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“チームメイト”
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野瀬の腕をパシっと掴み、「此処にいて」と涙目で訴える。けどそんなこと、MOMOの話し合いを前に許されるわけがない。
「お……き」
「太一!? なんでだ! そんな怒ってんのか? なぁ?」
雪村の声が部屋中に響き渡り、野瀬は必死に太一の肩を掴んだ。
「沖……っ、しっかりしてよ。メンバーに怯えてどうするんだよ! 敵は違うもののはずだろ?」
闘わなきゃならない相手はMellowとBLACK CAT。そして太一の夢を阻もうとする親だ。
だけど、今は違う。
今、怯えているのは志藤に会うこと。
好きだということがバレてしまったと思っている太一にとって、一夜も空けずに再び志藤と顔を合わせることは、断固阻止したかった。
せめて一晩くらいじっくり泣かせて欲しかったし、出来ることなら野瀬に話を聞いてもらって、この気持ちをきちんと整理したかった。
太一は溜め込んでいた涙をまたボロボロ零すと、野瀬のブレザーを掴み、離すものかと睨むように彼を見つめた。
「沖……、なんで、どうしたの?」
信じられないくらい強情な態度を取る太一に野瀬は驚き、メンバーに会いたくない理由があるんじゃないかと考えを巡らせた。
そして思い出されたのは、「歩くん」と志藤の名を呼び泣きだした太一の姿。
(やはり犯人はあいつか!)
何があったのかまでは分からない。だけど、直感的に感じたそれは正しくて、野瀬は制服を掴む太一の手を掴んだ。
「何があったのかまでは分からないけど……、大丈夫だよ。MOMOは四人いるんだ。二人きりで話し合うわけじゃない、そうでしょ?」
野瀬の言葉がついに太一の必死な思いに照準が合わされ、そのことに太一の方が驚いた。
「太一! 悪かったよ! せめてちゃんと謝らせてくれよ」
雪村が部屋の扉をドンっと叩き、直後「たいちゃん!」と呼ぶ一ノ瀬の声も聞こえた。だけど、そこに志藤の声はない。だから余計に野瀬の中で志藤に対する怒りが膨れ上がってしまう。
「沖。このタイミングを逃しちゃダメだ。余計にチームがバラバラになる。それでも我慢できなくなったら、トイレに行く振りして俺のとこに来たらいい。近くにいるから」
「太一っ!」
「たいちゃん!」
太一を呼ぶ声は段々大きくなってきて、太一は渋るように野瀬から手を離すと、代わりにクッションを野瀬に手渡した。
「隣の部屋……、弟の部屋だったんだ。今は何もないんだけど……そこで待ってて」
クッションを受け取り、野瀬はしっかり頷くと、もう一度だけ太一を抱きしめ立ち上がった。
太一を呼ぶ声は扉越しに響き、野瀬は自分のスクールバッグを肩に提げた。そして涙を拭っている太一を振り返り、開けるよ?と目で問いかける。太一はティッシュを丸めてゴミ箱に捨てると、コクリと小さく頷いた。
「お……き」
「太一!? なんでだ! そんな怒ってんのか? なぁ?」
雪村の声が部屋中に響き渡り、野瀬は必死に太一の肩を掴んだ。
「沖……っ、しっかりしてよ。メンバーに怯えてどうするんだよ! 敵は違うもののはずだろ?」
闘わなきゃならない相手はMellowとBLACK CAT。そして太一の夢を阻もうとする親だ。
だけど、今は違う。
今、怯えているのは志藤に会うこと。
好きだということがバレてしまったと思っている太一にとって、一夜も空けずに再び志藤と顔を合わせることは、断固阻止したかった。
せめて一晩くらいじっくり泣かせて欲しかったし、出来ることなら野瀬に話を聞いてもらって、この気持ちをきちんと整理したかった。
太一は溜め込んでいた涙をまたボロボロ零すと、野瀬のブレザーを掴み、離すものかと睨むように彼を見つめた。
「沖……、なんで、どうしたの?」
信じられないくらい強情な態度を取る太一に野瀬は驚き、メンバーに会いたくない理由があるんじゃないかと考えを巡らせた。
そして思い出されたのは、「歩くん」と志藤の名を呼び泣きだした太一の姿。
(やはり犯人はあいつか!)
何があったのかまでは分からない。だけど、直感的に感じたそれは正しくて、野瀬は制服を掴む太一の手を掴んだ。
「何があったのかまでは分からないけど……、大丈夫だよ。MOMOは四人いるんだ。二人きりで話し合うわけじゃない、そうでしょ?」
野瀬の言葉がついに太一の必死な思いに照準が合わされ、そのことに太一の方が驚いた。
「太一! 悪かったよ! せめてちゃんと謝らせてくれよ」
雪村が部屋の扉をドンっと叩き、直後「たいちゃん!」と呼ぶ一ノ瀬の声も聞こえた。だけど、そこに志藤の声はない。だから余計に野瀬の中で志藤に対する怒りが膨れ上がってしまう。
「沖。このタイミングを逃しちゃダメだ。余計にチームがバラバラになる。それでも我慢できなくなったら、トイレに行く振りして俺のとこに来たらいい。近くにいるから」
「太一っ!」
「たいちゃん!」
太一を呼ぶ声は段々大きくなってきて、太一は渋るように野瀬から手を離すと、代わりにクッションを野瀬に手渡した。
「隣の部屋……、弟の部屋だったんだ。今は何もないんだけど……そこで待ってて」
クッションを受け取り、野瀬はしっかり頷くと、もう一度だけ太一を抱きしめ立ち上がった。
太一を呼ぶ声は扉越しに響き、野瀬は自分のスクールバッグを肩に提げた。そして涙を拭っている太一を振り返り、開けるよ?と目で問いかける。太一はティッシュを丸めてゴミ箱に捨てると、コクリと小さく頷いた。
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