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二時間目:大人のお兄さん
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家に到着し、部屋に案内される。
決して立派な家ではなかった。五階建てのアパート。築何年だろうか……結構古そうだ。
「お邪魔……します」
アパート自身が古いから、全体的に薄暗い雰囲気だったけど、部屋は綺麗に整頓されていた。
「綺麗にしてるんですね」
「なんだよ、それ」
鼻で笑い、柄沢さんはバイクの鍵を冷蔵庫のフックに引っ掛けると、僕からヘルメットを受け取った。
廊下のない間取り。玄関を開けたらそこはもうキッチンダイニングだ。その奥にもう一つ部屋があり、そこにベッドとテレビが置かれてある。
この古い部屋には似つかわしくない大きなテレビがあり、その両脇に、めちゃくちゃカッコイイThe スピーカー様がドンと直立していた。
「かっこいい!」
思わず声をあげると、「だろ~」と彼は自慢げに笑った。
「そのうちプロジェクターとか買い出すかもな~」
自分でそんなことを言いながら、冷蔵庫をあけ、コップにお茶を注ぎ入れる。
それをもってこちらまでやってくると、テレビ前の小さな机の上にそれを置いた。そして部屋を見渡している僕の手を引く。
「こっちだ」
手を引かれるままダイニングに戻ると、本棚に引かれていたカーテンを開けた。
漫画と一緒に、大量のDVDが並んでいる。
「すごい! たくさんある!」
「どれ見る?」
どれ見る、なんて正直選び兼ねる!
「うわぁ、懐かしいのいっぱいある!」
「それが懐かしいのか……。年の差感じるなぁ」
苦笑し、好きなの選べって言うと、柄沢さんはキッチンの戸棚を開いてカップ麺とレトルトカレーを取り出した。
「晩飯作ってる時間もったいないし、どっちか選べ」
「時間があったら作ってくれるんですか?」
DVDを両手にいくつか持ちながら、ラーメンとカレーを持っている柄沢さんに尋ねると、一拍置いて、彼は笑った。
「時間がありゃ、な」
その返答がなんだかちょっと嬉しくて、僕もふふっと笑った。
「じゃあ次は時間のある時に来ようかな……」
見たい映画がたくさんある。大好きな映画、ここにいっぱいある。
本棚を再び見上げて言った僕に、柄沢さんは少しだけ黙って、「いつでも来いよ」って言ってくれた。
「今、迷ったね?」
そのわずかな沈黙へ意地悪なツッコミを入れると、柄沢さんは楽しそうに笑い声をあげた。
「あはは! ちげぇよ!」
「“また来るつもりかよ”って思ったんでしょ!?」
「思ってないって! 好きな時に来いよ!」
「嘘ばっかり!」
言い合いして、二人で笑った。
「いいから、カレーかラーメン選べよ」
「カレー! ラーメンは音がうるさそうだよ!」
「確かに。じゃ、そうするか」
柄沢さんがカレーを温めてくれている間に僕は見たい映画を一本に絞った。
出来上がった即席カレーとDVDを持ってベッドルームに戻ると、柄沢さんは僕が選んだDVDの上に、例のソフトエロ映画を置いた。
決して立派な家ではなかった。五階建てのアパート。築何年だろうか……結構古そうだ。
「お邪魔……します」
アパート自身が古いから、全体的に薄暗い雰囲気だったけど、部屋は綺麗に整頓されていた。
「綺麗にしてるんですね」
「なんだよ、それ」
鼻で笑い、柄沢さんはバイクの鍵を冷蔵庫のフックに引っ掛けると、僕からヘルメットを受け取った。
廊下のない間取り。玄関を開けたらそこはもうキッチンダイニングだ。その奥にもう一つ部屋があり、そこにベッドとテレビが置かれてある。
この古い部屋には似つかわしくない大きなテレビがあり、その両脇に、めちゃくちゃカッコイイThe スピーカー様がドンと直立していた。
「かっこいい!」
思わず声をあげると、「だろ~」と彼は自慢げに笑った。
「そのうちプロジェクターとか買い出すかもな~」
自分でそんなことを言いながら、冷蔵庫をあけ、コップにお茶を注ぎ入れる。
それをもってこちらまでやってくると、テレビ前の小さな机の上にそれを置いた。そして部屋を見渡している僕の手を引く。
「こっちだ」
手を引かれるままダイニングに戻ると、本棚に引かれていたカーテンを開けた。
漫画と一緒に、大量のDVDが並んでいる。
「すごい! たくさんある!」
「どれ見る?」
どれ見る、なんて正直選び兼ねる!
「うわぁ、懐かしいのいっぱいある!」
「それが懐かしいのか……。年の差感じるなぁ」
苦笑し、好きなの選べって言うと、柄沢さんはキッチンの戸棚を開いてカップ麺とレトルトカレーを取り出した。
「晩飯作ってる時間もったいないし、どっちか選べ」
「時間があったら作ってくれるんですか?」
DVDを両手にいくつか持ちながら、ラーメンとカレーを持っている柄沢さんに尋ねると、一拍置いて、彼は笑った。
「時間がありゃ、な」
その返答がなんだかちょっと嬉しくて、僕もふふっと笑った。
「じゃあ次は時間のある時に来ようかな……」
見たい映画がたくさんある。大好きな映画、ここにいっぱいある。
本棚を再び見上げて言った僕に、柄沢さんは少しだけ黙って、「いつでも来いよ」って言ってくれた。
「今、迷ったね?」
そのわずかな沈黙へ意地悪なツッコミを入れると、柄沢さんは楽しそうに笑い声をあげた。
「あはは! ちげぇよ!」
「“また来るつもりかよ”って思ったんでしょ!?」
「思ってないって! 好きな時に来いよ!」
「嘘ばっかり!」
言い合いして、二人で笑った。
「いいから、カレーかラーメン選べよ」
「カレー! ラーメンは音がうるさそうだよ!」
「確かに。じゃ、そうするか」
柄沢さんがカレーを温めてくれている間に僕は見たい映画を一本に絞った。
出来上がった即席カレーとDVDを持ってベッドルームに戻ると、柄沢さんは僕が選んだDVDの上に、例のソフトエロ映画を置いた。
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