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飛行機雲

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『続きまして、データDL数です』

 ネットを利用してのデータダウンロード数。CDと違いこちらにはもちろん、投票用紙など付いていない。その差は大きいだろう。
 しかし、どのカテゴリーでもトップ通過が望ましいに決まっている。来い、来い……!と呟く一ノ瀬の声に、全員が固唾を飲み、結果を待つ。

 ご丁寧にいちいち鳴ってくれるドラムロールに、これまたいちいち緊張しながら名前が呼ばれるのを待ったが、会場にMOMOの名前は呼ばれなかった。

『一位、Mellow !!』

 強張っていた肩ががくんっと落ちるのを感じ、太一は「あ、これが肩を落とすってことか」と身を以て知った。

 BLACK CATを挟んだ向こう側では、煌びやかな王子様三人がハイタッチをしていて、関西弁で「圧勝やな!」と笑う声がした。
 その言葉に怪訝にスクリーンを振り返ると、目を見開くほどの差があり、二位のMonday Monsterとは千ほどの違いがあった。

「こんなに!?」

 驚いて思わず口にしたが、すかさず雪村が「大丈夫」と太一の背中を叩いた。

「これで終わりじゃない。千くらいすぐに挽回できる」

 うんうん、と雪村の奥で一ノ瀬も頷き、隣の志藤も静かに頷いた。

『次は、ラジオ・有線リクエストランキングです。』

 ドラムロールが鳴り始める。だが、このカテゴリーで勝てないことを太一は薄々感じていた。これでもこまめにチェックしていたのだ。もちろんラジオを聞ける時間帯は大体決まってしまっているため、自分の予想が絶対とは言い切れなかったが、手を合わせて祈る志藤の奥の人物をちらりと一瞥した。
 そして予想は的中する。

『一位、BLACK CAT !!』

(やっぱり……)

 夜中BLACK CATの曲がラジオから流れるたびに「またか」と落ち込んだものだ。黒野と猫居ががっしりハグをし合う。MOMOはこの部門ではMellowと僅かな差で最下位となったが、これで三組共がそれぞれの一位を取った。
 残るは事前投票、会場前投票、そしてリアルタイムで集計される携帯電話やインターネット、データ放送などからの視聴者投票だ。
 つまりそれは、“今”国民が選ぶ最強アイドルということ。当たり前だがこれも残酷なほどにはっきりと数字になってしまう。

『次からは投票結果の発表となります! まずはCD購入者特典の投票券からの集計結果です。CD売り上げランキングから、Monday Monsterが有利と思われますが、果たして結果は如何に!?』

 そう、売り上げ枚数的にはMOMOが有利。ここは安パイだと思われていた。だが、ドラムロールの後に呼ばれた名はあろう事かMellowだった。

『一位! な、なんとMellow !!』

 心臓が、一瞬止まったかと思った。

 四人はガバッと一斉にスクリーンを振り返り、愕然とする。僅か200票ほどの差で、Mellowに敗北していた。

「な……なんで…っ!?」

 客席からは男性ファンからの大ブーイングが巻き起こり、まさかの事態に会場中が明らかに動揺していた。しかし、このCD購入者特典の投票券は推しグループを好きに書きこんで投票するタイプのものだ。
 つまりMOMOのCDを買っていても、MellowやBLACK CATに投票することが可能ということ。それにCDを買った客が全員投票するとも限らないから。
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