180 / 312
予選突破に巡る想い
2
しおりを挟む
前半は元気で明るい曲調。
それはアイドルとしての四人を表現している。ステージに立ち、歌い、踊りながら、これまでの成果を出し尽くす。
一ノ瀬は笑っている。志藤は煌めいている。雪村は安定している。
歌い、踊り、スポットライトを浴びて、一定の距離を保ち、この最高の瞬間を共有して、散々雪村に怒られたシンクロを高めれば高めるだけ、太一は興奮に近い感動を覚えた。
(あぁ、最高じゃん……っ!)
武者震いさえ感じるほど、一瞬一瞬が鮮やかで、客席の歓声と声援、一人一人の笑顔がくっきりと見えるくらい視界は冴え渡り、メンバーの動きも、その表情もすべて、すべて、ちゃんと見えていた。
雪村の言葉が今、ようやく理解できる。
周りを見ろ。一人で踊るな。
“一体感”というものを太一は初めて体験した。雪村の求めるものは、ここにしかないのかもしれないなんて、そんな風に思えるほど。
そして、急遽変更することになった間奏部分へと突入する。
『みんなも声出して!』
雪村が第一声を上げると、志藤が率先して客席を煽り始めた。それは当初の予定とは違っていて、一瞬太一と一ノ瀬は雪村に目配せをする。メインで煽るのは雪村のはずだったからだ。
しかし、雪村は煽りを完全に志藤に任せていた。そして二人もようやく気付く。
振りの変更箇所は間も無くだ。雪村が頭の中でカウントを間違わないように数えているのだということを。
会場は志藤の煽りでMOMOコールが上がり、そして雪村が声が張り上げた。
『い、く、ぞ! Go !!』
その合図をきっかけに全員で声をはりあげる。
『M!』
タイミングに合わせて一ノ瀬がくるりと客席に背を向ける。彼の背中にはショッキングピンクで書かれたMの字。会場が四人に続いて「M」とレスポンスする。
そして雪村。
『O!』
そう叫ぶタイミングで後ろを向き、客のレスポンスに合わせて、一ノ瀬とタッチを交わした。そうして志藤のM、太一のOまでタッチの波は到達し、「騒げぇ!」と叫んだ志藤に煽られ、客席はここ一番の歓声を上げた。
背を向けたままの雪村の前に三人がしゃがみ込み、『We are MOMO !!』と声が重なった瞬間、雪村が客席に向き直り人差し指を立てた。
『Shi iiii……』
騒いでいた客席が一気に静まり返る。
し……ん、と静寂が続いたタイミングを見計らい、イヤモニから再びチッチッチとカウントが入り、そのまま転調。
さっきとは打って変わったダークで激しめのロック。それは、内に秘めたる野心を表現していた。
TVで何度も流れていた部分。聞き覚えのある曲が始まり、会場ははち切れんばかりの高ぶりを見せた。
曲中でのスキンシップは確かに少ない。しかし、Monday Monsterの提供するプライスレスなパフォーマンスは、客席を巻き込む一体感だった。四人だけでは完成しないこのステージ。それはこの場に立ち、この瞬間を味わうまで、太一には分からなかった。
自分たちの持っている武器が なんなのか ということを。
難易度の高いステップを繰り返し、四人で声を揃え、渾身の一曲を作り上げる。
『We are “MOMO”!!』
客席に背を向け、右手を突き上げる。
一体何人の人が気付いただろうか。この突き上げた右手にお揃いのミサンガが付いていることに。
それはアイドルとしての四人を表現している。ステージに立ち、歌い、踊りながら、これまでの成果を出し尽くす。
一ノ瀬は笑っている。志藤は煌めいている。雪村は安定している。
歌い、踊り、スポットライトを浴びて、一定の距離を保ち、この最高の瞬間を共有して、散々雪村に怒られたシンクロを高めれば高めるだけ、太一は興奮に近い感動を覚えた。
(あぁ、最高じゃん……っ!)
武者震いさえ感じるほど、一瞬一瞬が鮮やかで、客席の歓声と声援、一人一人の笑顔がくっきりと見えるくらい視界は冴え渡り、メンバーの動きも、その表情もすべて、すべて、ちゃんと見えていた。
雪村の言葉が今、ようやく理解できる。
周りを見ろ。一人で踊るな。
“一体感”というものを太一は初めて体験した。雪村の求めるものは、ここにしかないのかもしれないなんて、そんな風に思えるほど。
そして、急遽変更することになった間奏部分へと突入する。
『みんなも声出して!』
雪村が第一声を上げると、志藤が率先して客席を煽り始めた。それは当初の予定とは違っていて、一瞬太一と一ノ瀬は雪村に目配せをする。メインで煽るのは雪村のはずだったからだ。
しかし、雪村は煽りを完全に志藤に任せていた。そして二人もようやく気付く。
振りの変更箇所は間も無くだ。雪村が頭の中でカウントを間違わないように数えているのだということを。
会場は志藤の煽りでMOMOコールが上がり、そして雪村が声が張り上げた。
『い、く、ぞ! Go !!』
その合図をきっかけに全員で声をはりあげる。
『M!』
タイミングに合わせて一ノ瀬がくるりと客席に背を向ける。彼の背中にはショッキングピンクで書かれたMの字。会場が四人に続いて「M」とレスポンスする。
そして雪村。
『O!』
そう叫ぶタイミングで後ろを向き、客のレスポンスに合わせて、一ノ瀬とタッチを交わした。そうして志藤のM、太一のOまでタッチの波は到達し、「騒げぇ!」と叫んだ志藤に煽られ、客席はここ一番の歓声を上げた。
背を向けたままの雪村の前に三人がしゃがみ込み、『We are MOMO !!』と声が重なった瞬間、雪村が客席に向き直り人差し指を立てた。
『Shi iiii……』
騒いでいた客席が一気に静まり返る。
し……ん、と静寂が続いたタイミングを見計らい、イヤモニから再びチッチッチとカウントが入り、そのまま転調。
さっきとは打って変わったダークで激しめのロック。それは、内に秘めたる野心を表現していた。
TVで何度も流れていた部分。聞き覚えのある曲が始まり、会場ははち切れんばかりの高ぶりを見せた。
曲中でのスキンシップは確かに少ない。しかし、Monday Monsterの提供するプライスレスなパフォーマンスは、客席を巻き込む一体感だった。四人だけでは完成しないこのステージ。それはこの場に立ち、この瞬間を味わうまで、太一には分からなかった。
自分たちの持っている武器が なんなのか ということを。
難易度の高いステップを繰り返し、四人で声を揃え、渾身の一曲を作り上げる。
『We are “MOMO”!!』
客席に背を向け、右手を突き上げる。
一体何人の人が気付いただろうか。この突き上げた右手にお揃いのミサンガが付いていることに。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる