RUN! RUN! RUN! ~その背伸びには意味がある~

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【結】 俺たちの答え

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 わざわざそんな事言わなくていいんだよ! これじゃ五月蝿い寺島と同じじゃないか。お前は大人しくて紳士的な男じゃないのかよ!

 恥ずかしくて、せめてもの抵抗として体を引き離してやろうとしたのだが、それよりも強い力で抱きしめ返される。

「ごめん……。嬉しくて、泣きそう」

 そう言ったかと思ったら、本当に耳元で泣き出し「好きだよ」って何度も囁かれた。

 何故こんな事で嵐が泣くのか分からなかったけど、やっぱり昨夜感じた嵐の ”寂しさ” や ”不安” は、ちゃんと嵐の中こ こにあるんだと思った。


 やっぱり……嵐は、あの頃の俺だ。


 きっと俺がいくら愛してると言っても、満足しないんだろう。お前しかいないと、お前がいないと生きられないと、寺島みたいな言葉を伝えたところで、嵐はきっと全部を疑う。信用しない。……俺と同じように。

「……なぁ、嵐」

 すすり泣く嵐の背中を優しく撫で、もう動いてくれない二本の指を体から引き抜いた。

「俺……大人だよな」

 もしも年齢がもう少し近ければ、俺たちはこんなに迷わずに済んだのだろう。

「ごめんな……。兄ちゃん、お前より大人で……」

 泣き崩れる嵐を支えて、俺は椅子を降り、二人でフローリングに座り込む。ひんやりした床は俺の興奮した体を一気に冷ましていくみたいだ。

「怖いよな……、不安だよな? すげぇ分かるよ。なのに俺は、”早く追いつかなきゃ” ってお前が焦ってんのも分かっちまうような大人で……ほんとごめん」

 ボロボロになって泣く嵐から体を引き離し、俺は脱ぎかけのズボンをすべて下ろし、嵐の手を引いた。

「見せてやる。俺がどんだけお前のこと思って……毎日オナってんのか」

 涙のこぼれる瞳を大きく見開いた嵐を強引にベッドへ座らせ、俺は寺島にさえ見せなかった自慰を嵐に見せた。

 どんだけ大人ぶってても、こんなにもお前に振り回される俺がいるんだって、ちゃんと嵐に見せたかった。

 後ろも前も乳首も弄って、嵐の名前を呼び、瞬きを忘れてるんじゃないかってくらい凝視してくる嵐の瞳に犯されて、俺は射精した。

「お前のこと好きだよ。理性ぶっ飛びそうなほど気が狂いそうになる時がある。じゃなきゃこんなことしねぇよ」

 掌にべっとりと付いた体液を見せ、俺はズボンの下で硬く反り返っている嵐の股間へ視線を移した。

「俺は大人だから、やっぱり……どうしても色々考える。お前の将来も俺の将来も考える。それでも、今は毎日こうやってお前の名前ばっかり呼んでる」
「まい……にち?」
「毎日。お前全然触れてこないから、こうでもしねぇと俺溜まりすぎて死ぬわ」

 カッとまた赤面した嵐はモジモジと俯き、俺の掌の体液と自分の股間を申し訳なさそうにチラチラと見た。そして控えめに聞いてくる。

「兄ちゃん……俺のこと、好き?」

 ……ほらな。やっぱり疑ってる。

「逆にどう見えてるんだ?」

 聞き返した質問の答えは帰ってこなくて、俺は俯く嵐の隣にぴったりと寄り添った。

「好きだよ。寡黙なところも、見栄っ張りなところも、ちょっと冷めてるところも魅力的だと思ってる」
「俺、冷めてないし」
「冷めてるよ、馬鹿」
「見栄っ張りでもねぇし」
「アホか。泣くの我慢してたろ」
「コレは嬉し泣きだし!」

 そう言って叫ぶと、嵐は俺をベッドへ押し倒し、息まで飲み込んでいくようなキスをしてくれた。

 そう……。こういうのを待ってた。こういうのをずっと待ち続けてるんだよ、いつも。

「嵐……っ! 愛してる。俺の理性、壊すくらいに……抱いてくれ!」


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