ココア ~僕の同居人はまさかのアイドルだった~

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第十一章:繰り返しの日々

ーside 加藤ー 1

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 三ヶ月に及ぶコンサートツアーは名古屋で最終を迎え、追加公演の東京も今夜終演した。ブログに ”ヒロトの店には行くな” と注意書きした効果はあったらしく、それから徐々に店は平穏を取り戻した。
 あれから比呂人が、何故予言出来たんだとしつこく聞いて来たが、超能力者だと本気で俺を崇めるものだから、面白くて真実は黙っておいた。まぁつまり、比呂人は俺のブログを見てないってわけだ。それでも毎日ラジオは聞くし、テレビに出ると分かった時はきっちり録画する。カッコイイカッコイイと、飽きずに歌番組を見たりする。
 だけど、やっぱりコンサートには行かないと改めて言われたのは、一ヶ月ほど前のことだ。

 ファンの女の子達を直接、しかもあんな凄まじい数で見てしまったら、後ろめたくて死にたくなると笑って言われた。
 三ヶ月前、比呂人が俺を追い出そうとしたのはそういうことだったのかと妙に納得してしまって、それ以上はもうコンサートに来いなんて冗談でも言えなくなった。

 だが、俺は比呂人と居ることが嬉しくて、楽しくて、初日の公演に来れなかったファン達のためにも、こっそりブログに比呂人との生活を書いたりしていた。
 比呂人はもちろん知らない。写真を撮っていても、あまり気にもしていない。

 無頓着で無執着。

 比呂人は俺がブログをしていることを知っているが、何故かそれには興味を示さない。言い分はなんとなく予想がつく。あの人のことだ。ブログで書く内容なんか、家で聞くよ。これで間違いないだろう、十中八九間違っていないはずだ。

 だけど、俺は比呂人の写真をたくさん撮るけど、比呂人が俺の写真を撮ることはない。これは謎だ。何か理由があるのか、ただの無頓着なのか。

 携帯に入っている比呂人の写真を見ながら、俺はタクシーを降りた。

「カッコイイよなぁ」

 惚れ惚れしながら橋を渡り、比呂人の待つアパートに目をやった。比呂人の部屋は角部屋だ。灯りは……ついていない。時刻は深夜三時。起きている方がアホだ。
 川縁を歩き、フープも通り越し、アパートに帰る。三階の角部屋。暗がりの中、寝室で眠る比呂人を確認してから風呂に入り、歯磨きを済ませた。

 馴染みの布団は綺麗に手直しされている。だけど俺は比呂人のベッドに乗り上げた。

「ただいま……比呂人」

 完全に眠っている比呂人を後ろから抱きしめ、Tシャツの中に手を忍ばせた。掌に比呂人の体温を感じる。この硬い体に、最初全然慣れなかった。
 硬いなぁ、男だなぁ……と、抱き合うたびに違和感があって、ドキドキするけど、変に現実的で冷静な自分が ”おかしくないか?” と疑問を提議しまくった。

 でも、今はもうこの硬い体に慣れた。細長い指も、思っている以上に筋肉質な腕も、硬い胸板も、無駄な脂肪のない引き締まった腰も、今じゃ何の違和感もない。
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