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放課後(部活編):巻き込み事故
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十二月、クリスマス。
お互い仕事。
だけど、僕は店頭でサンタの服を着ながらケーキ販売をしていたため、ちょこちょこスタンドメンバーと雑談した。ミニスカサンタの服に着替えてこい、とみんなで僕を弄ってくるから、本気で着てやろうかと半ギレで店に戻ろうとすると、全員、慌てて僕を引き止めた。だけど、「交代するよ~」と真山さんがそれこそミニスカサンタコスで登場すると、スタンドメンバーは「じゃ、仕事戻るわ」とさっさと帰って行った。真山さんのメンツがない。そういうあからさまな態度はやめてやってくれないだろうか。僕がこのあと気まずくなるんだよ。ま、どうでもいいけどさ。
夕方、柄沢さんより先に仕事を終えた僕は、お出かけの準備を整えた。
「今夜お友達とクリスマスパーティーだっけ?」
母がテレビを見ながら聞いてくるから、お泊りのセットを抱えながら頷いた。
「うん。泊ってくるから」
「そう」
母も随分柔軟になった。最近では柄沢さんと出掛けてくる、と言っても大人しく頷いている。ただ、柄沢さんの家に泊まりに行く、とは……まだ言えないんだけど……。
お泊りセットと終業式帰りに買いに行ったクリスマスプレゼントを玄関に置く。色々見ていたんだけど、最終的にブーツを買った。カー用品は「車体が重くなる」と以前言っていたような気がして、手にしていた空気清浄機はそっと戻した。手袋やマフラーも見たけど、あまり彼に似合いそうなものが分からず、だったらバイクスーツはどうかなと思ったんだけど、このくそ寒い十二月にプレゼントするものでもないか、と思いやめておいた。今はめっきり車移動の日々だから。料理をする彼のためにキッチン用品も見たけど、喜んでもらえる気がしなくてやめた。それに、見ていても何が機能的で、何が使いやすいのかとてもじゃないが分からなかった。無難に映画のDVDを買おうかなと思ったんだけど、あまりに芸がない。喜んではくれるだろうけど、あの大量のDVDの中では、僕のプレゼントは簡単に埋もれてしまいそうだ。
うろうろ歩き回りようやく見つけた、プレゼント。
柄沢さんに似合いそうなごつめのカッコイイブーツ。高かったけど、奮発した。きっと喜んでくれる。この靴が、きっと彼を素敵な場所に連れて行ってくれるはずだ。
昔、おばあちゃんが言ってたんだよね。『靴はいいものを履きなさい』と。『梓を素敵な場所に連れて行ってくれるからね』と。
素敵な場所は、当時幼稚園児だった僕にとっては、遊園地とか動物園とかだったけど、きっとそういうことじゃなかったのだろう。今なら少し、分かるよ。
十八時。家を出た。
柄沢さんの仕事はいつも通り二十二時に終わるんだけど、そんな時間まで家に居たら、「パーティーに行かないのか」と母に疑われてしまう。だから僕は早めに家を出た。駅前のファミレスまで歩いて行き、そこで時間をつぶすことにした。ポータブルDVDプレーヤーはこういう時に役に立つ。
だけど、十九時を回った頃だった。
「井川くん?」
突然僕のテーブルに女性の手が伸びてきて、そう声を掛けられた。
ヘッドホンをしたまま、ふと隣に立つ女性を見上げると、そこには中学時代、密かに想いを寄せていた岡麗子さんが立っていた。
「お、岡さん!」
お互い仕事。
だけど、僕は店頭でサンタの服を着ながらケーキ販売をしていたため、ちょこちょこスタンドメンバーと雑談した。ミニスカサンタの服に着替えてこい、とみんなで僕を弄ってくるから、本気で着てやろうかと半ギレで店に戻ろうとすると、全員、慌てて僕を引き止めた。だけど、「交代するよ~」と真山さんがそれこそミニスカサンタコスで登場すると、スタンドメンバーは「じゃ、仕事戻るわ」とさっさと帰って行った。真山さんのメンツがない。そういうあからさまな態度はやめてやってくれないだろうか。僕がこのあと気まずくなるんだよ。ま、どうでもいいけどさ。
夕方、柄沢さんより先に仕事を終えた僕は、お出かけの準備を整えた。
「今夜お友達とクリスマスパーティーだっけ?」
母がテレビを見ながら聞いてくるから、お泊りのセットを抱えながら頷いた。
「うん。泊ってくるから」
「そう」
母も随分柔軟になった。最近では柄沢さんと出掛けてくる、と言っても大人しく頷いている。ただ、柄沢さんの家に泊まりに行く、とは……まだ言えないんだけど……。
お泊りセットと終業式帰りに買いに行ったクリスマスプレゼントを玄関に置く。色々見ていたんだけど、最終的にブーツを買った。カー用品は「車体が重くなる」と以前言っていたような気がして、手にしていた空気清浄機はそっと戻した。手袋やマフラーも見たけど、あまり彼に似合いそうなものが分からず、だったらバイクスーツはどうかなと思ったんだけど、このくそ寒い十二月にプレゼントするものでもないか、と思いやめておいた。今はめっきり車移動の日々だから。料理をする彼のためにキッチン用品も見たけど、喜んでもらえる気がしなくてやめた。それに、見ていても何が機能的で、何が使いやすいのかとてもじゃないが分からなかった。無難に映画のDVDを買おうかなと思ったんだけど、あまりに芸がない。喜んではくれるだろうけど、あの大量のDVDの中では、僕のプレゼントは簡単に埋もれてしまいそうだ。
うろうろ歩き回りようやく見つけた、プレゼント。
柄沢さんに似合いそうなごつめのカッコイイブーツ。高かったけど、奮発した。きっと喜んでくれる。この靴が、きっと彼を素敵な場所に連れて行ってくれるはずだ。
昔、おばあちゃんが言ってたんだよね。『靴はいいものを履きなさい』と。『梓を素敵な場所に連れて行ってくれるからね』と。
素敵な場所は、当時幼稚園児だった僕にとっては、遊園地とか動物園とかだったけど、きっとそういうことじゃなかったのだろう。今なら少し、分かるよ。
十八時。家を出た。
柄沢さんの仕事はいつも通り二十二時に終わるんだけど、そんな時間まで家に居たら、「パーティーに行かないのか」と母に疑われてしまう。だから僕は早めに家を出た。駅前のファミレスまで歩いて行き、そこで時間をつぶすことにした。ポータブルDVDプレーヤーはこういう時に役に立つ。
だけど、十九時を回った頃だった。
「井川くん?」
突然僕のテーブルに女性の手が伸びてきて、そう声を掛けられた。
ヘッドホンをしたまま、ふと隣に立つ女性を見上げると、そこには中学時代、密かに想いを寄せていた岡麗子さんが立っていた。
「お、岡さん!」
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