MOMO!! ~生き残れ、売れないアイドル!~

2wei

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優越の対象

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 綺麗に撮れている写真を選択し、美月と二人で落書きブースへ移ると、少し離れた場所に小さな人集りが出来ていて、こちらを見ているようだった。

(やっぱりバレてるな)

 声をかけられたら面倒だなと思いながら、でもまさか誰が自分なんかに声をかけてくるものか、とも思う。なんだかんだで、太一のマイナス思考はまだまだ健在である。

 センスのない落書きを加えながらも、美月が「字、超綺麗ですね、先輩!」とこれまた無駄に褒めてくれるから、太一はもうそんな褒めちぎらなくてもいいのにと、段々申し訳なさすら感じ始めていた。

 落書きを終えると、プリントアウトされるまでの間に、美月は画像を携帯に転送する作業を滞りなく行った。その隣に立ち、背後からチクチクと刺さるような視線を受け止める。
 仕上がったシールを取り出して、美月は嬉しそうに太一を見上げた。

「半分に分けてきますね!」

 そう言ってセルフのハサミを探しに行こうと美月が踵を返すから、思わずガシッとその腕を掴んでしまった。
 その力の強さに驚き、美月ははっとして太一を振り返った。しかしその驚いた表情を見て、太一も慌てて掴んだ腕を放した。

「あ、ごめん。その……それ、全部美月ちゃんが貰ってくれていいよ。オレ、その……そろそろ行かなきゃ。塾なんだ」

 確かに時間は迫っていた。

「あ、そうだったんですね。すみません、付き合わせちゃって」
「いや、家まで送ってあげられなくてごめん」

 謝る太一に、美月はサラサラの髪を靡かせて微笑むと、明日またプリクラ渡しますね、と律儀にそう約束した。だから、太一は美月の持っているプリクラを覗き込んで、彼女が一番可愛く写っている写真を指差した。

「じゃこれ、一枚だけでいいよ」

 そう言って微笑んだ。

 太一は気付かない。美月が本当に惚れ惚れしていることを。そしてまわりの取り巻き達もその微笑みに蕩けそうになっていることも。

「じゃ……その、ごめんね。オレ行くよ。またね」

 ほぼ逃げた。

 注目されるのが嫌だった。自分には釣り合わない程の美人を連れていることが突然怖くなった。あちこちでこちらを見ている女の子達の間を縫うようにゲームセンターを飛び出すと、自転車にまたがって塾へと向かう。
 五分とかからない場所だ。目と鼻の先。まだ時間に余裕はあったが、バタバタと塾のあるビルへと駆け込み、教室に飛び込んだ。

 エッグバトルがどれほど世間で話題になっているのか、太一は今になってようやく理解する。注目されるということが、こんなに怖いものとは思ってもみなかった。
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