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予選突破に巡る想い
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「携帯貸して」
両親の携帯電話を奪い、陽一も野瀬と同じようにしてMonday Monsterへ票を集めた。電話投票もきっちり行い、家電からも、パソコンからも応募する。
もはやヤケに近かった。けど、決してヤケなわけでもない。自分が一番に応援してやらなきゃいけないことを、陽一はちゃんと分かっていた。いつだって太一の味方で居続けてやらなきゃいけないことを。
だって、彼の運命を決めたのは陽一なのだ。アイドルになってよと言ったのは、自分だ。
その事実は変えられないし、両親を必死に説得したことを無かったことになんか出来ない。太一だけでも、この日本に残す。
なぜ今自分が子供なのか、そんなことを恨んだって仕方が無い。自分は両親とアメリカへ行かなきゃいけない。だからせめて太一だけでも、ANNADOLとして、Monday Monsterとして、この日本に残って欲しい。
一生会えなくなるワケじゃない。陽一は誰よりも損な立場で、誰よりも得な立場にいる。
好きだというこの醜い感情。いつか消化しなくちゃいけない。だったら早い方がいいだろう。ここでこの禁じられた感情を捨てるチャンスがあるのなら、逃してはならない。
太一が好きだなんて、弟の陽一にあってはいけない想いだ。太一と離れれば、もしかしてこの醜い想いは消えるかもしれない。それが良いことなんだと言い聞かせ、陽一は両親に携帯を押し返すと、再びソファに腰を下ろした。
テレビは長めのCMが続く。
そこに兄の姿はない。しかし、時を同じくして太一は、投票結果を祈るように待ちわびているのだ。
そんな太一を想い、陽一はぎゅっと両手を絡めて握った。
「お前だけでも……、日本に残れ」
一緒に居たいという想いを封じ込める言葉に魔法をかける。この気持ちを閉じ込めて、見えなくして、なかったことにする。
「勝てよ、太一」
応援する言葉が、想いが、陽一の醜い感情をろ過していくんだ。
この想いは間も無く死ぬ。死にゆくのだ。
「携帯貸して」
両親の携帯電話を奪い、陽一も野瀬と同じようにしてMonday Monsterへ票を集めた。電話投票もきっちり行い、家電からも、パソコンからも応募する。
もはやヤケに近かった。けど、決してヤケなわけでもない。自分が一番に応援してやらなきゃいけないことを、陽一はちゃんと分かっていた。いつだって太一の味方で居続けてやらなきゃいけないことを。
だって、彼の運命を決めたのは陽一なのだ。アイドルになってよと言ったのは、自分だ。
その事実は変えられないし、両親を必死に説得したことを無かったことになんか出来ない。太一だけでも、この日本に残す。
なぜ今自分が子供なのか、そんなことを恨んだって仕方が無い。自分は両親とアメリカへ行かなきゃいけない。だからせめて太一だけでも、ANNADOLとして、Monday Monsterとして、この日本に残って欲しい。
一生会えなくなるワケじゃない。陽一は誰よりも損な立場で、誰よりも得な立場にいる。
好きだというこの醜い感情。いつか消化しなくちゃいけない。だったら早い方がいいだろう。ここでこの禁じられた感情を捨てるチャンスがあるのなら、逃してはならない。
太一が好きだなんて、弟の陽一にあってはいけない想いだ。太一と離れれば、もしかしてこの醜い想いは消えるかもしれない。それが良いことなんだと言い聞かせ、陽一は両親に携帯を押し返すと、再びソファに腰を下ろした。
テレビは長めのCMが続く。
そこに兄の姿はない。しかし、時を同じくして太一は、投票結果を祈るように待ちわびているのだ。
そんな太一を想い、陽一はぎゅっと両手を絡めて握った。
「お前だけでも……、日本に残れ」
一緒に居たいという想いを封じ込める言葉に魔法をかける。この気持ちを閉じ込めて、見えなくして、なかったことにする。
「勝てよ、太一」
応援する言葉が、想いが、陽一の醜い感情をろ過していくんだ。
この想いは間も無く死ぬ。死にゆくのだ。
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