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前途多難
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制服姿の雪村が会議室にやってくると、さっそくMonday Monsterとしての会議が開始された。
手渡された資料にはプロモーション計画の一覧が事細かく記載されている。番組サイドのスタッフも交え、今後の活動計画が説明される。同時に、世間がかなりエッグバトルに注目し始めているということも視聴率のグラフと共に説明を受けた。
ANNA Productionのアイドル 、通称ANNADOL。
流行に敏感な若者達が名付けた事務所アイドルの総称だ。自分たちが世間からそう呼ばれるようになっているということをこの時初めて知った四人は、ダサイ、なんて笑いあったけど、この “ANNADOL” は急上昇ワードとして、この年の流行語大賞に後々ノミネートを果たすことになる。
資料を広げての会議は長々と続いたが最終的に、時間はたったの三ヶ月しかない、という話であった。
この三ヶ月の間に曲を決め、レコーディングを済まし、ダンスの振りを覚え、衣装もデザインする。もしもこの予選に勝ち残ることが出来れば、今度は最終決戦の場となるコンサートが待ち構えている。やらなければならないことが山積みだ。
それでもまずは三ヶ月後の対決に向けて曲作りからスタートだ。
「実際どんな曲にしたいとか、希望はある?」
作曲家からの質問に、四人は顔を見合わせた。
希望、と言っているが、これは必ず提示しなければならない要望である。
どんな曲にしたいのか。
雪村や志藤はそれらしく悩んでいたが、太一や一ノ瀬はイマイチぴんと来ていなかった。曲まで自分たちのイメージで決められるなんて、まるで考えてもいなかったからだ。
歌いたい歌は何か。
太一はそんな風に考え、少し怪しげな曲を歌いたいなぁ、なんてぼんやり思った。どうせならすごく難しい曲でもいいなんて考え、ふと隣に座る一ノ瀬を見た。
(でも、そうなるとイチのイメージからは逸れるよね)
四人でMonday Monsterだ。この四人のスタイルを確立しなければいけない。独りよがりでは纏まらないのだ。
太一は悩む雪村や志藤を見つめ、きっとみんな自分の歌いたい歌のイメージがあるけど、それを口にするのを躊躇っているんだろうなと感じた。何をどうするのがいいのか、右も左も分からなかった。突然寄せ集められた四人なのだ。話し合う術さえ、手探りの状態だった。
「とりあえず、一人ずつ自分のイメージ言い合おう」
雪村が提案し、まずお前から言え、と志藤が名指しされた。なんで俺からなんだよ、と心中ムカつきながら、志藤は言われたままにイメージを伝えた。
「俺のイメージとしては、やっぱちょっと爽やかにいきたいかな。でもその中にも疾走感みたいなのも欲しくて。スポーツしてる!って感じのイメージかな?」
志藤のイメージを聞いて、太一はヤバイと思った。自分の持っていたイメージとほぼ正反対だったからだ。志藤のイメージに一ノ瀬が「へぇ~」とどこか驚いたように声を出した。
「僕のイメージとは少し違うなぁ」
あっさりと否定する一ノ瀬に、太一はギョッとした。
「僕も爽やか路線で異論はないんだけど、どっちかというとポップ寄りなイメージだった」
まだ小学生の一ノ瀬の発言に、太一は更にと度肝を抜かされる。
(空気を読めよ、イチ……!)
手渡された資料にはプロモーション計画の一覧が事細かく記載されている。番組サイドのスタッフも交え、今後の活動計画が説明される。同時に、世間がかなりエッグバトルに注目し始めているということも視聴率のグラフと共に説明を受けた。
ANNA Productionのアイドル 、通称ANNADOL。
流行に敏感な若者達が名付けた事務所アイドルの総称だ。自分たちが世間からそう呼ばれるようになっているということをこの時初めて知った四人は、ダサイ、なんて笑いあったけど、この “ANNADOL” は急上昇ワードとして、この年の流行語大賞に後々ノミネートを果たすことになる。
資料を広げての会議は長々と続いたが最終的に、時間はたったの三ヶ月しかない、という話であった。
この三ヶ月の間に曲を決め、レコーディングを済まし、ダンスの振りを覚え、衣装もデザインする。もしもこの予選に勝ち残ることが出来れば、今度は最終決戦の場となるコンサートが待ち構えている。やらなければならないことが山積みだ。
それでもまずは三ヶ月後の対決に向けて曲作りからスタートだ。
「実際どんな曲にしたいとか、希望はある?」
作曲家からの質問に、四人は顔を見合わせた。
希望、と言っているが、これは必ず提示しなければならない要望である。
どんな曲にしたいのか。
雪村や志藤はそれらしく悩んでいたが、太一や一ノ瀬はイマイチぴんと来ていなかった。曲まで自分たちのイメージで決められるなんて、まるで考えてもいなかったからだ。
歌いたい歌は何か。
太一はそんな風に考え、少し怪しげな曲を歌いたいなぁ、なんてぼんやり思った。どうせならすごく難しい曲でもいいなんて考え、ふと隣に座る一ノ瀬を見た。
(でも、そうなるとイチのイメージからは逸れるよね)
四人でMonday Monsterだ。この四人のスタイルを確立しなければいけない。独りよがりでは纏まらないのだ。
太一は悩む雪村や志藤を見つめ、きっとみんな自分の歌いたい歌のイメージがあるけど、それを口にするのを躊躇っているんだろうなと感じた。何をどうするのがいいのか、右も左も分からなかった。突然寄せ集められた四人なのだ。話し合う術さえ、手探りの状態だった。
「とりあえず、一人ずつ自分のイメージ言い合おう」
雪村が提案し、まずお前から言え、と志藤が名指しされた。なんで俺からなんだよ、と心中ムカつきながら、志藤は言われたままにイメージを伝えた。
「俺のイメージとしては、やっぱちょっと爽やかにいきたいかな。でもその中にも疾走感みたいなのも欲しくて。スポーツしてる!って感じのイメージかな?」
志藤のイメージを聞いて、太一はヤバイと思った。自分の持っていたイメージとほぼ正反対だったからだ。志藤のイメージに一ノ瀬が「へぇ~」とどこか驚いたように声を出した。
「僕のイメージとは少し違うなぁ」
あっさりと否定する一ノ瀬に、太一はギョッとした。
「僕も爽やか路線で異論はないんだけど、どっちかというとポップ寄りなイメージだった」
まだ小学生の一ノ瀬の発言に、太一は更にと度肝を抜かされる。
(空気を読めよ、イチ……!)
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