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全部、俺
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「上着、車に積んだままだな」
今日が晴れていて良かった。車内温度が上がって本当に良かった。
肩にかけられた上着。ふと隣を見上げた颯太は、オレンジに優しく染まる可愛い照れ笑いの西を見た。
「今日最後のプレゼント」
そう言われて、颯太はようやくすべてを理解した。
そう、あの時西が見たものは、西の私物を身に纏い、夕焼けの中で微笑む綺麗すぎる雪村だったのだ。
「え……ぷれぜ……」
困惑の色。だけど、どこか嬉しそうな口元。
あの時綺麗に微笑んだ雪村が忘れられない。だけど……。
「お前を全部俺のものにしたい。お前も俺を……、欲しいだろ?」
人が行き交う街のど真ん中。
真っ赤に顔を染める颯太は、あの時に見た雪村なんかよりよっぽど綺麗で、よっぽど可愛くて、これが見たかった颯太の姿だと、心の底からそう思えた。
「……っ、うん!」
恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに、照れながら笑い、大きく頷いた颯太は、どれだけ綺麗な雪村を見てしまったとしても簡単に上塗りされてしまう。
(可愛い)
これが西をいつも狂わせるんだ。
落ち着けと自分をなだめるけど、この颯太の可愛い顔は、どうしたって西の好みなのだから仕方ない。
自分の私物を身にまとう颯太と、オレンジの街を照れながら歩き、「ありがとう」とはにかむ恋人に、西は心から満足する。
幸せに、大きいも小さいもない。全部特別。颯太と一緒に居られるの幸せを、西は西なりにしっかりと噛みしめるのだった。
【完】
今日が晴れていて良かった。車内温度が上がって本当に良かった。
肩にかけられた上着。ふと隣を見上げた颯太は、オレンジに優しく染まる可愛い照れ笑いの西を見た。
「今日最後のプレゼント」
そう言われて、颯太はようやくすべてを理解した。
そう、あの時西が見たものは、西の私物を身に纏い、夕焼けの中で微笑む綺麗すぎる雪村だったのだ。
「え……ぷれぜ……」
困惑の色。だけど、どこか嬉しそうな口元。
あの時綺麗に微笑んだ雪村が忘れられない。だけど……。
「お前を全部俺のものにしたい。お前も俺を……、欲しいだろ?」
人が行き交う街のど真ん中。
真っ赤に顔を染める颯太は、あの時に見た雪村なんかよりよっぽど綺麗で、よっぽど可愛くて、これが見たかった颯太の姿だと、心の底からそう思えた。
「……っ、うん!」
恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに、照れながら笑い、大きく頷いた颯太は、どれだけ綺麗な雪村を見てしまったとしても簡単に上塗りされてしまう。
(可愛い)
これが西をいつも狂わせるんだ。
落ち着けと自分をなだめるけど、この颯太の可愛い顔は、どうしたって西の好みなのだから仕方ない。
自分の私物を身にまとう颯太と、オレンジの街を照れながら歩き、「ありがとう」とはにかむ恋人に、西は心から満足する。
幸せに、大きいも小さいもない。全部特別。颯太と一緒に居られるの幸せを、西は西なりにしっかりと噛みしめるのだった。
【完】
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