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エッグバトル始動!
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だが実際、太一は誰よりも野心家だ。弟陽一のために、自慢の兄になろうと必死に努力を続けている。その努力があるからこそ、太一には独特なオーラと研磨されたダンス技術が伴っている。
今こそ太一はこのチャンスを掴む時。本人も、胸の真ん中にそう火を灯した。
相手取る番組はあのドリームキャッチだ。夕飯時のゴールデンタイム。幅広い年齢層がテレビを見る時間帯。右肩上がりに視聴率を上げ、大人も子供もドリームキャッチを知らない者などいない。今一世を風靡するテレビ番組に自分が映り込む。興奮しないわけはなかった。
そして講師からこの企画の趣旨が発表される。
「デビューを賭けて、各曜日で対決していただきます」
ダンス講師の言葉にエッグ達はどよめいたが、それは長続きせず、すぐに何かを諦めたような失笑へと変わった。
それもそうだ。なにせメインは小形だ。番組取材班が彼を追っているのは明らか。デビューを賭けてなどと言われても、その期待は低い。
思いのほか反応の薄いエッグ達に不満顔をしたのは三名のダンス講師だった。
「いい? これは全員にデビューのチャンスがあるということよ? 各曜日、実力を揃えたメンバーを選出し、計五組のグループを作る。そこから更に事務所の審査や、人気投票を経て、一組だけに絞り込み、そのたった一組が……そう、デビューできるの」
スタジオは静まり返った。
どよめきさえ起きず、言葉の意味を理解しようとしている。例に漏れず太一もその一人。つまりはデビューのチャンスが全員にあるということで、今まで陰の存在だった自分たちにもスポットが当たるということ。各曜日、20分の1にさえ選ばれればデビュー出来なかったとしても、確実に名前を売り込める。
「小形くんにも理解してもらっているわ。デビュー出来ない可能性があることを」
何を考えているのか分からない小形の表情に、さすがのエッグ達もざわつき始め、先ほど散々野次を飛ばしていたエッグの一人が手を挙げた。
「1グループ何人か決まってるんですか~?」
それは火曜日、仁科洋平の質問だった。
「いいえ。決まっていないわ。何人編成になるかは皆の実力次第。グループメンバーは私たち三人が選びます」
スタジオが俄かにざわつき始める。
「トップナインは確実に選出されると考えて、月曜枠の確定人数は2人だね」
一ノ瀬が太一に話しかけた。
「五人組だとしても、残り三人。21分の3ってことだ」
「いや、違うよ。19分の3だ」
太一の素早い訂正に一ノ瀬は声を出して笑う。
「あはは、間違った! そうだね」
19分の3。
太一はそう考え、おかしなほど興奮した。可能性は確かに全員にある。しかし、エッグ達に実力がなければトップナインである雪村と志藤の2人組になるという可能性もある。その可能性を考え、太一は一人ぶんぶん首を振った。
何故ならあの2人がユニットを組めば一ヶ月で解散になると思ったからだ。
というのも、雪村は志藤を嫌っていた。……否、嫌っているわけではないのだが、周りがそうだと信じて疑っていないのだ。
今こそ太一はこのチャンスを掴む時。本人も、胸の真ん中にそう火を灯した。
相手取る番組はあのドリームキャッチだ。夕飯時のゴールデンタイム。幅広い年齢層がテレビを見る時間帯。右肩上がりに視聴率を上げ、大人も子供もドリームキャッチを知らない者などいない。今一世を風靡するテレビ番組に自分が映り込む。興奮しないわけはなかった。
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思いのほか反応の薄いエッグ達に不満顔をしたのは三名のダンス講師だった。
「いい? これは全員にデビューのチャンスがあるということよ? 各曜日、実力を揃えたメンバーを選出し、計五組のグループを作る。そこから更に事務所の審査や、人気投票を経て、一組だけに絞り込み、そのたった一組が……そう、デビューできるの」
スタジオは静まり返った。
どよめきさえ起きず、言葉の意味を理解しようとしている。例に漏れず太一もその一人。つまりはデビューのチャンスが全員にあるということで、今まで陰の存在だった自分たちにもスポットが当たるということ。各曜日、20分の1にさえ選ばれればデビュー出来なかったとしても、確実に名前を売り込める。
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何を考えているのか分からない小形の表情に、さすがのエッグ達もざわつき始め、先ほど散々野次を飛ばしていたエッグの一人が手を挙げた。
「1グループ何人か決まってるんですか~?」
それは火曜日、仁科洋平の質問だった。
「いいえ。決まっていないわ。何人編成になるかは皆の実力次第。グループメンバーは私たち三人が選びます」
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「いや、違うよ。19分の3だ」
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19分の3。
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何故ならあの2人がユニットを組めば一ヶ月で解散になると思ったからだ。
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