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中休み:母のお節介
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怒り交じりの声を出してから、ふと思い出した。もしかして昨日の「可愛いな」もそういう意味だったのだろうか!? やっぱり根掘り葉掘り言及しないで正解だったんだね! めっちゃムカつくんですけど!
「僕っ、男ですけど!?」
「知ってる」
そう返事しながらクスクス笑う。
ほんとに分かってるの!? ちょ! その笑いはなんなのさ!
「僕の事、女顔だって思ってるだろ!」
これ、結構気にしているんだからな!
叫んだ僕に、柄沢さんは小さくこちらに目配せし、「思ってないよ」と思いっきり「思っている目」を向けてくる。
「嘘つくな!」
「いや、背は小さいな、とは思うけど」
「うるさいなぁぁ!」
「どっちがだよ。朝から元気だなぁ」
そう言ってぽんぽん頭を撫でられるから、憤怒してそれを払いのけた。
「子ども扱いしないで!」
言った僕に一瞬目を見開いた柄沢さんは、ふと黙り、そしてキョロっと視線を動かしてからまた僕を見た。
そして。
「……そうだな。悪かった」
と謝ったのだ。
謝らせた!
それは、僕にとって結構大きな一歩だった。
「分かったなら、よろしい」
仁王立ちして頷くと、柄沢さんはまたふふっと笑い、「じゃ、行くか」と冷蔵庫の鍵を手に取った。僕も慌てて鞄を引っ提げ、昨日借りた直人さんのヘルメットを手に取る。だけどそこには、他にもいくつかヘルメットがあって、たくさんあるんだねと言うと、柄沢さんは頷いた。
「全部俺の」
「……全部前の彼女のでしょ?」
別に拗ねた声を出したつもりはなかったけど、自分でもスネ夫な声だなと思った。
柄沢さんは僕の言葉にうんともすんとも言わなかったけど、バイクに二人跨った時、「邪魔だし捨てようかな」と呟いた。
やっぱり、元カノのヘルメットなのだろうか……。
真相は分からなかったけど、僕はこの日、最初から柄沢さんの背中にしがみついたまま、家まで送り届けてもらった。とはいえ、嘘をついてお泊りしている分、家から距離を保って下ろしてもらった。
「じゃあな」
「はい。ありがとうございました!」
直人さんのヘルメットを返し、僕は仕事へ向かう柄沢さんの姿を見送ってから家へと帰ってきた。
8時前。僕も後1時間でバイトの時間だ。
親に顔だけ見せ、「粗相はなかったか」と問い詰めてくる母から逃れるようにさっさと二階へ逃げた。
制服を脱ぎ、私服に着替え、一旦ベッドに寝ころんで休憩した。
柄沢さん……、イケメンで、優しい人だったな。面白いし、趣味も合うし、髪乾かしてくれるし、ご飯も作ってくれた。
エッチなことも……教えてくれた。そっと自分の物を触って扱いてみたけど、やっぱりなんか……違うなぁと思った。自分でするのと、他人にしてもらうのは、少し違う……。じれったいけど、柄沢さんの手、気持ち良かったな、と思う。
「僕っ、男ですけど!?」
「知ってる」
そう返事しながらクスクス笑う。
ほんとに分かってるの!? ちょ! その笑いはなんなのさ!
「僕の事、女顔だって思ってるだろ!」
これ、結構気にしているんだからな!
叫んだ僕に、柄沢さんは小さくこちらに目配せし、「思ってないよ」と思いっきり「思っている目」を向けてくる。
「嘘つくな!」
「いや、背は小さいな、とは思うけど」
「うるさいなぁぁ!」
「どっちがだよ。朝から元気だなぁ」
そう言ってぽんぽん頭を撫でられるから、憤怒してそれを払いのけた。
「子ども扱いしないで!」
言った僕に一瞬目を見開いた柄沢さんは、ふと黙り、そしてキョロっと視線を動かしてからまた僕を見た。
そして。
「……そうだな。悪かった」
と謝ったのだ。
謝らせた!
それは、僕にとって結構大きな一歩だった。
「分かったなら、よろしい」
仁王立ちして頷くと、柄沢さんはまたふふっと笑い、「じゃ、行くか」と冷蔵庫の鍵を手に取った。僕も慌てて鞄を引っ提げ、昨日借りた直人さんのヘルメットを手に取る。だけどそこには、他にもいくつかヘルメットがあって、たくさんあるんだねと言うと、柄沢さんは頷いた。
「全部俺の」
「……全部前の彼女のでしょ?」
別に拗ねた声を出したつもりはなかったけど、自分でもスネ夫な声だなと思った。
柄沢さんは僕の言葉にうんともすんとも言わなかったけど、バイクに二人跨った時、「邪魔だし捨てようかな」と呟いた。
やっぱり、元カノのヘルメットなのだろうか……。
真相は分からなかったけど、僕はこの日、最初から柄沢さんの背中にしがみついたまま、家まで送り届けてもらった。とはいえ、嘘をついてお泊りしている分、家から距離を保って下ろしてもらった。
「じゃあな」
「はい。ありがとうございました!」
直人さんのヘルメットを返し、僕は仕事へ向かう柄沢さんの姿を見送ってから家へと帰ってきた。
8時前。僕も後1時間でバイトの時間だ。
親に顔だけ見せ、「粗相はなかったか」と問い詰めてくる母から逃れるようにさっさと二階へ逃げた。
制服を脱ぎ、私服に着替え、一旦ベッドに寝ころんで休憩した。
柄沢さん……、イケメンで、優しい人だったな。面白いし、趣味も合うし、髪乾かしてくれるし、ご飯も作ってくれた。
エッチなことも……教えてくれた。そっと自分の物を触って扱いてみたけど、やっぱりなんか……違うなぁと思った。自分でするのと、他人にしてもらうのは、少し違う……。じれったいけど、柄沢さんの手、気持ち良かったな、と思う。
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