MOMO!! ～生き残れ、売れないアイドル！～

真実

２

「玲はダメだよ！　こいつは恋する野良犬だ」
「徠ライみたいに頭良くないし」
「そうそう。俺くらいになると家出してもそんなみすぼらしい生き方しないけどね」

　内海四兄弟。徠ライ、璃リイ、魁ルイ、玲レイ。
　末っ子の内海は、分かり易いほどの落ちこぼれだった。

「うっせぇ！　何が悪るいんだよ！　ゴミ箱漁ることも、人のもんひったくることも、 ”生きる為” の立派な手段だ！　それを ”みすぼらしい” なんてお前に格付けされる筋合いなんかねぇ！」

　三人の兄は笑っていたけど、父と母は少し違っていた。
　あぁ……こいつは、とんでもないと。

　夜中、子供達が寝静まってから両親は静かに話し合った。
　あいつを野放しにしておくか、強引に導くか。きっといつか、必ず自分で自分の道を見つける。しかし、それは間違った方向に向かう可能性が多大に含まれている。悩み、悩み……、三人の兄達から少しの事情聴取を行った。

　そして答えを見つけ出す。

「そうか。あいつを退屈させなければいいんだ。漫画のようにドラマチックに行こうじゃないか」

　両親から用意されたのは、ANNA Productionのアイドル研修生オーディションの応募用紙だった。

「……ナニコレ」
「どうだ。面白そうだろ」

 バカじゃない？と突き放す方に璃リイは賭けていた。案外乗り気になる、という方に徠ライと魁ルイは賭けていて、その賭けに勝ったのは徠ライと魁ルイだった。

「へぇ……」

　けどこれに乗ったのは、内海がアイドルに興味を持ったからではない。ついにお払い箱か、と思ったからだ。用無しと言われた気分だった。
　家業から天地の場所にあるようなこんな話を持ちかけてくる父に、少しの……だけど果てしない絶望を覚えた。

「受けて欲しけりゃ受けてやる」

　オーディションの応募用紙をひったくり、内海はこの出来レースにまんまと足を踏み入れてしまった。そう、これは……すべてが出来レースだったのだ。

　受かるようになっていた。受かるしか道はなかった。天地のような場所にあるこの職業でも、内海家とANNA productionのパイプはかなり太かったのだ。

　だが、内海がその事実を知るのはもう少し先になる。