MOMO!! ~生き残れ、売れないアイドル!~

2wei

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初めてのテレビ収録!

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 雪村らしい攻めた言葉。だけど、誰もが雪村のように強くはない。ましてや太一だ。

「奪うって……そんなこと出来ないよ。黒野くんだって、この収録に無断欠席してるわけじゃない。ましてや奪えるほどの実力……、オレにはないし」

 見て欲しいならテレビに出ろ。その言葉だけは太一に響いていた。確かにそうだと思う。誰も自分を見ていないかもしれないけど、出ないことには認知してもらえない。雪村の言葉はどストレートに物事の真髄を捉える。このチャンスを逃してはいけないのだと、太一に僅かな勇気を与えてくれる。

「お前バカだな」

 だが、雪村の言葉は容赦なかった。

「お前一体どんなテンションでこの仕事してんだよ。仲良しこよしの幼稚園児じゃねぇのよ。他局といえども、エッグバトルはもう始まってんだぞ? トップナイン蹴散らす覚悟もねぇヤツが月曜で生き残れるとでも思ってんのか? 仕事遊びなら今すぐ帰れよ」

 モンスターアイドル。今まで太一は幾度となく見てきた、こうやって雪村に叱られているエッグを。もちろん雪村も、相手が太一だと無駄に怒鳴り散らすことはない。しかしその毒舌は親友の太一に対しても変わることはなかった。
 けどこれは、仕事に真面目に取り組む雪村だからこその言葉だ。

「結果残せよ。過程なんてどうだっていいじゃん。そうやってみんなのし上がってくんだから。俺も、お前も。だろ?」

 どんっと太一の胸に拳が叩きつけられた。

「モタモタすんな。もうレースは始まってんだよ。くだらねぇこと考えてる暇があるなら、俺の首根っこ掻っ切る方法を考えてる方がよっぽど有意義だ。本気見せろよ! 太一!」

 握った拳。太一は自分の甘さに嫌気すら感じた。

 雪村はカッコイイ。そんなこと遥か前から知っている。返す言葉が見つからないくらい、彼は正しく、真っ直ぐで誠実。仕事にストイックで、いつでも全力。誰もが雪村のように強くはなれないけど、雪村くらい真剣に仕事と向き合う必要はある。子供だからなんて理由は通用しないのだ。この道を選んだ時点で、その責任は自分で取る必要があるのだから。

 遊びじゃない。分かっているつもりだった。けど太一には、雪村と違い圧倒的に自覚が足りなかった。分かったもごめんも、何も言えなかった太一だが、雪村は太一が納得したことを理解し、踵を返した。

「早く来いよ。着替えなきゃならねぇし」

 そのままひとりでスタジオを出て行こうとする。

「え?」

 一緒に行こうよ、と言いかけてすぐに気付いた。少し離れたところで志藤が待っていることに。

 志藤と雪村は一度だけ目を合わせたが、何も言わないまま先に雪村がスタジオを出た。すると優しい笑顔の志藤が太一へと駆け寄ってくる。その笑顔は、叱られた直後の太一にはまるで天使みたいに見えた。

「着替えに行こっか!」
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