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前途多難

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 まさか一番簡単な説明だったとは思いもよらず、太一はまた一気に赤面した。助けを求めるようにスタッフ達にも目配せしたが、ばっちり笑われている。穴があったら入りたいとはこの事だ。
 顔から湯気を上げる太一に、志藤が助け舟を出した。

「俺が説明してあげる。雪村さんの世間的なイメージは爽やか王子様ってところかな。バラエティへの露出が少なかったからか、たぶんルックスのイメージが先行してる」

 赤面しながら志藤の説明を聞くと、確かにそうだと太一は納得する。そういえばそれ、すごく知っていた、と。

「ただ、エッグバトルでそのイメージは変わりつつあるんじゃないかと思うんだ。本来の荒々しさや男らしさ、ストイックな部分の露出が目立ち始めてる。それこそ太ちゃんの言うような、リーダーシップとか、実行力とか説得力とかさ」
「不本意だけどな」

 雪村が志藤の言葉に苦笑いを返した。

 ぼそりと呟かれたその言葉を一同はスルーしたが、全員揃って「不本意なのかよ」と心の中でツッコミを入れた。だって、エッグバトルが始まろうとしているその初日。雪村はカメラの前でいきなり小形にメンチを切ったのだ。しかもその後それを軌道修正することも無く、地のままの雪村で居続けている。

 正直それはエッグ達に衝撃を与え、また性懲りもなく憧れを増長させている。世間のイメージなんてクソくらえだとでも言うような雪村の在り方は、後輩たちにとっての“希望”だ。アイドルという型枠から逸脱しているから。それでもいいんだ、世間はそれでも追いかけてきてくれるんだ、というその事実は“アイドル”という窮屈な職業にとっては希望でしかない。

 だが、イメージ打破が不本意だったという雪村の言葉を志藤は綺麗にスルーし、言葉を続けた。

「けど、雪村さんの魅力はそれだけじゃない。雪村さんはそれこそスイッチがブレーカー並みなんだよ。なかなか落ちないし数も多い。スイッチが全部落ちた状態の雪村涼は、俺らでも滅多にお目にかかれない貴重な姿なんだよね」
「うるせぇよ」

 鼻で笑い飛ばし、雪村はそこで話を打ち切った。

 太一は、志藤の説明に心から頷く。自分の言いたかったことは正にそれだと言わんばかりに。この男、賢いのか馬鹿なのか……、きっと紙一重だ。
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