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四時間目:大人の遊びと反抗期
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「だからさ。お前、話聞いてたか? あの人はそういうことしない、って言ってんだよ。俺らは遊びの女くらいいるけど、あの人はそういう女一人作れないんだよ。ややこしくなるから。そうやって拗れたこと何回もあるんだよ。俺らはそれを見てきてる。だからこそ、真山って女とのキスはありえないって言いきれるんだよ」
「真山さんが本命かもしれないじゃん」
「ない。あの人は今狙ってる相手がいるはずだから」
小泉さんの断言に、隣ののぶさんが驚いたように彼を見上げた。
「えっ!? やっぱりそうなの!? え? お前知ってんの!?」
問われ、彼は「なんとなく」と曖昧に返答した。
「やっぱ小泉も感じてたよな!? やっぱあの子だよな!?」
直人さんが俄かに声を弾ませる。
「……たぶん。じゃなかったらまだ近所のパン屋に通ってるでしょ」
どういうこと?
「えっ! やっぱそうなの!? 最近柄沢さんパン持ってきてないなーって思ってたけど、そういうことなの!? てことは、あの子ってこと!?」
これで話が通じるのぶさんもスゴイ。僕にはさっぱり意味が分からない。なんにせよ、柄沢さんには好きな女性がいるようだ。
そりゃ……まぁ、普通に考えたらそうだよね。だったらもう真山さんがどうこうの次元じゃないな。僕も真山さんも、元より柄沢さんの天秤に乗ってないんだ。キスをしたのかどうか……真相は分からないけど、変な話……真山さんの話に信憑性はほとんどない。それなら、僕の気持ち的に……この三人の言葉を信じたいと思う。希望は、そっち。だけど、あくまで「そうであればいいな」という程度だ。本当の事なんて……分からないから……。
柄沢さんの好きな女性……か。
「どんな女性なんですか?」
聞くと三人は僕を見つめ、「ん~」と困ったように首を捻った。
「結構……小さい?」
「ですね、小さいと思います」
「あとは、はきはき喋るかな」
「そうそう」
まぁ、カッコイイ女性なのだから、もじもじは喋らないだろう。それくらいは僕だって予想出来る。
「その子、ショートカットですか?」
のぶさんが半信半疑でそう聞くと、直人さんと小泉さんは揃って力強く頷いた。
「そう、ショートカットだ!」
「一人じゃんか!」
のぶさんの中で確実な女性がヒットしたらしい。ショートカットの小さい女性……か。きっと綺麗な人なんだろうな。
次の瞬間。僕の携帯がけたたましく鳴り響いた。
見なくても分かる。母だろう。
時刻はすでに23時だ。母にしてはよく待った方だと思う。仕方なく携帯を持って席を外す。
「もしもし」
『あなた何してるの? もうバイト終わってるんでしょう? 残業でもしてたの?』
「ごめん。友達と話し込んでた。今友達の家にいるし、朝までには帰るよ」
『はぁ? あなた明日は学校でしょう!? バカなこと言ってないで早く帰ってらっしゃい!』
「だから、朝までには帰るから」
『だめです! すぐに帰ってきなさい!』
「いやだ。そんなこと言うなら絶対に帰らない」
頑として譲らないと、母は電話を父に代わった。
『梓。親の言うことが聞けないのか』
厳しい声が僕を黙らせる。だけど……。
「だったら、お父さんとお母さんは僕の言うことを聞いてくれるの?」
『……何が望みなのか言ってみなさい』
言われ、何が望みなのか……考えた。
「……もっと自由が欲しい」
言うと、父は答えた。
『自由と言うのはルールの上に成り立つものだ。未成年の子供には、親がルールを作らなければいけない。それが私たちの義務であり責任だ。ルールからはみ出すことを自由だと勘違いするな』
「真山さんが本命かもしれないじゃん」
「ない。あの人は今狙ってる相手がいるはずだから」
小泉さんの断言に、隣ののぶさんが驚いたように彼を見上げた。
「えっ!? やっぱりそうなの!? え? お前知ってんの!?」
問われ、彼は「なんとなく」と曖昧に返答した。
「やっぱ小泉も感じてたよな!? やっぱあの子だよな!?」
直人さんが俄かに声を弾ませる。
「……たぶん。じゃなかったらまだ近所のパン屋に通ってるでしょ」
どういうこと?
「えっ! やっぱそうなの!? 最近柄沢さんパン持ってきてないなーって思ってたけど、そういうことなの!? てことは、あの子ってこと!?」
これで話が通じるのぶさんもスゴイ。僕にはさっぱり意味が分からない。なんにせよ、柄沢さんには好きな女性がいるようだ。
そりゃ……まぁ、普通に考えたらそうだよね。だったらもう真山さんがどうこうの次元じゃないな。僕も真山さんも、元より柄沢さんの天秤に乗ってないんだ。キスをしたのかどうか……真相は分からないけど、変な話……真山さんの話に信憑性はほとんどない。それなら、僕の気持ち的に……この三人の言葉を信じたいと思う。希望は、そっち。だけど、あくまで「そうであればいいな」という程度だ。本当の事なんて……分からないから……。
柄沢さんの好きな女性……か。
「どんな女性なんですか?」
聞くと三人は僕を見つめ、「ん~」と困ったように首を捻った。
「結構……小さい?」
「ですね、小さいと思います」
「あとは、はきはき喋るかな」
「そうそう」
まぁ、カッコイイ女性なのだから、もじもじは喋らないだろう。それくらいは僕だって予想出来る。
「その子、ショートカットですか?」
のぶさんが半信半疑でそう聞くと、直人さんと小泉さんは揃って力強く頷いた。
「そう、ショートカットだ!」
「一人じゃんか!」
のぶさんの中で確実な女性がヒットしたらしい。ショートカットの小さい女性……か。きっと綺麗な人なんだろうな。
次の瞬間。僕の携帯がけたたましく鳴り響いた。
見なくても分かる。母だろう。
時刻はすでに23時だ。母にしてはよく待った方だと思う。仕方なく携帯を持って席を外す。
「もしもし」
『あなた何してるの? もうバイト終わってるんでしょう? 残業でもしてたの?』
「ごめん。友達と話し込んでた。今友達の家にいるし、朝までには帰るよ」
『はぁ? あなた明日は学校でしょう!? バカなこと言ってないで早く帰ってらっしゃい!』
「だから、朝までには帰るから」
『だめです! すぐに帰ってきなさい!』
「いやだ。そんなこと言うなら絶対に帰らない」
頑として譲らないと、母は電話を父に代わった。
『梓。親の言うことが聞けないのか』
厳しい声が僕を黙らせる。だけど……。
「だったら、お父さんとお母さんは僕の言うことを聞いてくれるの?」
『……何が望みなのか言ってみなさい』
言われ、何が望みなのか……考えた。
「……もっと自由が欲しい」
言うと、父は答えた。
『自由と言うのはルールの上に成り立つものだ。未成年の子供には、親がルールを作らなければいけない。それが私たちの義務であり責任だ。ルールからはみ出すことを自由だと勘違いするな』
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