MOMO!! ~生き残れ、売れないアイドル!~

2wei

文字の大きさ
上 下
87 / 312
熱帯夜

しおりを挟む
「最悪じゃん」

 色目を使う男達から太一を守る一方で、黒野からも太一を庇うとなると、志藤の精神面もかなり疲労困憊、請け合いだ。堪らず大きなため息が出てしまう。

 トイレを出てエレベーターで一階上まで戻ろうかと思ったのだがエレベーターまで歩くくらいなら先ほど使用した非常階段の方がよほど近い。志藤は少し迷った末に階段を使用することに決めた。
 だが、非常階段の入り口付近で志藤は早速その歩みを止めた。踊り場付近で男が二人、何やら体を寄せ合っていたからだ。

 ハッとして身を隠す。

 再びそろりと覗き見すると、先ほどトイレにいた黒野と猫居がそこにいた。階段に座っている二人だが、猫居に肩を抱かれ、黒野は甘えるように彼の肩に体を預けていた。猫居は黒野の手を握り、今にもキスするんじゃないだろうかというほどの色気を漂わせている。

(ちょっ、ちょちょちょっと待って! これ……! これってまさか!)

 顔を赤らめ、心臓をバクバク高鳴らせ、志藤は完全にこんがらがった。佐久間と菊池の会話さえ聞いていなかったら、志藤はきっと彼らをそういう目では見なかっただろう。二人が親友であることを知っているからだ。猫居が優しいことも、母のように寛大であることも知っている。だから慰めているだけだと、そう思うだけにとどまるはずなのだが、もはや志藤にはそんな普通の解釈すら出来なかった。

(やっべ、や……っべ! まさかの黒野くんが受け?)

 少なくともそれはあり得ない。だけど幼い志藤の単純な思考回路では見たままの現状しか捉えられなかった。このままエレベーターへ向かうべきだと思うのだが、志藤は怖いもの見たさからか、再びそっと二人を覗き見た。

 すると、猫居が黒野の頭にキスをするではないか。

(……っだぁぁぁぁああ! 見てしまったぁ!)

 志藤はこれ以上はダメだと思い、スタートダッシュを決めてエレベーターまで駆け出した。

(キスしてた! 頭に、キスしてた!)

 手をつなぎ、肩を抱き、頭にキス。志藤はぜーぜーと息をしながら楽屋に戻ると、みんなに怪しまれながら服を着替えた。太一が心配して声を掛けて来たが、志藤はもげるほどにぶんぶんと首を振った。
 言えるわけがない。黒野と猫居がいちゃいちゃしていたなんて。しかも黒野が太一に目をつけてしまったなんて、絶対に言えない。口が裂けたとて言えない。

 不思議そうに首を傾げて離れていく太一の後ろ姿を、志藤は一人、じっと見つめた。すでに私服に着替えている太一だが、華奢なボディラインが際立つような大きめTシャツを着ている。

(待て……。何かエロくないか……?)

 バカな思考である。だが、それは十分な気合入れになった。

(……分かったよ、たいちゃん。俺が守る。俺しか守れない……! 俺が守ってあげるから!)

 そんなこと本人には言えないけど、志藤はしっかりと自分にそう誓ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

続きは第一図書室で

蒼キるり
BL
高校生になったばかりの佐武直斗は図書室で出会った同級生の東原浩也とひょんなことからキスの練習をする仲になる。 友人と恋の狭間で揺れる青春ラブストーリー。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

処理中です...