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少年達の冬
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* * * * *
冬休みが終わると、あっという間に入試がやって来た。今までの積み重ねを発揮する時。
忙しい仕事の合間に必死に勉強した。
冬休み明けに志藤と一ノ瀬から貰ったお守り。雪村も二人からお守りを貰っていた。どうやら二人は共に初詣へと出かけ、合格祈願のお守りを購入してくれたらしい。白地に赤やオレンジの花柄が刺繍されているお守りを握りしめ、入試に挑む。
冷静に一問ずつ、一教科ずつ、終わらせていく。
これが終われば、しがらみからの解放だ。ようやく仕事に集中することが出来る。しかし、それとて合格しなければ意味がないわけで、太一は焦らずに分かる問題からすらすらと解いていった。
時間のかかりそうなものを後からじっくりと解いて行き、時間いっぱいまで見直す。落ちるわけにはいかなかった。絶対に合格しなくちゃいけない。アイドルとして、ちゃんと仕事をするために、こんなところでしくじるわけにはいかないから。
試験がすべて終わると、開放感から太一は大きな伸びをして天井を見上げた。
(ユキも終わったかな)
そう思い窓の外へと視線を移そうとして、ドキっとした。
試験を終えた受験生たちがそりゃもう穴が空くほど太一に釘付けだったからだ。
(集中しすぎて気付かなかったけど、めっちゃ見られてるじゃん!)
太一の存在に動揺した生徒と、士気をあげた生徒はきっと半分半分だろう。太一はずっと試験に集中していたから、最初から注目されていることに全然気付いていない。でも、それで良かった。気付いていたら、まともに試験できたかどうか怪しいから。
試験官から合格発表の手順を知らされ、解散となった推薦入試。
太一は一番に席を立った。
物凄い注目を浴びていることに気付いたからには、囲まれる前に退散しなくちゃ面倒である。もちろん囲まれることなど今まで経験したことはないが、その危険を感じるほどの注目を集めていたのだ。
(逃げろ……!)
教室を出て、廊下を全力疾走する。上履きからスニーカーに履き替え、校舎を飛び出る。
後ろを振り返ると、まだ誰もいなくて、ほっと息を吐き出したが、いきなり「太一く~ん!」と名前を呼ばれた。
ビクッとして振り返るが誰もいない。どこから声がしたのだと辺りを見渡すと、また数名の女子の声が名前を呼んでくる。ぱっと校舎を見上げると、さっきまで自分が居たと思われる教室から、女の子達が数名、手を振っていた。
目が合うと女の子達はキャーキャーと騒ぎたて、一人が「試験お疲れ様でしたぁ」と叫ぶと、女の子達はそれに続いてまた騒ぎ出す。
「お、お疲れ様!」
返事すると強烈な嬌声があがった。男子生徒達も教室から顔を覗かせ、太一を見下ろしている。
「これからお仕事ですかぁ?」
さすがにそれはないだろ、と太一は思ったが、全力疾走で教室を飛び出したからには、そうだと言わざるを得なかった。
ぎこちなく頷いた太一にまた女子が騒ぎたて、「頑張って下さい!」と口々に言われる。
参ったなと思いながら、「ありがとう」と返事をして……少しばかりあざとい事を思いついた。
「来月決戦だから! 良かったら投票してね!」
きゃー!と発狂する女子達が、絶対投票する!と言い切る。誰に投票するかは分からないが、太一は少しでも月曜日に票を集めたくて、今一番のリップサービスをお見舞いする。
「みんなと同級生になれたらいいね! 楽しみにしてる! また会おう!」
ここ一番の絶叫が響き、太一は窓から顔を出している他校生達に手を振った。
校門を出るまで、後ろからは嬌声が聞こえていて、自覚せざるを得ないほど、自分はアイドルだと思わされた。めちゃくちゃ知名度の上がっている自分に少しの恐怖さえ覚える。けど、なんて気持ちいいんだ、とも太一は思った。
雪村や志藤はずっとこんな感じだったんだと、そのプレッシャーと快感に身震いする。
「アイドル……すごい……!」
最寄り駅まで太一はまた駆け出す。夢見る場所まで駆け抜けるように。
冬休みが終わると、あっという間に入試がやって来た。今までの積み重ねを発揮する時。
忙しい仕事の合間に必死に勉強した。
冬休み明けに志藤と一ノ瀬から貰ったお守り。雪村も二人からお守りを貰っていた。どうやら二人は共に初詣へと出かけ、合格祈願のお守りを購入してくれたらしい。白地に赤やオレンジの花柄が刺繍されているお守りを握りしめ、入試に挑む。
冷静に一問ずつ、一教科ずつ、終わらせていく。
これが終われば、しがらみからの解放だ。ようやく仕事に集中することが出来る。しかし、それとて合格しなければ意味がないわけで、太一は焦らずに分かる問題からすらすらと解いていった。
時間のかかりそうなものを後からじっくりと解いて行き、時間いっぱいまで見直す。落ちるわけにはいかなかった。絶対に合格しなくちゃいけない。アイドルとして、ちゃんと仕事をするために、こんなところでしくじるわけにはいかないから。
試験がすべて終わると、開放感から太一は大きな伸びをして天井を見上げた。
(ユキも終わったかな)
そう思い窓の外へと視線を移そうとして、ドキっとした。
試験を終えた受験生たちがそりゃもう穴が空くほど太一に釘付けだったからだ。
(集中しすぎて気付かなかったけど、めっちゃ見られてるじゃん!)
太一の存在に動揺した生徒と、士気をあげた生徒はきっと半分半分だろう。太一はずっと試験に集中していたから、最初から注目されていることに全然気付いていない。でも、それで良かった。気付いていたら、まともに試験できたかどうか怪しいから。
試験官から合格発表の手順を知らされ、解散となった推薦入試。
太一は一番に席を立った。
物凄い注目を浴びていることに気付いたからには、囲まれる前に退散しなくちゃ面倒である。もちろん囲まれることなど今まで経験したことはないが、その危険を感じるほどの注目を集めていたのだ。
(逃げろ……!)
教室を出て、廊下を全力疾走する。上履きからスニーカーに履き替え、校舎を飛び出る。
後ろを振り返ると、まだ誰もいなくて、ほっと息を吐き出したが、いきなり「太一く~ん!」と名前を呼ばれた。
ビクッとして振り返るが誰もいない。どこから声がしたのだと辺りを見渡すと、また数名の女子の声が名前を呼んでくる。ぱっと校舎を見上げると、さっきまで自分が居たと思われる教室から、女の子達が数名、手を振っていた。
目が合うと女の子達はキャーキャーと騒ぎたて、一人が「試験お疲れ様でしたぁ」と叫ぶと、女の子達はそれに続いてまた騒ぎ出す。
「お、お疲れ様!」
返事すると強烈な嬌声があがった。男子生徒達も教室から顔を覗かせ、太一を見下ろしている。
「これからお仕事ですかぁ?」
さすがにそれはないだろ、と太一は思ったが、全力疾走で教室を飛び出したからには、そうだと言わざるを得なかった。
ぎこちなく頷いた太一にまた女子が騒ぎたて、「頑張って下さい!」と口々に言われる。
参ったなと思いながら、「ありがとう」と返事をして……少しばかりあざとい事を思いついた。
「来月決戦だから! 良かったら投票してね!」
きゃー!と発狂する女子達が、絶対投票する!と言い切る。誰に投票するかは分からないが、太一は少しでも月曜日に票を集めたくて、今一番のリップサービスをお見舞いする。
「みんなと同級生になれたらいいね! 楽しみにしてる! また会おう!」
ここ一番の絶叫が響き、太一は窓から顔を出している他校生達に手を振った。
校門を出るまで、後ろからは嬌声が聞こえていて、自覚せざるを得ないほど、自分はアイドルだと思わされた。めちゃくちゃ知名度の上がっている自分に少しの恐怖さえ覚える。けど、なんて気持ちいいんだ、とも太一は思った。
雪村や志藤はずっとこんな感じだったんだと、そのプレッシャーと快感に身震いする。
「アイドル……すごい……!」
最寄り駅まで太一はまた駆け出す。夢見る場所まで駆け抜けるように。
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