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第十七章:大晦日の夜

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 僕は亮介に会いに行くべきなんだろうか。……分からない。例えば会いに行ったとして、じゃあ亮介と何を話すんだろう。元気?と、無神経に尋ねるのか? いや~、小形くんにせがまれちゃって、と全部小形くんのせいにして、まんまと会いに行くっていうのか?

 二年だ……、二年。
 二年も彼を苦しめておいて、そんな軽はずみな事をして良い訳がない。だったら、今更ゴメンねと謝りに行くのか? せめてご飯は食べなきゃダメだよ、なんてお節介を焼きに行くのか? それも可笑しいだろう。どれも見合わない。

 まだ好きなんだと……もう一度やり直そうと、そんなことだって……言えるはずもない。

 二年も彼を苦しめ、結果そんなどうしようもない告白をしたら、一体何が足踏みだったのか分からなくなる。亮介の将来を潰すような真似だけはしたくないんだ。
 けど小形くんの言葉がすべて真実なら、亮介は今も尚苦しんでいて、僕を思い出しては食事も喉を通らないでいる。

 すべて僕のせい。
 僕があんな酷いことをしたから、亮介は癒えない傷を負った。


 ……僕にしか救えない……?


 それってどういう意味だろう。また亮介との生活を再開しろってこと? それとも、別れた原因は亮介のせいじゃないと説明しに行けってこと? そうじゃないなら──。

 ”なんで話聞いてやらなかった!? なんで何も答えてやらなかった!?”

 切迫詰まった小形くんの声が蘇る。

 つまり……亮介の話を聞きに行けってこと?
 でも、……でもさ。

 亮介から何を言われるか分かってしまうから、それはやっぱり無理だよ。
 きっと抱いてくれって言われる。

 そんなことしたら、もう取り返しつかないじゃないか。 

 僕らに ”もう一度” なんてあるのか? そんなこと許されるのか? あの頃突破出来なかった体の壁を、例えば今越えられたとしても、別れた一番の理由がそれじゃないと知っているのは僕だけで。僕が強くならなきゃいけないのは歴然で。
 けど、本当の理由を知ったら……亮介、……アイドル辞めるんじゃないだろうか。

 でもそれは僕の望む未来じゃない。僕の望む亮介の将来ではない。

 僕はどうしたら彼を救えるのだろうか。小形くんは、僕にどうして欲しかったんだ。亮介を救える方法が何か、ちゃんと教えてほしい。
 亮介を……助けたいよ。

 でも、それでもやっぱり……会わない方がいい気がする。

 人は必ず忘却する。楽しい思い出も、辛い思い出も、きっと忘れられる。”過去” だと思える日が必ず来るはずなんだ。……僕だって亮介を過去だと割り切っていた。一週間前、小形くんに会うまでは。

 だから、今もしも会ってしまえば、僕以上にパニックを起こすのは亮介だ。忘れようと必死に戦っている彼を邪魔しちゃいけない。今の僕のように、またおかしな感情に支配されてしまう。
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