二番目の恋人 番外編

2wei

文字の大きさ
上 下
6 / 17
今夜はご馳走

しおりを挟む
* * * * *

「オムライス?」

 颯太が尋ねると小形はコクコクと頷いた。

「そう! カトゥンのオムライスは店の味だよ、まじで!」
「言い過ぎだ、小形」
「バターライスの上にオムレツがのっかっててさ、ナイフで切れ目を入れると、トロットロの玉子がライスを覆い隠すんだよ!」

 聞いているだけでもよだれが出てきそうなグルメリポートに、俺も颯太もリーダーもごくりと喉を鳴らした。

「オムライス好きの俺が言うんだから、カトゥンのオムライスは本物だぜ!」
「是非食べてみたいものだな」

 リーダーがにこやかに微笑みながら言った。

「てか、小形くん。オムライス好きだったの!?」

 それが初耳だよ、と颯太は笑った。

「おぅ! 俺卵料理には目がないぜ!?」

 小形は嬉しそうに笑いながら、温泉卵も好き!と騒いだ。

「僕はお刺身が好きなんだ! カトゥン、魚捌けるんだっけ!?」

 颯太は目を煌めかせながら加藤を見上げると、馬鹿に背の高い加藤はニッコリ笑いながら頷いた。

「さばけるよ」
「カッコいい~!」

 目を煌めかせている颯太の視線が一心に加藤を見上げると、嫉妬? いや、別にそんなことくらいで嫉妬するわけはない。するわけはないが、いい気はしない。魚くらい俺だって捌けるっつうの。

 なんて、対抗心が湧き上がるのは、これは嫉妬なのか? いや、違う。ただ単に事実としてある俺のスキルが疼いているだけだ。

「今度ご馳走してやるよ、颯太。リーダーもどう?」

 加藤はその腕を見せびらかしたいのか否か、そんなお誘いをサラッと言いやがるが、サラッと俺を誘わない辺りが全くもって腹立たしい。

「行く行く! 食べたい食べたぁい!」

 颯太は飛び跳ねて喜んでいる。イラッとなんか……してねぇし。

「リーダーは何が食べたい? リクエスト受け付けるよ?」

 加藤の言葉にリーダーは、少し考えてから、じゃあと返答した。

「ナス料理」

 茄子料理?

 全員が目を点にしただろう。しかし加藤は「分かった」と快く頷き、ちらりとこちらに目配せした。

「西は?」

 え、俺?

 まさか俺にまで聞いてくるとは思いもしなかった。咄嗟に食いたい物など出てくるわけもなく、小形が「どうせ海老フライだろ」と笑うから、違うと言い返してしまった。

「だったら何がいいんだ?」

 嫌味のない言い方で加藤が尋ねてくるから、俺はこんなタイミングで自分の好物を暴露することになった。

「鯖の……味噌煮」
「渋ッッッ!!」

 間髪入れない小形のツッコミで場は沸いたが、俺は慌てて訂正した。

「いや、違う。俺は単に和食派なだけだ」

 言い訳がましく聞こえたかもしれないと思いながらも、事実そうなのだから仕方ない。

「ブリ大根とか?」
「おひたし、とか?」
「お豆腐とか?」

 加藤、颯太、小形が順に俺へと聞いてきて、最後リーダーが「茄子とか?」と尋ねるので、それだけは否定させてもらった。

「茄子をそのまま食う趣味はない」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

エスポワールで会いましょう

茉莉花 香乃
BL
迷子癖がある主人公が、入学式の日に早速迷子になってしまった。それを助けてくれたのは背が高いイケメンさんだった。一目惚れしてしまったけれど、噂ではその人には好きな人がいるらしい。 じれじれ ハッピーエンド 1ページの文字数少ないです 初投稿作品になります 2015年に他サイトにて公開しています

処理中です...