二番目の恋人 番外編

2wei

文字の大きさ
上 下
17 / 17
全部、俺

しおりを挟む
「上着、車に積んだままだな」

 今日が晴れていて良かった。車内温度が上がって本当に良かった。
 
 肩にかけられた上着。ふと隣を見上げた颯太は、オレンジに優しく染まる可愛い照れ笑いの西を見た。

「今日最後のプレゼント」

 そう言われて、颯太はようやくすべてを理解した。

 そう、あの時西が見たものは、西の私物を身に纏い、夕焼けの中で微笑む綺麗すぎる雪村だったのだ。

「え……ぷれぜ……」

 困惑の色。だけど、どこか嬉しそうな口元。

 あの時綺麗に微笑んだ雪村が忘れられない。だけど……。

「お前を全部俺のものにしたい。お前も俺を……、欲しいだろ?」

 人が行き交う街のど真ん中。

 真っ赤に顔を染める颯太は、あの時に見た雪村なんかよりよっぽど綺麗で、よっぽど可愛くて、これが見たかった颯太の姿だと、心の底からそう思えた。

「……っ、うん!」

 恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに、照れながら笑い、大きく頷いた颯太は、どれだけ綺麗な雪村を見てしまったとしても簡単に上塗りされてしまう。


(可愛い)


 これが西をいつも狂わせるんだ。
 落ち着けと自分をなだめるけど、この颯太の可愛い顔は、どうしたって西の好みなのだから仕方ない。

 自分の私物を身にまとう颯太と、オレンジの街を照れながら歩き、「ありがとう」とはにかむ恋人に、西は心から満足する。

 幸せに、大きいも小さいもない。全部特別。颯太と一緒に居られるの幸せを、西は西なりにしっかりと噛みしめるのだった。




【完】
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

処理中です...