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とけてつぶれる
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「知ってます? 響の恋人、男なんすよ! バレンタイン明日だし、面白そうだから話聞こうと思ってたんっす♪」
庄野の爆弾発言に、永井は失笑した。
「……それ、お前が勝手にカミングアウトしていいわけ?」
永井の言葉に庄野はかくんと首を傾げる。
「社長なら秘密、誰にも言ったりしないっしょ?」
その絶対的な信頼が、永井には重くて、プレッシャーになる。でも、擽ったいなとも思った。
「男同士でもバレンタインに何か渡したりすんのかなぁ? どう思います、社長?」
「その前にお前、偏見はないのか?」
「ヘンケン? ヘンケンって何すか?」
「……アホなのだな」
酷いなぁ!と笑う庄野の無邪気さは突き抜けるほど綺麗だ。その純真無垢な笑顔も無邪気さも、すべて過去を蘇らせる。思い出したくもない、あの男の笑顔を。
「ねぇ、社長! 社長が男からバレンタイン貰うなら何が欲しいっすか?」
「は? 何を言ってるんだ」
無意味な質問に眉根を寄せると、庄野は一瞬身を引き、ぷいっと顔を背かせる。
「いや、別に変な意味はないっすよ? 響と話せなかったから、ど、ゆう……感じなのかなぁ……とおも、ったらけで」
「しどろもどろか」
ツッコまざるを得ないほどの動揺っぷりだ。庄野の顔が一気に赤らんでゆく。
「ち、ちが……! 違うっすよ!? お…お、俺別に……っ」
「何か、くれるのか?」
聞くと、庄野は耳まで真っ赤にした顔で瞳を泳がせた。そんな庄野のニットを、永井は受付カウンターを挟んだ向こう側から、ぐいっと掴んで引き寄せた。
庄野の足がカウンターにゴツンっと当たった音がしたが、永井は構わず引っ張りよせ、そのままキスをした。
触れ合うだけのキス。でも庄野は綺麗すぎるから、汚さないように丁寧にキスをした。
時間が止まったように長く感じるキス。
そっと唇を離し、掴んでいた服も放すが、永井は庄野を直視出来なかった。
「……今年のバレンタインに欲しいものがあるとするなら、恋人だな」
ストンと受付の椅子に腰を下ろし、パソコンから今月の出納帳を開いた。そのあとで備品購入のレシートをカウンター下の金庫から取り出す。
庄野は固まったまま動かない。永井は言葉にすら出来ない感情を押し殺したまま、レシートの金額を出納帳に打ち込み始めた。
庄野がここから逃げてくれることを願った。今すぐ立ち去ってくれと本気で願った。
けど、庄野は触れ合った唇を触り、そして困ったように笑った。
「す、すんません。俺今……唇ガサガサだ」
……アホ、なのだな。
庄野の爆弾発言に、永井は失笑した。
「……それ、お前が勝手にカミングアウトしていいわけ?」
永井の言葉に庄野はかくんと首を傾げる。
「社長なら秘密、誰にも言ったりしないっしょ?」
その絶対的な信頼が、永井には重くて、プレッシャーになる。でも、擽ったいなとも思った。
「男同士でもバレンタインに何か渡したりすんのかなぁ? どう思います、社長?」
「その前にお前、偏見はないのか?」
「ヘンケン? ヘンケンって何すか?」
「……アホなのだな」
酷いなぁ!と笑う庄野の無邪気さは突き抜けるほど綺麗だ。その純真無垢な笑顔も無邪気さも、すべて過去を蘇らせる。思い出したくもない、あの男の笑顔を。
「ねぇ、社長! 社長が男からバレンタイン貰うなら何が欲しいっすか?」
「は? 何を言ってるんだ」
無意味な質問に眉根を寄せると、庄野は一瞬身を引き、ぷいっと顔を背かせる。
「いや、別に変な意味はないっすよ? 響と話せなかったから、ど、ゆう……感じなのかなぁ……とおも、ったらけで」
「しどろもどろか」
ツッコまざるを得ないほどの動揺っぷりだ。庄野の顔が一気に赤らんでゆく。
「ち、ちが……! 違うっすよ!? お…お、俺別に……っ」
「何か、くれるのか?」
聞くと、庄野は耳まで真っ赤にした顔で瞳を泳がせた。そんな庄野のニットを、永井は受付カウンターを挟んだ向こう側から、ぐいっと掴んで引き寄せた。
庄野の足がカウンターにゴツンっと当たった音がしたが、永井は構わず引っ張りよせ、そのままキスをした。
触れ合うだけのキス。でも庄野は綺麗すぎるから、汚さないように丁寧にキスをした。
時間が止まったように長く感じるキス。
そっと唇を離し、掴んでいた服も放すが、永井は庄野を直視出来なかった。
「……今年のバレンタインに欲しいものがあるとするなら、恋人だな」
ストンと受付の椅子に腰を下ろし、パソコンから今月の出納帳を開いた。そのあとで備品購入のレシートをカウンター下の金庫から取り出す。
庄野は固まったまま動かない。永井は言葉にすら出来ない感情を押し殺したまま、レシートの金額を出納帳に打ち込み始めた。
庄野がここから逃げてくれることを願った。今すぐ立ち去ってくれと本気で願った。
けど、庄野は触れ合った唇を触り、そして困ったように笑った。
「す、すんません。俺今……唇ガサガサだ」
……アホ、なのだな。
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