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決勝戦開幕!
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メインステージにMC卓がセッティングされ、ステージ上には大きな階段が設置された。テレビカメラが何台も入り、いよいよ番組が始まる準備が整う。
客席は期待に胸を膨らませ、今か今かと決勝戦のスタートを待ちわびている。
階段を目の前に、太一は何度も繰り返し深呼吸をしていた。だが、太一だけじゃない。MOMOは極度の緊張状態にあった。
負ければ、渡米が確定なのだから。
勝負は4曲。だがしかし、CD売上枚数やデータ配信のDL回数、ラジオのリクエストランキング、及びに事前投票なども勝負を大きく左右することになる。会場前投票はすでに受付が終了され、イベントスタッフたちが現在必死に集計中である。
当日投票も行われるため、勝負の行方は最後まで分からない。今回、会場に審査員は招いていない。来場客と視聴者達が審査員となり、勝者を決めることになるのだ。つまり、完全に人気投票ということ。
「では、そろそろスタンバイを」
スタッフの声に、上手の袖に集まっていたエッグ達がそれぞれ顔を見合わせる。階段の登り口は三ヶ所。BLACK CATはコツンっと拳をぶつけ合うと、黒野だけが下手の階段の上り口へと歩き出す。太一はその背中をじっと見つめ、嘔吐してしまうんじゃないかと思うほどの緊張に完全に体は硬直してしまった。
「じゃ、頑張ろう。優雅にね。えいえい、おー」
だけど、背中から及川の気の抜けた掛け声が聞こえ、水野と菊池がそれに笑い出すと、リラックスしているように見える三人に、今度は目を奪われた。
Mellowの三人は揃って階段センターの登り口へと向かう。どうしてそんなにリラックスしていられるのか信じられなくて、例えば渡米の話がなくても自分はきっと同じように緊張しているに違いない、と太一は早まっていく心臓に手を当てた。
しかし、すっと目の前に手を差し出され、太一は俯いていた頭を上げた。
その手は、大好きで……大好きで、大好きで仕方ない志藤の手だった。大きな瞳がじっと太一を見つめ、彼の奥にいる雪村と一ノ瀬も、太一だけを見つめていた。
「……勝ちに行く時間だよ」
志藤の静かな声。
勝ちに行く時間。
そうだ。太一は勝ちに行くのだ。テレビの前のファンに、そう約束したではないか。野瀬にも、中原にも、そう約束した。こっちに来るなよ、と陽一にも言われている。
「俯かないで」
そう言って微笑む志藤。その後ろに居る雪村も、志藤の言葉に微笑み、頷いた。
「前だけ見てろ。きっとすごい景色だから」
その言葉に太一はこの会場がテレビ局や、あの小さな劇場ではないことを改めて教えられた気分だった。そう、ここは今まで経験したことがない大規模なイベント会場だ。例えばこの勝負に負けたとしたら、もしかしてもう二度と見ることのできない景色かもしれない。
それだったら、俯いていちゃ勿体ない。
入念に行ったリハーサル。大きな会場を走り回り、たった四曲を……、されどその四曲にすべてを賭けて、事細かくチェックした。
歌詞を覚えてダンスを覚えて、それだけでも大変なのに、立ち位置のチェック、駈け出すタイミング、特効のタイミング……、パンクしそうなくらい沢山のことを頭の中に詰め込んだ。
けど、始まってしまったら目の前に広がる壮大な景色に、きっと目を奪われてしまうのだろう。
今自分が何処にいるのか分からなくなるくらい、眩しいに違いない。
「出陣ですよ」
一ノ瀬の言葉に、太一は差し出されている志藤の手を取り、四人は肩を組んで円陣を組んだ。
「最後の大勝負だ。絶対勝つぞ」
雪村の力強い声に三人はしっかりと頷いた。
「声出せ。We are……ッ!」
「MOMO!!!!」
客席は期待に胸を膨らませ、今か今かと決勝戦のスタートを待ちわびている。
階段を目の前に、太一は何度も繰り返し深呼吸をしていた。だが、太一だけじゃない。MOMOは極度の緊張状態にあった。
負ければ、渡米が確定なのだから。
勝負は4曲。だがしかし、CD売上枚数やデータ配信のDL回数、ラジオのリクエストランキング、及びに事前投票なども勝負を大きく左右することになる。会場前投票はすでに受付が終了され、イベントスタッフたちが現在必死に集計中である。
当日投票も行われるため、勝負の行方は最後まで分からない。今回、会場に審査員は招いていない。来場客と視聴者達が審査員となり、勝者を決めることになるのだ。つまり、完全に人気投票ということ。
「では、そろそろスタンバイを」
スタッフの声に、上手の袖に集まっていたエッグ達がそれぞれ顔を見合わせる。階段の登り口は三ヶ所。BLACK CATはコツンっと拳をぶつけ合うと、黒野だけが下手の階段の上り口へと歩き出す。太一はその背中をじっと見つめ、嘔吐してしまうんじゃないかと思うほどの緊張に完全に体は硬直してしまった。
「じゃ、頑張ろう。優雅にね。えいえい、おー」
だけど、背中から及川の気の抜けた掛け声が聞こえ、水野と菊池がそれに笑い出すと、リラックスしているように見える三人に、今度は目を奪われた。
Mellowの三人は揃って階段センターの登り口へと向かう。どうしてそんなにリラックスしていられるのか信じられなくて、例えば渡米の話がなくても自分はきっと同じように緊張しているに違いない、と太一は早まっていく心臓に手を当てた。
しかし、すっと目の前に手を差し出され、太一は俯いていた頭を上げた。
その手は、大好きで……大好きで、大好きで仕方ない志藤の手だった。大きな瞳がじっと太一を見つめ、彼の奥にいる雪村と一ノ瀬も、太一だけを見つめていた。
「……勝ちに行く時間だよ」
志藤の静かな声。
勝ちに行く時間。
そうだ。太一は勝ちに行くのだ。テレビの前のファンに、そう約束したではないか。野瀬にも、中原にも、そう約束した。こっちに来るなよ、と陽一にも言われている。
「俯かないで」
そう言って微笑む志藤。その後ろに居る雪村も、志藤の言葉に微笑み、頷いた。
「前だけ見てろ。きっとすごい景色だから」
その言葉に太一はこの会場がテレビ局や、あの小さな劇場ではないことを改めて教えられた気分だった。そう、ここは今まで経験したことがない大規模なイベント会場だ。例えばこの勝負に負けたとしたら、もしかしてもう二度と見ることのできない景色かもしれない。
それだったら、俯いていちゃ勿体ない。
入念に行ったリハーサル。大きな会場を走り回り、たった四曲を……、されどその四曲にすべてを賭けて、事細かくチェックした。
歌詞を覚えてダンスを覚えて、それだけでも大変なのに、立ち位置のチェック、駈け出すタイミング、特効のタイミング……、パンクしそうなくらい沢山のことを頭の中に詰め込んだ。
けど、始まってしまったら目の前に広がる壮大な景色に、きっと目を奪われてしまうのだろう。
今自分が何処にいるのか分からなくなるくらい、眩しいに違いない。
「出陣ですよ」
一ノ瀬の言葉に、太一は差し出されている志藤の手を取り、四人は肩を組んで円陣を組んだ。
「最後の大勝負だ。絶対勝つぞ」
雪村の力強い声に三人はしっかりと頷いた。
「声出せ。We are……ッ!」
「MOMO!!!!」
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