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決勝戦開幕!

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 オークションと睨めっこし続け、やっとの思いで手に入れた2枚のチケット。中原と共に、野瀬は会場へ応援に来ていた。チケット代がバカにならなかった為、多くのグッズを買うことはできなかったが、会場入りできたことの方が奇跡だと、中原と抱き合って喜んだ。
 なんとか手に入ったチケットは、スタンド一階中腹部、メインステージ向かってやや右寄りの場所。決して良い席とは言えない。それでもこの会場に入れさえすれば本物を見られて、生歌を聞くことができる。それだけは間違いなく約束されていることだ。

 テレビのようにどアップで見ることは出来ないが、アイドルたちとの一体感はここにいる者にしか味わえない特別なことだ。そして、テレビでは放送されなかったCheck it !とSURFのステージまで見ることが出来た。音源化されなかった幻の4曲を聴くことが出来たのは、本当にラッキーだったというしかないだろう。

「んで? これは手作りなの?」
「言うな、何も言うな。てか見るな」

 番組開始のSEが会場に鳴り響き、司会者の挨拶が始まると、およそ高校生男子の荷物とは思えない大きめトートから、4枚の内輪が取り出された。そして内二枚が中原へと押し付けられる。

「いや……おい。二枚も持たせといて見るなってのは無理があるだろ」
「文句言うな。綺麗に仕上がってんだろ」
「えぇ? それむしろ見ろって言ってるよな?」

 とりとめもない会話をしながら、中原は手渡された内輪を見つめた。
 ショッキングピンクの画用紙で切り抜かれたMとOの文字。真っ黒の内輪にその文字は浮き上がるほど目立っている。野瀬も同じMOの内輪を持っているのかと隣を見ると、そこには自分のものとは全く違う文字が書かれていて、中原は思わず持っている内輪をひっくり返した。

 そして絶句する。

 何故、野瀬がこんな内輪を作ったのか、中原は息苦しいほど辛くなって、涙をこらえるようにメインステージへと視線を上げた。

 正面の特大スクリーンにはエッグバトルの文字、両サイドのスクリーンには司会者の顔が映し出され、ステージ上にカメラマンの姿も確認できた。
 階段に向かって向けられているカメラに、いつ本人たちが登場するだと誰もがその時を待ちわびる。中原も内輪を握り締め、じっとそれを待った。
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