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第十九章:運命は暗がり

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 でも、誓って言えることは──。

「一線引いておかないと、俺はアイドルですら居られなくなる」

 これだけは本気だ。
 この比呂人へと駆け出して行こうとする気持ちだけは間違いなく本物で、スタートラインを越えては行けない場所にある。

 小形……お前がそのストッパーなんだよ。お前のその冷めた目が、何よりものストッパーなんだ。だから、会いに行けなんてお前が言わないでくれ。俺を引き止め、鎖を付けてでもcodeに繋いでおいてくれよ……っ!

 堪えて……堪えて……、流さないように頑張っていた涙は限界で。

「ごめん、みんな。ちょっと席外して欲しい」

 小形の落ち着いた声が聞こえて、大人しくそれに従うメンバーが静かに楽屋を出て行くと、途端、堰を切ったように涙は零れて落ちた。

 その場にしゃがみ込み、嗚咽が漏れるほど涙は次々溢れて落ちていく。

「俺だって……! 生半可な気持ちで比呂人を愛していたわけじゃない……っ」

 男を愛すなんて、お遊びで出来るほど器用な人間じゃない。おかげでどれだけ壁に阻まれた? どれだけ怖気付いた? 比呂人を想う気持ちは本物なのに、この不器用さのせいで、どれだけ俺は比呂人に迷惑をかけた?

 もっと器用に愛せれば良かった。もっと優しく、もっともっと素直に比呂人を愛せれば良かったのに……っ!

「俺は若すぎた。けど、比呂人は大人すぎた」

 そのアンバランスさは、いつ崩れてもおかしくなくて、必死にバランスを取ろうとしていたのは……比呂人ひとりだった。

 俺が誘う。けど躊躇する。見兼ねて比呂人が先にやってのける。そうやってバランスをとってくれていた。比呂人だって、躊躇って当たり前のことなのに、そんな素振り……見せもせず。

 けど、体だけじゃない。
 何においても俺は比呂人のおかげで自由でいられた。何の気も遣わず有のままでいられた。
 きっと、ホントは……好きだって、愛してるって比呂人は聞きたかったはずなんだ。

 たまに俺の隣に座って、申し訳なさそうに肩に頭を預けて、そっと足に手を置いた。比呂人が甘えることなんて滅多になかったから、よく覚えている。そうやって甘えられると、すごく嬉しくて、ドキドキして、足に置かれた手をただ強く握りしめるしか出来なくて。

『亮介』

 そう呼ぶ声に、俺はひとりで酔いしれて……満足して。

『好きだよ』

 そんな風に囁く比呂人にたまらずキスをして押し倒した。けど、たぶん違ってたんだ。俺も好きだよって、愛してるよって、そう言わなきゃいけなかった。その言葉を待っていたのかもしれない。

 本当に俺は若くて、比呂人は大人すぎた。

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