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少年達の冬
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木曜19時。テレビの前に、どれほどの国民が釘付けになっただろうか。パソコンや携帯電話を片手に、生中継されるエッグバトル第一回戦を今か今かと待ちわびる。
データ放送を受信しているお宅ではリモコンのスタンバイだって忘れてはいない。携帯を持っていない子供に至っては電話投票も出来るため、自宅の電話の前でメモの準備も万端だ。
世間が大注目する中、遂に始まった決戦。
五つのチームが順に登場する。
月曜、Monday Monster
白地のツナギに、ショッキングピンクをバイカラーに用いたカッコ可愛い衣装での登場だ。ダンス重視で勝負する為、ヘッドマイクまでデザインするという拘りをみせている。
火曜、BLACK CAT
それぞれ、金と銀のスパンコールがあしらわれた派手めの衣装を上品に着こなして登場。大胆にボタンのあいたYシャツと柔らかなストールを首にかけた黒野。一方肌の露出を控えた猫居はオシャレな棒タイで紳士の雰囲気を漂わせる。
水曜、Mellow
パステルカラーの淡い水色スーツを纏った水曜の王子様。金や銀の細い刺繍糸で装飾されたそのスーツは実に豪華かつ繊細で、美しい。真っ白の手袋がより一層王子様感を醸し出している。
木曜、SURF
黒の変形ライダースジャケットに脚のラインを強調するかのようなタイトパンツ。それぞれが着ているインナーが色鮮やかに目立ち、クールでロックな印象を与えている。
最後は金曜、Check it !
迷彩柄をポイントに使ったカジュアルスタイル。目を引く髪型もまた彼らの拘り。ツーブロックにラインアートをあしらった二ノ宮。コーンロウでクールに決めた天道。黒だった髪を大胆に脱色し、エクステで髪をのばした小形。
それぞれ説明しきれないほどの拘りを細部に渡って詰め込んだ、渾身の衣装でのおでましである。
生中継の熱気はテレビ画面を通して、お茶の間にしっかりと伝わっていた。
緊張しているエッグ達の表情。それでも生き残ることしか考えていないその強い眼差し。この3時間にすべてを掛けていることが視聴者の目に印象深く映った。
テレビの前では多くのファンが固唾を飲んで決戦の幕が振り落とされるのを待っている。
だが、この日本中どこを探したって、誰にも負けないくらい本気で生き残りたいと強く思っていたのは、太一だったに違いない──。
それは太一の入試合格発表から僅か一週間後の話。沖家は家族四人揃って、深刻な話に静まり返った。
両親が、食卓を挟んだ息子たちを真剣に見つめる。
頭を抱える太一に、陽一はどう声をかけるべきかも分からず、両親をただ睨みつけた。
「……俺はここにいる」
静寂を切り裂く陽一の声。それは怒りさえ含んでいた。
「……ダメだ。そんなこと出来るわけない」
父の声が静かにそれを諭す。
「俺は太一とここに居る!」
「陽一!」
両親が声を揃えて首を振る。
「だって……! じゃあ太一はどうなるんだよ! このままエッグバトルに勝ち進んだら、太一は……、太一はどうなるんだよ!」
両親からその答えは出てこない。親としての要求を押し付けたい気持ちはもちろんある。けどそれが出来ない状況にあることは、さすがの親たちも分かっていた。
「お前はどうしたい? 太一」
そのすべての答えを彼に委ねる。利口な太一の判断を、信じるしかなかった。
だが──。
「……デビュー、したい」
胃が捩れるような……、その答え。
父親の海外転勤が決まったのだ。いつ帰って来られるかもわからない転勤だ。両親は、一家揃っての渡米を願っていた。
だけど、太一の気持ちはデビューへと向かう。生半可な気持ちでここまでやってきたわけじゃないから。
デビューしたい、その言葉は息が詰まるほどの決意の言葉だった。
データ放送を受信しているお宅ではリモコンのスタンバイだって忘れてはいない。携帯を持っていない子供に至っては電話投票も出来るため、自宅の電話の前でメモの準備も万端だ。
世間が大注目する中、遂に始まった決戦。
五つのチームが順に登場する。
月曜、Monday Monster
白地のツナギに、ショッキングピンクをバイカラーに用いたカッコ可愛い衣装での登場だ。ダンス重視で勝負する為、ヘッドマイクまでデザインするという拘りをみせている。
火曜、BLACK CAT
それぞれ、金と銀のスパンコールがあしらわれた派手めの衣装を上品に着こなして登場。大胆にボタンのあいたYシャツと柔らかなストールを首にかけた黒野。一方肌の露出を控えた猫居はオシャレな棒タイで紳士の雰囲気を漂わせる。
水曜、Mellow
パステルカラーの淡い水色スーツを纏った水曜の王子様。金や銀の細い刺繍糸で装飾されたそのスーツは実に豪華かつ繊細で、美しい。真っ白の手袋がより一層王子様感を醸し出している。
木曜、SURF
黒の変形ライダースジャケットに脚のラインを強調するかのようなタイトパンツ。それぞれが着ているインナーが色鮮やかに目立ち、クールでロックな印象を与えている。
最後は金曜、Check it !
迷彩柄をポイントに使ったカジュアルスタイル。目を引く髪型もまた彼らの拘り。ツーブロックにラインアートをあしらった二ノ宮。コーンロウでクールに決めた天道。黒だった髪を大胆に脱色し、エクステで髪をのばした小形。
それぞれ説明しきれないほどの拘りを細部に渡って詰め込んだ、渾身の衣装でのおでましである。
生中継の熱気はテレビ画面を通して、お茶の間にしっかりと伝わっていた。
緊張しているエッグ達の表情。それでも生き残ることしか考えていないその強い眼差し。この3時間にすべてを掛けていることが視聴者の目に印象深く映った。
テレビの前では多くのファンが固唾を飲んで決戦の幕が振り落とされるのを待っている。
だが、この日本中どこを探したって、誰にも負けないくらい本気で生き残りたいと強く思っていたのは、太一だったに違いない──。
それは太一の入試合格発表から僅か一週間後の話。沖家は家族四人揃って、深刻な話に静まり返った。
両親が、食卓を挟んだ息子たちを真剣に見つめる。
頭を抱える太一に、陽一はどう声をかけるべきかも分からず、両親をただ睨みつけた。
「……俺はここにいる」
静寂を切り裂く陽一の声。それは怒りさえ含んでいた。
「……ダメだ。そんなこと出来るわけない」
父の声が静かにそれを諭す。
「俺は太一とここに居る!」
「陽一!」
両親が声を揃えて首を振る。
「だって……! じゃあ太一はどうなるんだよ! このままエッグバトルに勝ち進んだら、太一は……、太一はどうなるんだよ!」
両親からその答えは出てこない。親としての要求を押し付けたい気持ちはもちろんある。けどそれが出来ない状況にあることは、さすがの親たちも分かっていた。
「お前はどうしたい? 太一」
そのすべての答えを彼に委ねる。利口な太一の判断を、信じるしかなかった。
だが──。
「……デビュー、したい」
胃が捩れるような……、その答え。
父親の海外転勤が決まったのだ。いつ帰って来られるかもわからない転勤だ。両親は、一家揃っての渡米を願っていた。
だけど、太一の気持ちはデビューへと向かう。生半可な気持ちでここまでやってきたわけじゃないから。
デビューしたい、その言葉は息が詰まるほどの決意の言葉だった。
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