MOMO!! ～生き残れ、売れないアイドル！～

エッグバトル、予選開始！

６

　CMが明け、遂にパフォーマンスのお披露目だ。
　一番手は火曜日、BLACK CAT。

　何も持っていない両腕を振り下ろした黒野の手に、扇形に広がるトランプが一気に姿を見せると、イントロそうそうスタジオには大きなどよめきが起きた。
　バラバラっと派手にトランプをバラまく黒野は、クールに踵を返した。

　歓声と拍手が巻き上がる中、猫居がシルクハットを被って登場すると、くるんと帽子を回して紳士のようにお辞儀をした。そして、何もなかったはずの帽子の中から真っ白な鳩を取り出すと、見惚れるほどの微笑みを浮かべて会場へ鳩を羽ばたかせる。

　どよめきと歓声。会場は早々に盛り上がり、審査員達からも歓声が上がる。
　出だしは完璧だ。トランプの散らばったステージの上で、遂にBLACK CATのパフォーマンスが始まる。

　これぞエンターテイメントだと言わんばかり。まさかマジックショーから始まると思ってなかった他曜日メンバーは度肝を抜かされた。テレビ的にも最高の開幕だ。

　二人の安定したダンスが続く。手足の長い二人のパフォーマンスはとても優美。怪しげなリズムと交錯するライティング。細かいステップを一度もミスせず、独特な世界観を踊りきる。

　ワイルドセクシーの異名を持つBLACK CATなだけに、己の見せ方を熟知している。唇を舐める仕草も、髪をかき上げる仕草も、絶妙な肌の露出も、流し目のタイミングでさえも全て計算づく。この事務所で一番のエンターテイナーは自分達なのだと、ステージを見ている全ての国民に訴えかけているようだった。

　見ているものを引き込み、引きずり込むようなパフォーマンス。

　歌い終わりに黒野がストールを外し、猫居のシルクハットにそれを入れる。再び取り出されたストールには、BLACK CATの文字が刻まれていた。

　爆発的な歓声と拍手が巻き起こり、 この戦いの基準となるレベルがかなり高いのだという事実を、他の曜日チームにはもちろん、視聴者達にさえ突きつける結果となった。

　SHOWだ。BLACK CATのステージは正しくショー。
　歌って踊るだけがアイドルではない。ダンサーという名も、歌手という名もマッチしない。アイドルという名のエンターテイナーと言えるだろう。
　一瞬も目が離せないステージだった。

　審査員たちから叩き出された得点は、971点。いきなりの高得点だった。

　ビビリの太一だけじゃなく、全員が顔を見合わせて青ざめる。まさかいきなり970点台に乗るなんて思ってもいない。負けるつもりはないが、負けてしまうかもしれないという不安は嫌でも全員に過ぎった。

　BLACK CATの二人はこの高得点に抱き合い、嬉しそうに微笑み合う。客席はそんな二人に黄色い歓声を上げた。

　審査員達の評価や感想がMCによって聞き出され、それは最終的に猫居にも向けられた。

「心掛けたのは、誰が見ても楽しいステージです。若い子や女の子達だけじゃなく、老若男女問わず、魅了できるようなステージを、って。ね？」 

　優しい微笑みに黒野はコクリと頷く。

「そうです。ドリームキャッチは色んな年代の方に幅広く視聴されている人気番組なので、みんなが楽しめるものは何だろうって話して。ダンスや歌もそうだけど、手品の練習量の方が圧倒的に多かったですね」

　そう言って黒野と猫居は顔を見合わせて笑った。
　仲睦まじい二人に、またも客席が色めき立つ。それすら二人は分かってそうしているようだ。