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初めてのテレビ収録!

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 テレビ局のスタジオには煌びやかなセットが準備され、私服姿のままのエッグが勢揃いした。太一ももちろんその場にいる。その場にいるが、いつものくせで最後列に埋れて立っている。隣には一ノ瀬だ。

「今回が初めて?」

 太一が聞くと、一ノ瀬は首を振った。

「二回目から呼ばれてる」
「そうなんだ。この後も?」

 聞いたが一ノ瀬は肩を竦めた。

「前回は呼ばれたけど、今回はどうかな? よく分からないや」

 そんなもんなのか、と太一は小首を傾げたが、そう言われれば自分もこの後のことは知らされていなかった。
 個人としてはダンスだけ踊って帰るつもりだったが、運が良ければその後のトークにも呼ばれるかもしれない。だが期待はしない。だってこの男はあの沖太一だ。期待という言葉は幻想の中にしかない。

「じゃあ立ち位置とフォーメーションのチェックから」

 エッグ達は指定された場所へと次々移動を始め、ついに太一の名前が呼ばれる。

「はい、マイク持って」

 強引にマイクを手渡された。え?と思ったのも束の間。いつも黒野とシンメを組んでいる猫居が「じゃ、俺はこっちかな」と太一と反対方向へ歩き出す。

「歌うのは一曲目のみ。メインのダンスは覚えてる?」

 通常、マイクを持つメインとバックダンサーの振りは若干違う。ダンス講師の言葉に太一は戸惑いながらも頷いた。

「さ~すが。あと二曲目はニノとバク宙してもらうから、体ほぐしておいてね」

 おいおいと、太一は思ってもいない展開に目を丸くした。事務所入りしたのは、小学六年生の時。今の今になるまでマイクなど持たせてももらえなかったのに、いきなりのメインポジション昇格に、焦らないわけはなかった。
 そんなこと出来ません、と言うのは簡単だ。だが、ヘタに出来てしまうのもまた事実。本気で黒野の代役をする羽目になるとは、正直思ってもみなかった。

 事務所の先輩の歌を三曲、メドレーでカバーする。曲のパート割を始め、フォーメーションや立ち位置などを入念にチェックし、音響や照明、カメラなどのチェックも行われる。ライティングが赤や黄色、青や緑に色を変え、スポットライトが眩しくメインボーカル達に当てられる。そんな中でのリハーサル。ダンスの振りつけが終わると、マイクチェックへと移った。

 すでにある程度調節されてはいるが、個人の声量によって、やはりもう一度チェックし直さなければいけない。
 人生で初めて行なうマイクチェック。トップナイン達のマイクチェックを見習って、あーとか、うーとか声を出すが、太一は恥ずかしくてまともにマイクチェックが出来ない。音響スタッフから、声張ってみて、と指示を受けたり、ちょっと声のボリューム下げてとか、舌打ちしてみて、などと要求され、マイクチェックの手順くらい分かってはいるのだが、どうも慣れない作業にただただ太一は戸惑った。
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