でツッコミを入れてくれる亮介が可愛い。
そう。亮介は前からツッコミがやたらと鋭かったけど、その理由を今年の春に知った。亮介の母親、関西弁を話していた。僕の前では標準語を話そうとしてくれていたけど、亮介には関西弁で話していて、それがまた底抜けに明るくて、吹き出すほど面白い人だった。
初めて会った亮介の家族。温かい人たちだった。妹さんも綺麗で細くてモデルさんみたいだったけど、なんていうか……お兄ちゃんって呼ばれている亮介の方が気になった。まぁ、確かに知ってた、妹がいること。だけど、お兄ちゃん、という響きは亮介には似合わないし、なんだろうな、僕の方が変に気恥ずかしかった。
「お兄ちゃん……かぁ」
「は?」
超がつくほど不機嫌に睨まれた。
「てめぇ、すでに違うこと考えてただろ」
「あ、バレた?」
呆れたようにため息を吐かれ、亮介は空を仰いだ。
「じゃあなんだ、熱帯魚を見たり、サンゴ礁を見たりというあのくだりは……」
「うん、一人でどうぞ」
言葉にならない怒りなのか、亮介はこれ程までにか、というほど地団駄を踏んだ。人は大人になっても地団駄を踏むんだなと、他人事のように感心する。
「な・ん・で!! なんでこの島に来たんだよ!!」
そう言って声を上げる亮介を見上げ、俺はため息をひとつ吐き出した。
だったら、泳ぐだけがすべてじゃないと教えてあげよう。
こんな風にゆっくりと休暇を取り、のんびりと休みを満喫するのはいつぶりだろうか。
短大時代以来かな?
ホテル時代は有休消化を纏まって取れなかったし、レストランを立ち上げてからなんて尚更そんなこと出来なかった。けどこの十月、僕は思い切って十日間の有休を取った。
来年、うちの店は二号店をオープンすることになり、副店長をしてくれている森本くんに店長を任せようと考えている。社員達の強化を図るためにも、自分が休んでしまうのが一番いい方法じゃないかと、そんな強硬手段に打って出た。
まぁそう思えたのは、亮介が旅行に行こうと誘って来たからだけど。
まとまった休みが取れそうだと嬉しそうに話した亮介。だったら、僕も何かしら理由をつけて休んでしまえと、僕にしては珍しく仕事を投げ出してみた。
南国の地は、開放的だ。深呼吸して、僕は砂浜に大の字で寝転んだ。
「え? まじで言ってんの?」
「うん。まじだよ、まじ。僕、かなづちだから」
そう告白し、この海水パンツの役目がほぼほぼないことをしっかりと伝え切った。
「えぇ!? その前情報今更報告する~!?」
「うん。今更言う。だから、亮介は海を存分に満喫しておいで。僕はここでトロピカルなジュースでも飲んでる」
「……っざけんなよ」
もはやその悪態に力さえない。
悪いが、溺れて死ぬくらいなら僕はココでこんがり日焼けすることを選ぼう。
「なんで、じゃあここにしたんだよ。他にも候補があったろ。パリとか、スペインとか……色々言ってたじゃん」
「亮介の半裸を見たかった」
「いつでも見てんだろ! こんの……っ変態!」
僕の冗談に全力でツッコミを入れてくれる亮介が可愛い。
そう。亮介は前からツッコミがやたらと鋭かったけど、その理由を今年の春に知った。亮介の母親、関西弁を話していた。僕の前では標準語を話そうとしてくれていたけど、亮介には関西弁で話していて、それがまた底抜けに明るくて、吹き出すほど面白い人だった。
初めて会った亮介の家族。温かい人たちだった。妹さんも綺麗で細くてモデルさんみたいだったけど、なんていうか……お兄ちゃんって呼ばれている亮介の方が気になった。まぁ、確かに知ってた、妹がいること。だけど、お兄ちゃん、という響きは亮介には似合わないし、なんだろうな、僕の方が変に気恥ずかしかった。
「お兄ちゃん……かぁ」
「は?」
超がつくほど不機嫌に睨まれた。
「てめぇ、すでに違うこと考えてただろ」
「あ、バレた?」
呆れたようにため息を吐かれ、亮介は空を仰いだ。
「じゃあなんだ、熱帯魚を見たり、サンゴ礁を見たりというあのくだりは……」
「うん、一人でどうぞ」
言葉にならない怒りなのか、亮介はこれ程までにか、というほど地団駄を踏んだ。人は大人になっても地団駄を踏むんだなと、他人事のように感心する。
「な・ん・で!! なんでこの島に来たんだよ!!」
そう言って声を上げる亮介を見上げ、俺はため息をひとつ吐き出した。
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