二番目の恋人 番外編

2wei

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全部、俺

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「西くんって白いイメージ」

 そんなことを言って笑う颯太。だけど、西とて思っている。颯太には白が似合うと。自分なんかよりずっとずっと白が似合って、その美しさを自分がずっと守ってやるのだと、はるか前からそう思っているのだ。

 だけど、それを口には出来ない。颯太はずっと……それこそはるか前から自分を “汚い” と思っているから。
 それを、 “そんなことない” と気休めにもならない言葉で慰めるほど、西は野暮じゃない。

「じゃあ、それは俺の。他の奴に使わせるなよ」

 言うと、颯太はまた目を丸くし、気障たらしな西の言葉に吹き出して笑った。

「あははっ! じゃあこれは西くんちに置いておこう! そしたらこれは西くん専用だし、僕のカップも誰も使わない」

 西は自分の家に恋人以外を招くことはない。それは本人が颯太に教えたことだ。そもそも人を招けるような綺麗な家でもない。どちらかというとごみ屋敷に近い。それを知っているから、西の言葉が嘘じゃないと颯太も理解できる。これだけ汚かったら人なんか招けないよね、と。
 だけど、西はもはやマグカップの所在が自分の家だろうが颯太の家だろうが、どうでもいい。気になって仕方ないのは、今日の服装だった。

(白……か。今日の服、失敗したな)

 何日も前から考えて考えて考え抜いて、それでも迷って決まらなかった服。少し特徴的なモノトーン柄のブルゾン。雪村とデートした時に羽織っていたロング丈のジャケットももちろん考えた。だけど、それじゃやっぱりダメなんだ。それじゃ絶対に違う。あれは雪村だからあの服で良かっただけの話。

(相手は颯太。俺の……颯太)

「西くん?」

 怪訝に顔を覗き込まれ、ハッとする。

「あー、昼飯は上手い海鮮でも食いに行くか」

 そう提案すると、颯太は俄かに喜んだ。

「やったぁ! 行く行く! お寿司? どんぶり? まさか高級会席膳!?」
「さすがに予約してねぇわ」

 しとけよーなんて笑い合いながら、車を走らせ、途中、颯太は羽織っていた上着を脱いで後部座席にそれを置いた。

「今日は天気いいね。春フェスもこうだといいね」
「そうだな。けど大概GWは晴れるだろ」
「雨降ったことなかったっけ?」
「記憶にないな」

 ANNADOLの四月はいつも忙しい。一日まるっと休みなんてことはほとんどない。それでも自分の時間を見つけて休息を取る。今日とて、夜からはテレビ番組の収録がある。日中、他のメンバーはそれぞれの仕事があり、二人はこの日のためにスケジュールを詰めて強引に休みをぶん取っていたのだ。だからこそ、遅刻した西に颯太が不機嫌を露わにした。至極当然のことだ。

 それでも颯太には伝わる。西が反省していることも、自分を喜ばそうとしていることも。
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