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初めてのテレビ収録!
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「いや、俺見えるし。最悪取り憑かれるからなぁ。あんまり気分のいいものじゃないんだよね」
何を言っているんだ?と全員が目を丸くすると、二ノ宮は困ったように微笑んだ。その微笑みが妙に薄気味悪く、太一は言いようのない悪寒を感じた。隣に座る雪村がソファの背凭れに腕を置き、ぶるっと震えた太一の耳に口を近づけた。
「太一、こういうの苦手だっけ?」
ボソッと囁かれ、太一はキッと雪村を睨んだ。
「分かってて肝試しとか提案すんなよ!」
皆に聞こえないように小さく唸ると、雪村はクスクス笑った。
その様子を少し離れた場所から見ていたのは志藤だ。小声で話しているから二人の会話までは聞こえない。しかし仲睦まじく内緒話をして、雪村が楽しそうに笑っている姿を見ると、志藤はやはりジェラシーを感じた。
今までずっとこうやって二人が内緒話をしたり、二人きりでダンスの練習をしたり、笑いあってじゃれている姿を見て来てはいるが、未だそれに慣れることがない。毎回ジェラシーを感じてしまう。
太一の親友になりたい、隣に居たい、雪村の位置に自分が座れたらいいのに……と。どうすれば太一の特別になれるのか志藤は考えを巡らせるが、そう簡単に答えは見つからない。実際太一の中で、志藤という人間は十分すぎるほど特別なのだが、誰に対しても平等な態度をとってしまうため、志藤にはその ”特別” を実感することが出来なかった。
「まぁ、どちらにせよ予算的にもそっちの方が採用されそうだね」
及川が肝試しと手持ち花火の案に乗っかり、それに対して数名が「いやいや!」と待ったを掛けた。
「見えるヤツがいるのに、肝試しとか絶対なしですって」
「そう? そっちの方が盛り上がると思うんだけどなぁ」
「いやいやいや!」
西川と及川が言い合いをし、皆がそれを笑い合う。そんな最中。
「なんかあの二人、いい感じに見えない?」
聞き取れないほどの小声が、志藤の耳に届いた。
チラリと右隣に視線を移すと、佐久間の耳元で菊池が囁いていた。
その視線の先。
雪村と太一が座っている。
(……いい感じ?)
意味が分からなくて、再び佐久間と菊池に視線を戻す。
「ふふ、ユキに限ってそれはねぇよ」
「分かってはいるけど。……見えなくもないだろ?」
「まぁ……な」
ふっと鼻で笑う佐久間。
何の話をしているのだろうと志藤は小首を傾げたが、そんな志藤の視線に気付きもせず、二人はニヤニヤと笑っていた。
「味見してみても?」
「玉砕して事務所追い出されるぞ」
「くくっ! じゃ、我慢するよ」
菊池は佐久間の言葉に声を堪えて笑うと寄せていた体を離した。
何を言っているんだ?と全員が目を丸くすると、二ノ宮は困ったように微笑んだ。その微笑みが妙に薄気味悪く、太一は言いようのない悪寒を感じた。隣に座る雪村がソファの背凭れに腕を置き、ぶるっと震えた太一の耳に口を近づけた。
「太一、こういうの苦手だっけ?」
ボソッと囁かれ、太一はキッと雪村を睨んだ。
「分かってて肝試しとか提案すんなよ!」
皆に聞こえないように小さく唸ると、雪村はクスクス笑った。
その様子を少し離れた場所から見ていたのは志藤だ。小声で話しているから二人の会話までは聞こえない。しかし仲睦まじく内緒話をして、雪村が楽しそうに笑っている姿を見ると、志藤はやはりジェラシーを感じた。
今までずっとこうやって二人が内緒話をしたり、二人きりでダンスの練習をしたり、笑いあってじゃれている姿を見て来てはいるが、未だそれに慣れることがない。毎回ジェラシーを感じてしまう。
太一の親友になりたい、隣に居たい、雪村の位置に自分が座れたらいいのに……と。どうすれば太一の特別になれるのか志藤は考えを巡らせるが、そう簡単に答えは見つからない。実際太一の中で、志藤という人間は十分すぎるほど特別なのだが、誰に対しても平等な態度をとってしまうため、志藤にはその ”特別” を実感することが出来なかった。
「まぁ、どちらにせよ予算的にもそっちの方が採用されそうだね」
及川が肝試しと手持ち花火の案に乗っかり、それに対して数名が「いやいや!」と待ったを掛けた。
「見えるヤツがいるのに、肝試しとか絶対なしですって」
「そう? そっちの方が盛り上がると思うんだけどなぁ」
「いやいやいや!」
西川と及川が言い合いをし、皆がそれを笑い合う。そんな最中。
「なんかあの二人、いい感じに見えない?」
聞き取れないほどの小声が、志藤の耳に届いた。
チラリと右隣に視線を移すと、佐久間の耳元で菊池が囁いていた。
その視線の先。
雪村と太一が座っている。
(……いい感じ?)
意味が分からなくて、再び佐久間と菊池に視線を戻す。
「ふふ、ユキに限ってそれはねぇよ」
「分かってはいるけど。……見えなくもないだろ?」
「まぁ……な」
ふっと鼻で笑う佐久間。
何の話をしているのだろうと志藤は小首を傾げたが、そんな志藤の視線に気付きもせず、二人はニヤニヤと笑っていた。
「味見してみても?」
「玉砕して事務所追い出されるぞ」
「くくっ! じゃ、我慢するよ」
菊池は佐久間の言葉に声を堪えて笑うと寄せていた体を離した。
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