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第二十一章:運命
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こんなリーダーは、初めて見た。いつも穏やかで、感情の起伏があまりない。驚くほど冷静で、いつだって不思議なほど落ち着いている男だ。漫画ばかり読んでいるけど、いつも周りの話を聞いていて、空気を読みとく能力は見習うものがある男。それがリーダーだ。すごく、すごく頼りになる俺たちのリーダー。
けど、そのリーダーが頼りなく俺にしがみつき、縋るように胸に顔を埋めている。
「……どうしたの?」
本当は聞くまでもない。恐ろしく空気を読む男だ。
案の定、核心をついてきた。
「辞めたら許さない」
背中に回されている手に力が入る。
「手足縛ってでも……お前を手離すつもりなんか、俺にはないぞ……っ」
震えた声で、リーダーは言い切った。
この人、こういうこと言う人だったのか。
少し驚いた。
codeを守ろうと必死なのは、小形だけじゃない。リーダーも、たぶん死ぬほどcodeを守りたいんだ。だってこの人、こんなに頼りない肩をしていない。こんなに頼りない背中をしていない。こんなに頼りない腕をしていない……。こんなに頼りない声、絶対に出さないから。
「リーダー……」
俺の胸にしがみついたまま、リーダーは再び俺を見上げた。その瞳は揺らぎ、不安を隠しもしない。
背の低い彼の上目遣い。その瞳にどこか幼さを感じ、俺はふと研修生時代の彼を思い出した。
「……玲くん」
そう呼んでいたことも思い出す。
コツンと、また彼は頭を俺の胸に当てて顔を隠した。
「お前のこと必死になって考えてる人間は一人じゃない」
玲くんのくぐもった声。それは小形を指すのだろうかと漠然と思った。
だけど……、
「お前の人生に必要な人間は一人なんかじゃない」
玲くんの言葉はまるで、”俺を見ろ” と言っているように聞こえた。
”codeを見つめろ” ”codeでいろ”
そんな言葉に聞こえた。
「お前の求める人間がたった一人だったとしても、お前を求める人間は一人じゃない」
強く抱きしめられて、それはファンだけじゃなくて、codeのメンバーも指しているのだとよく分かった。
玲くんの言葉や腕は、とても分かりやすく俺の心を解いた。
やっぱり玲くんは、俺の弱い部分を見抜いている。そこをピンポイントで支えようとしてくれる。
「玲くん……っ」
弱っている自分を見せても、弱い部分は見せたくなかった。彼の大きさに甘えそうで、いつも見透かされそうなその瞳から逃げていた。けど、玲くんがこうして俺を抱きしめてくれるなら、俺は彼に……今くらい甘えてもいい気がした。
その肩を抱きしめ、俺は込み上げてくる涙を感じながら、やっぱりcodeは捨てられないと強く思った。
けど、そのリーダーが頼りなく俺にしがみつき、縋るように胸に顔を埋めている。
「……どうしたの?」
本当は聞くまでもない。恐ろしく空気を読む男だ。
案の定、核心をついてきた。
「辞めたら許さない」
背中に回されている手に力が入る。
「手足縛ってでも……お前を手離すつもりなんか、俺にはないぞ……っ」
震えた声で、リーダーは言い切った。
この人、こういうこと言う人だったのか。
少し驚いた。
codeを守ろうと必死なのは、小形だけじゃない。リーダーも、たぶん死ぬほどcodeを守りたいんだ。だってこの人、こんなに頼りない肩をしていない。こんなに頼りない背中をしていない。こんなに頼りない腕をしていない……。こんなに頼りない声、絶対に出さないから。
「リーダー……」
俺の胸にしがみついたまま、リーダーは再び俺を見上げた。その瞳は揺らぎ、不安を隠しもしない。
背の低い彼の上目遣い。その瞳にどこか幼さを感じ、俺はふと研修生時代の彼を思い出した。
「……玲くん」
そう呼んでいたことも思い出す。
コツンと、また彼は頭を俺の胸に当てて顔を隠した。
「お前のこと必死になって考えてる人間は一人じゃない」
玲くんのくぐもった声。それは小形を指すのだろうかと漠然と思った。
だけど……、
「お前の人生に必要な人間は一人なんかじゃない」
玲くんの言葉はまるで、”俺を見ろ” と言っているように聞こえた。
”codeを見つめろ” ”codeでいろ”
そんな言葉に聞こえた。
「お前の求める人間がたった一人だったとしても、お前を求める人間は一人じゃない」
強く抱きしめられて、それはファンだけじゃなくて、codeのメンバーも指しているのだとよく分かった。
玲くんの言葉や腕は、とても分かりやすく俺の心を解いた。
やっぱり玲くんは、俺の弱い部分を見抜いている。そこをピンポイントで支えようとしてくれる。
「玲くん……っ」
弱っている自分を見せても、弱い部分は見せたくなかった。彼の大きさに甘えそうで、いつも見透かされそうなその瞳から逃げていた。けど、玲くんがこうして俺を抱きしめてくれるなら、俺は彼に……今くらい甘えてもいい気がした。
その肩を抱きしめ、俺は込み上げてくる涙を感じながら、やっぱりcodeは捨てられないと強く思った。
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