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帰りのHR:バターナイト

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 まだそんなことを言っているのか。良心を痛めそうになった自分がバカらしい。きっと父が柄沢さんときちんと話し合ったのだろう。母はあの時から変わっていない。……話にならない。

「嫌いだ……」

 母なんて、嫌いだ。

 僕は食べ終わった夕飯の食器をシンクに運び、無心に洗った。

 嫌いだ。
 嫌いだ……、嫌いだ……、嫌いだ……っ!

 母の声が、耳にこびり付いて離れてくれなかった。泣き崩れる声も、帰ってきてと懇願する声も、そして柄沢さんを「あんな男」と言ったその声も……。

 悔しくて、悲しくて、腹が立って、涙が溢れた。

 両親に分かってほしいんだ。柄沢さんが「あんな男」と言われるような人じゃないことを、きちんと理解して欲しい。あんな母でも僕のお母さんだから、分かってほしいんだよ。「いい人ね」ってそう言って認めて欲しいんだ。僕の大好きな人だから……両親にも好きになってほしいと思う。邪険に扱わず、僕の言葉も、柄沢さんの言葉もちゃんと聞いてほしい。

 ポタポタと落ちた涙は水道水と共に流され、僕はぐいっと涙を拭った。

 親に、特に母にはもう期待しない方がいいだろう。何を言ってもきっと本当に無駄なんだ。父の方が分かってくれる。父がこの一週間の家出を承諾してくれたのだろう。母を抑え込み、柄沢さんに僕を委ねてくれたんだ。父に、感謝しなくちゃ……。もっとも、一番感謝すべき相手は、柄沢さんなんだけど。

 十分後、お風呂から上がってきた柄沢さんにどうだったか尋ねられ、僕は首を振った。

「父は理解してくれてたけど、母はてんでダメだ。話にならなかったよ」
「……そうか。ごめんな、俺の力不足だ」

 後ろからそっと抱きしめられ、僕は再び首を振る。

「柄沢さんのせいじゃないよ。柄沢さんにはほんとに感謝してる。ありがとう」

 抱きしめられる腕にすり寄ると、柄沢さんはきゅっと目を細め、そして僕にキスをくれた。
 そのまま僕らはベッドに雪崩れ込み、何度も繰り返しキスをした。気持ち良くて、悲しい気持ちが少しずつ和らいでいく。柄沢さんがそばにいてくれるだけでいいって、ほんとにそう思った。僕の世界はもう、柄沢さんだけでいいって、本気で思えるくらいに。

「好き……柄沢さん……っ」

 キスの合間の僕の声は、すぐに彼の口に吸い込まれ、それでも僕は何度も言った。好きって、好き好き好きって、何度も何度も言った。
 そのうち飲み込めない唾液が口から溢れてきて、息苦しいのと、この止まらない気持ちの収め所が分からないのとで、頭がくらくらしてきた。

 だけど、その時。
 柄沢さんの手が、僕の足にコンコンと二度当たり、彼がキスをしながら自分の物を緩やかに扱いていることに気付いた。

 ハッとして唇を離すと、エッチな顔をしている柄沢さんが僕を見つめ一言……。


「触れたい……」


 そう言った。



 顔は見ないで。

 これが条件。僕は柄沢さんの足の間に座り、あの時のように扱いてもらった。背後の柄沢さんも、勃起しているそれを僕の背中にこすりつけながらわずかに腰を揺らし、熱い息を耳元で繰り返す。

「あ…ぁん、すごい……ぃぃ……っん」

 AVが入っている引出しの隣。そこから出てきたローションで、前回よりずっと滑り良く扱かれ、僕はあの日よりずっとずっと早くイかされた。それでも鬼のように扱き続ける彼に僕は体をびくびくと麻痺させながら、二度目の射精に背中を仰け反らせると、彼の手も、さすがに止まった。

 そして僕の精液で汚れている手を引っ込めると、その手で自分のモノを扱き始めた。

 あぁ……恥ずかしい。

 そう思ったけど、僕は勇気を振り絞って柄沢さんを振り返った。

 エッチな顔で自分のモノを扱いている柄沢さんは、振り返った僕に物欲しそうな瞳を向ける。

 そう……だよね。そうに決まってる。

 そろりと彼の手の中のモノに視線を落とすと、それは僕のモノよりずっとずっと大きかった。 

 反り立ったそれに目を奪われていると、柄沢さんは僕の手を引き、「触って」とおねだりした。その声があまりに可愛くて、僕は柄沢さんのモノに手を添え、ゆっくり、丁寧に扱き上げた。

 そうやって二人で扱き合い、キスをして、互いの精子で体を汚し合った。

 幸せだった。気持ち良かった。もう他に何も要らないと思った。

「梓……っ、好きだ」



 その声が、僕のすべてを溶かしていく──。




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