RUN! RUN! RUN! ~その背伸びには意味がある~

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【結】 俺たちの答え

ー side 嵐 ー 1

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「あぁ、蘭真くん? 家はすぐそこなんだけど、今仕事してるんじゃないかしら」

  せっかく俺が知らないと答えたのに、別の人から兄ちゃんの所在を聞き出したイケメンは、簡単に店を見つけ出した。

 尾行するみたいに後をいて歩き、店に姿を消した男を向かいの道路からじっと見つめる。

 あの男、怪しすぎる。

 数分店の中を凝視していたが、兄ちゃんが店頭に顔を出した様子はなかった。だが店の袋を提げて外へ出てきた男は、携帯を取り出しぱしゃりと店の外観をカメラに収めた。
 その顔はとても穏やかで、とても優しい。

 腹が立つくらい、そこに愛を感じた。

 その後きょろっと辺りを見渡し再び来た道を戻ると、今度こそ兄ちゃんの家を探し当て、誰もいない道路で男は静かに涙を零した。


「蘭ちゃん……っ」


 電信柱の後ろに隠れてその声を聞く。

 この男は、やっぱり兄ちゃんの元彼だ……。

 信じられないくらいカッコイイ。兄ちゃんって実は面食いだったんだ。初めて知った。そりゃ前の彼氏があれじゃ俺なんか足下にも及ばない。水色ゼリーにバツが付くわけだ。

 ……悔しい。俺じゃ敵わないって負けを認めても、やっぱり悔しい。


『好き』


 必死の思いでそう送ったけど、この言葉を俺とあの男から同時に聞いた時、兄ちゃんはどちらの『好き』を選ぶのだろう。

 その答えが分かりきっていて……、俺はLINEを送った後にズルズルその場にしゃがみ込んだ。


 俺はまだ高校生だ……。兄ちゃんを守ってやれるだけの甲斐性などない。あの男のようにカッコ良くもない、職もない。倒れず支えてやれるだけの頼もしさも逞しさも、きっとあいつより劣ってる。

 それが悲しい。悔しい。
 今俺に出来ることは、ただ側にいてやる事だけ。それなのに……たったそれだけなのに、それすらも俺は充分に出来ていない。

 バツのついた水色ゼリー案が頭から離れない。情けない。そんなくだらない理由で……距離をとろうとするなんて……。


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