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下校:秘密
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なんか……分かるな。写真に写っている人達は、確かに怖そうな人達ばかりなんだけど、皆、ほんとにいい笑顔なんだよ。というか、この写真よく見ると……。
「卒業式……?」
卒業証書の筒を持っている。
「あぁ、そうだな。卒業式だ。集合写真はこれが最初で最後かな。この日で解散したし」
「へぇ~……。無事三年で卒業できたの?」
「おい……、バカにしてんだろ」
「あはは!!」
だって、この風貌だよ? 疑うに決まってるじゃんか。
「ヤンキー漫画とか読んでるとさ、皆チーム名とかあるじゃん? 柄沢さんのチーム名はなんだったの?」
好奇心しかない瞳で尋ねると、彼は目を丸め、クスクス笑った。
「チーム名なんかねぇよ。特攻服もないし」
「特攻服! 作れば良かったのに! 絶対カッコイイじゃん! 丈の長いガクランみたいなやつ!」
「昭和かよ。作るか、そんなもん」
いつもの柄沢さんっぽい笑顔がこぼれて、僕は写真を手に持つと、柄沢さんの足の間に入って彼に背中を預けた。
「ねぇ。みんなの名前教えてよ! 柄沢さんの友達、僕知りたい!」
柄沢さんは僕のお願いに嬉しそうに微笑むと、一人ずつの名前と思い出を教えてくれた。
柄沢さんを含めた十三人のメンバーは、年上も年下もいて、皆の事を話す彼はすごく楽しそうだった。
やんちゃな過去があることは何となく察しがついていたけど、思っているより柄沢さんの学生時代は温和で楽しそうだった。喧嘩三昧で警察沙汰の日々なのかと思っていたけど、どちらかというとバイクの話ばかりだった。遅くまでみんなでバイクを弄って、あちこち走り回ったっていう話ばかり。
「楽しそうだね」
「楽しかったよ。でももうなかなか皆で集まることもないんだよな。家庭持ってるやつもいるし。けど、たまに連絡とってはそれぞれと会うようにはしてんだよ」
「そうなんだね」
そういうとこ好きだな。もしかして二十一日をその日って決めているのかもしれ十三人から柄沢さんを引くと、ちょうど十二だ。一か月に一度誰かと会う約束が出来る。以前、柄沢さんが小泉さんやのぶさんにご飯の作り置きを作っているという話を聞いたこともあるし……。結婚している人は別として、独身の人は柄沢さんの訪問がきっと待ち遠しいに違いない。
なんだ……そういうことか。すごく納得しちゃったな。
「じゃあ、二十一日は、“みんなと会う日”なんだね」
背後の柄沢さんを見上げて言うと、彼は眉を垂れ、静かに微笑んだ。
だけど、真実はそうではなかった──。
僕は何も知らなくて、そして何も教えてもらえなかった。まさかこのチームにもう一人のメンバーがいたってことさえ……、教えてもらえなかったんだ。
「卒業式……?」
卒業証書の筒を持っている。
「あぁ、そうだな。卒業式だ。集合写真はこれが最初で最後かな。この日で解散したし」
「へぇ~……。無事三年で卒業できたの?」
「おい……、バカにしてんだろ」
「あはは!!」
だって、この風貌だよ? 疑うに決まってるじゃんか。
「ヤンキー漫画とか読んでるとさ、皆チーム名とかあるじゃん? 柄沢さんのチーム名はなんだったの?」
好奇心しかない瞳で尋ねると、彼は目を丸め、クスクス笑った。
「チーム名なんかねぇよ。特攻服もないし」
「特攻服! 作れば良かったのに! 絶対カッコイイじゃん! 丈の長いガクランみたいなやつ!」
「昭和かよ。作るか、そんなもん」
いつもの柄沢さんっぽい笑顔がこぼれて、僕は写真を手に持つと、柄沢さんの足の間に入って彼に背中を預けた。
「ねぇ。みんなの名前教えてよ! 柄沢さんの友達、僕知りたい!」
柄沢さんは僕のお願いに嬉しそうに微笑むと、一人ずつの名前と思い出を教えてくれた。
柄沢さんを含めた十三人のメンバーは、年上も年下もいて、皆の事を話す彼はすごく楽しそうだった。
やんちゃな過去があることは何となく察しがついていたけど、思っているより柄沢さんの学生時代は温和で楽しそうだった。喧嘩三昧で警察沙汰の日々なのかと思っていたけど、どちらかというとバイクの話ばかりだった。遅くまでみんなでバイクを弄って、あちこち走り回ったっていう話ばかり。
「楽しそうだね」
「楽しかったよ。でももうなかなか皆で集まることもないんだよな。家庭持ってるやつもいるし。けど、たまに連絡とってはそれぞれと会うようにはしてんだよ」
「そうなんだね」
そういうとこ好きだな。もしかして二十一日をその日って決めているのかもしれ十三人から柄沢さんを引くと、ちょうど十二だ。一か月に一度誰かと会う約束が出来る。以前、柄沢さんが小泉さんやのぶさんにご飯の作り置きを作っているという話を聞いたこともあるし……。結婚している人は別として、独身の人は柄沢さんの訪問がきっと待ち遠しいに違いない。
なんだ……そういうことか。すごく納得しちゃったな。
「じゃあ、二十一日は、“みんなと会う日”なんだね」
背後の柄沢さんを見上げて言うと、彼は眉を垂れ、静かに微笑んだ。
だけど、真実はそうではなかった──。
僕は何も知らなくて、そして何も教えてもらえなかった。まさかこのチームにもう一人のメンバーがいたってことさえ……、教えてもらえなかったんだ。
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