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六時間目:弾丸旅行とキス
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真山さんに睨まれながら僕は柄沢さんの車に乗り込んだ。そして直人さんと小泉さんに見送られながら名古屋へ出発だ!
「高速に乗って名古屋まで一気にぶっ飛ばしてもいいし、神奈川辺りまで下道走ってホテルに泊まってもいいかもな」
そう提案された。だけど僕は、高速で一気に名古屋まで行くことを選んだ。柄沢さんは僕の選択にニヤリとし、「飛ばすぜ」といたずらに笑った。
真夜中の東名高速。
柄沢さんは宣言通り、飛ばした。ぶっ飛ばした。死ぬかと思った。けどそれが最高に楽しかった!
「早い! 怖い! 今何キロ!?」
はしゃぐ僕に柄沢さんも楽しそうに返事する。
「195キロ♪」
「バカじゃん!! 事故ったら一発で死ねるじゃん!」
「ははは! 事故んねぇよ! 俺を誰だと思ってんの!」
経験したことのないスピードに興奮しっぱなしだ。そのハンドルさばきにも感動した。イケナイ遊びをしているようで、すごくすごく楽しい。
僕らは一気に静岡までやってきて、一旦トイレ休憩にパーキングエリアへと立ち寄った。柄沢さんが想像以上のスピード狂で全然眠れなかったけど、すごく楽しかった。トイレを済ませ、コンビニで買い物をした。
「腹減った。何か食おうかな」
そう言って食べ物を物色する柄沢さんに倣って、僕もサンドイッチを買うことにした。
「ねぇ、柄沢さん。眠くない? 大丈夫?」
眠眠打破が目に留まってそう尋ねると、「へっちゃら~」とやたら可愛い返事が返ってきた。さっきまで興奮して眠くなかったけど、トイレを済まし、ここでのんびり買いものをしていると、僕は少し眠くなってきた。
「そっか、すごいね柄沢さんは。昨日もそんなに寝てないのに」
「そうか? あ、梓眠い?」
気付いたように尋ねられ、苦笑いを返した。
「ちょっとだけね」
「そっか。全然寝てていいぞ。俺大丈夫だから。それとも、寝にくい?」
スポーツカーに寝心地を求めてないから“寝にくい”ことに間違いはないだろう。だけど、僕は素直に礼を言って、じゃあ寝させてもらうかも、と返事しておいた。すると柄沢さんはにっこり笑って言った。
「じゃあここで少しだけ寝ちゃうか。一時間くらい仮眠してもいいし」
どうしようかな、と思った。このまま仮眠せずに名古屋まで行けばすごく変な時間になる。ホテルを探して素泊まりしたところで、すぐにチェックアウトしないといけないだろう。だったらここで一時間と言わず、車中泊した方がいいのだろうか……とか。
迷っていると柄沢さんは「何をお悩み?」と顔を覗きこんでくる。
「ここから名古屋まで、あとどれくらい?」
「ん~……二時間かからないかな?」
二時間、か……。
「一旦下りる?」
問われ、そういう選択もあるのかと思った。
「車で寝るのは……ちょっと辛いだろ。狭いし」
狭いシングルベッドで二人寄り添って寝ていても苦じゃない人でも、さすがにスポーツカーでの車中泊は嫌らしい。
「うん……じゃあ」
この選択が正しいのかも分からないまま頷くと、柄沢さんは本当に次のインターで下り、二人でホテルを探した。真夜中三時。見つけたビジネスホテルで空き部屋を確認すると、空いているという。
「シングルもツインも空いておりますが、どうされますか」
今日が平日で良かったと思う。
「じゃあ、シングル二部屋」
相談もなく間髪入れずに返答した柄沢さんだけど、受付が「かしこまりました」と言うか否かの早いタイミングで「あっ」と声を出した。僕も受付の男性も柄沢さんを見る。
「直人と一緒の感覚で返事しちゃった。ツインにする?」
「えっ!」
思ってもなかった。別にシングル二部屋で何の文句もなかったが、柄沢さんが続ける。
「一応未成年だし? いや、まぁどっちでもいいよ? 宿泊費、俺が出してやるし、好きな方選べよ」
……宿泊費……。
「高速に乗って名古屋まで一気にぶっ飛ばしてもいいし、神奈川辺りまで下道走ってホテルに泊まってもいいかもな」
そう提案された。だけど僕は、高速で一気に名古屋まで行くことを選んだ。柄沢さんは僕の選択にニヤリとし、「飛ばすぜ」といたずらに笑った。
真夜中の東名高速。
柄沢さんは宣言通り、飛ばした。ぶっ飛ばした。死ぬかと思った。けどそれが最高に楽しかった!
「早い! 怖い! 今何キロ!?」
はしゃぐ僕に柄沢さんも楽しそうに返事する。
「195キロ♪」
「バカじゃん!! 事故ったら一発で死ねるじゃん!」
「ははは! 事故んねぇよ! 俺を誰だと思ってんの!」
経験したことのないスピードに興奮しっぱなしだ。そのハンドルさばきにも感動した。イケナイ遊びをしているようで、すごくすごく楽しい。
僕らは一気に静岡までやってきて、一旦トイレ休憩にパーキングエリアへと立ち寄った。柄沢さんが想像以上のスピード狂で全然眠れなかったけど、すごく楽しかった。トイレを済ませ、コンビニで買い物をした。
「腹減った。何か食おうかな」
そう言って食べ物を物色する柄沢さんに倣って、僕もサンドイッチを買うことにした。
「ねぇ、柄沢さん。眠くない? 大丈夫?」
眠眠打破が目に留まってそう尋ねると、「へっちゃら~」とやたら可愛い返事が返ってきた。さっきまで興奮して眠くなかったけど、トイレを済まし、ここでのんびり買いものをしていると、僕は少し眠くなってきた。
「そっか、すごいね柄沢さんは。昨日もそんなに寝てないのに」
「そうか? あ、梓眠い?」
気付いたように尋ねられ、苦笑いを返した。
「ちょっとだけね」
「そっか。全然寝てていいぞ。俺大丈夫だから。それとも、寝にくい?」
スポーツカーに寝心地を求めてないから“寝にくい”ことに間違いはないだろう。だけど、僕は素直に礼を言って、じゃあ寝させてもらうかも、と返事しておいた。すると柄沢さんはにっこり笑って言った。
「じゃあここで少しだけ寝ちゃうか。一時間くらい仮眠してもいいし」
どうしようかな、と思った。このまま仮眠せずに名古屋まで行けばすごく変な時間になる。ホテルを探して素泊まりしたところで、すぐにチェックアウトしないといけないだろう。だったらここで一時間と言わず、車中泊した方がいいのだろうか……とか。
迷っていると柄沢さんは「何をお悩み?」と顔を覗きこんでくる。
「ここから名古屋まで、あとどれくらい?」
「ん~……二時間かからないかな?」
二時間、か……。
「一旦下りる?」
問われ、そういう選択もあるのかと思った。
「車で寝るのは……ちょっと辛いだろ。狭いし」
狭いシングルベッドで二人寄り添って寝ていても苦じゃない人でも、さすがにスポーツカーでの車中泊は嫌らしい。
「うん……じゃあ」
この選択が正しいのかも分からないまま頷くと、柄沢さんは本当に次のインターで下り、二人でホテルを探した。真夜中三時。見つけたビジネスホテルで空き部屋を確認すると、空いているという。
「シングルもツインも空いておりますが、どうされますか」
今日が平日で良かったと思う。
「じゃあ、シングル二部屋」
相談もなく間髪入れずに返答した柄沢さんだけど、受付が「かしこまりました」と言うか否かの早いタイミングで「あっ」と声を出した。僕も受付の男性も柄沢さんを見る。
「直人と一緒の感覚で返事しちゃった。ツインにする?」
「えっ!」
思ってもなかった。別にシングル二部屋で何の文句もなかったが、柄沢さんが続ける。
「一応未成年だし? いや、まぁどっちでもいいよ? 宿泊費、俺が出してやるし、好きな方選べよ」
……宿泊費……。
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