放課後は大人時間 ～子ども扱いしないでください！～

掃除の時間：お付き合い、始めちゃいました

３

　は？と言われても……。

「直人さん達が言ってた。すごくモテるって。持て余してるって」
「真に受けてんじゃねぇよ。そんなにいるか」
「じゃあ少しは居るの？」

　そういうことだよね？

「おい……。俺は梓が好きだって言ってるだろ」

　はぐらかそうとする柄沢さんに僕は詰め寄った。

「だって……！　小さくて、胸が大きくて、ショートカットのカッコイイ女の人ことが好きなんじゃないの？」
「誰だよ、それ！」

　聞いた僕に柄沢さんは驚いたように声を張り上げた。

「誰から聞いたんだ？　まじでそれ、誰!?　そんな女知らないし！」
「だって直人さん達が言ってた！」
「あいつら、ほんとでたらめばっかり……っ！」

　でたらめ？
　いや、そんなことないって！　だってのぶさんが「一人しかいない！」って叫んでたもん！　あれが演技だとは思えない！

「嘘つかなくていいよ！　本当の事言ってよ！」
「だから！　梓が本命！　ずっと可愛いって思ってた！」
「嘘だ！　意地悪ばっかり言ってきたくせに！」
「いつ!?」
「いっつも！　だから、僕は結構……ずっと柄沢さんの事苦手だった！」

　言うと柄沢さんは「まじか」と声もなくショックを受け、しばらく、動揺しながら僕を見た。

「え？　てことは結構今の状況、奇跡なの？」
「奇跡だよ！」

　僕の返答に「うわ～」と小さく声を漏らすと、柄沢さんは僕に背を向けるように寝返りを打った。

「傷ついた……」

　傷ついた!?

「奇跡だってば！　喜んでよ！」
「悲しい。そうか、俺……嫌われてたんだ。そりゃそうか。直人の方がイケメンだし？　あいつの方が面白いし、優しいし、喋ってても面白いもんな」
「ちょっと!?　直人さんと比べるのはやめてよ！」
「直人はいいやつだもんな。そりゃ俺なんて……カスみたいな男だよな」
「柄沢さんってば！」

　僕は起き上がり、拗ねてしまった柄沢さんの肩を掴むと、彼はその手を取り、強引に引っ張ってきた。
　バランスを崩し、慌てて掴まれた手をベッドについて体を支えると、体半分、柄沢さんの上に覆いかぶさって、キス出来ちゃうくらい顔が近くなった。

「キスして。梓から。じゃなきゃ俺、泣く」
「勝手に泣けよ！」

　ビックリして、心の叫びはしっかり声に出ていた。
　柄沢さんはそんな僕に大笑いして、「やっぱり梓おもしろい」って言うと、むくりと体を起こした。

「さ、本当に寝よう。明日の夜、運転できなくなるから」

　僕らは枕の並んだベッドに移動し、体を寄せ合いながら眠った。柄沢さんの腕枕で、初めて柄沢さんの方を向きながら、僕は眠った。