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少年達の冬
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太一が黒野の標的にされているのは誰もがすぐに気付いたが、ほとんどのエッグは太一を助けることも出来ず、黙ってその様子を見ているしかなかった。
だがもちろん、雪村がそれを見逃すわけはない。嫌がらせを繰り返す黒野にすっと近づきプレッシャーをかける。そうすると黒野は決まって太一からすぐに離れて行った。
黒野が雪村に怖気付いているわけではない。黒野とて、無駄な喧嘩をするつもりがないだけだ。第一雪村を敵に回すと厄介だとさすがの黒野も分かっている。
ただ、天才と謳われる太一の才能に、黒野は少なからず嫉妬していたのだ。ぽっと出てきただけの太一に今後のアイドル活動を脅かされるなんて御免被りたいのだろう。しかもその手助けになってしまったのが、己の欠番によるものなんだから、尚の事ピリピリしてしまうのは致し方ない事だった。
太一の疲労は着実に蓄積されていた。
受験勉強と仕事だけでもあっぷあっぷしているというのに、そこに黒野からの嫌がらせが加われば、太一でなくともげっそりしてしまうだろう。大抵は雪村が助けてくれるが、もちろん毎回都合良く雪村がそばにいるわけじゃない。なぜ自分が標的にされたかも分からないまま、ただ言われたことを真摯に受け止め、すみませんと謝ることが精一杯だった。
二月に行われる曜日対決に向けての準備は着実に進んでいく。曲も決まり、歌詞も仕上がり、レコーディングが行われる。そしてこれからダンスの振りを覚え、衣装も決めなければいけない。やらなければいけないことは山積みで、冬休みに入ってもなかなか休めそうになかった。
この休みが明ければ推薦入試だって待ち受けている。怒涛のスケジュール。頭がおかしくなると思いながらも、太一は今までできっと一番充実した日々を過ごしていた。
番組も徐々にリアルタイムに近づき始め、二月の対決に向けてその足並みを揃えようと駆け足をはじめる。
学校は冬休みに入り、世間はすっかりクリスマス色に染まったその当日。志藤は仕事を終え、駆け足で待ち人のいる家へと向かった。マフラーで口元を隠し、コートに両手を突っ込んで家路を急ぐ。
すっかり遅くなった。もう少し早く仕事を終われると思っていたのに、時刻はすでに二十時半を過ぎている。
「ごめん。遅くなった。今からでも、会える?」
電話を掛けてしばらく、前方に彼女の姿を捉える。いつも綺麗にしている髪。ふわふわのニットワンピ。
「志藤くん!」
手を振り名前を読んだのは美月だ。
「ごめん! ほんとにごめん。怒ってる?」
彼女の顔色を伺い、志藤はしゅんと眉を垂れた。
「怒ってないよ。お仕事お疲れ様。うち、あがってく?」
無邪気にそう誘ってきた美月に志藤はギョッとした。実はこの二人、付き合い始めていた。だがもちろん、志藤に愛はない。全ては太一にいらぬ虫を寄せ付けないためだ。好きでもない美月とデートをし、電話をし、クリスマスにプレゼントを用意した。仕事をしているのだからあまりケチったものは買えないと、サマンサタバサの財布を買った。きっと喜ぶ。
そう分かって買ったけど、お金を出してプレゼント買ってあげたい相手は、本当は美月じゃない。
太一に何かを買ってあげたかった。
けど、きっと高額なものを買っても気を遣わせるだけだ。
だがもちろん、雪村がそれを見逃すわけはない。嫌がらせを繰り返す黒野にすっと近づきプレッシャーをかける。そうすると黒野は決まって太一からすぐに離れて行った。
黒野が雪村に怖気付いているわけではない。黒野とて、無駄な喧嘩をするつもりがないだけだ。第一雪村を敵に回すと厄介だとさすがの黒野も分かっている。
ただ、天才と謳われる太一の才能に、黒野は少なからず嫉妬していたのだ。ぽっと出てきただけの太一に今後のアイドル活動を脅かされるなんて御免被りたいのだろう。しかもその手助けになってしまったのが、己の欠番によるものなんだから、尚の事ピリピリしてしまうのは致し方ない事だった。
太一の疲労は着実に蓄積されていた。
受験勉強と仕事だけでもあっぷあっぷしているというのに、そこに黒野からの嫌がらせが加われば、太一でなくともげっそりしてしまうだろう。大抵は雪村が助けてくれるが、もちろん毎回都合良く雪村がそばにいるわけじゃない。なぜ自分が標的にされたかも分からないまま、ただ言われたことを真摯に受け止め、すみませんと謝ることが精一杯だった。
二月に行われる曜日対決に向けての準備は着実に進んでいく。曲も決まり、歌詞も仕上がり、レコーディングが行われる。そしてこれからダンスの振りを覚え、衣装も決めなければいけない。やらなければいけないことは山積みで、冬休みに入ってもなかなか休めそうになかった。
この休みが明ければ推薦入試だって待ち受けている。怒涛のスケジュール。頭がおかしくなると思いながらも、太一は今までできっと一番充実した日々を過ごしていた。
番組も徐々にリアルタイムに近づき始め、二月の対決に向けてその足並みを揃えようと駆け足をはじめる。
学校は冬休みに入り、世間はすっかりクリスマス色に染まったその当日。志藤は仕事を終え、駆け足で待ち人のいる家へと向かった。マフラーで口元を隠し、コートに両手を突っ込んで家路を急ぐ。
すっかり遅くなった。もう少し早く仕事を終われると思っていたのに、時刻はすでに二十時半を過ぎている。
「ごめん。遅くなった。今からでも、会える?」
電話を掛けてしばらく、前方に彼女の姿を捉える。いつも綺麗にしている髪。ふわふわのニットワンピ。
「志藤くん!」
手を振り名前を読んだのは美月だ。
「ごめん! ほんとにごめん。怒ってる?」
彼女の顔色を伺い、志藤はしゅんと眉を垂れた。
「怒ってないよ。お仕事お疲れ様。うち、あがってく?」
無邪気にそう誘ってきた美月に志藤はギョッとした。実はこの二人、付き合い始めていた。だがもちろん、志藤に愛はない。全ては太一にいらぬ虫を寄せ付けないためだ。好きでもない美月とデートをし、電話をし、クリスマスにプレゼントを用意した。仕事をしているのだからあまりケチったものは買えないと、サマンサタバサの財布を買った。きっと喜ぶ。
そう分かって買ったけど、お金を出してプレゼント買ってあげたい相手は、本当は美月じゃない。
太一に何かを買ってあげたかった。
けど、きっと高額なものを買っても気を遣わせるだけだ。
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