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なけなしザッハトルテ7
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午後?
水道業の方も今日は休みなのだろうか、と思いながら、じゃあ、何時にしようかなと悩んでいると、俺からの返事を待たずに続いてこう言われた。
『もし明智さんもお休みなら、一緒にランチでもしませんか』
びっくりした。
「え、え!? ランチ!? いいの、そんな大胆なことして!?」
困惑しながらも「行く!」と威勢よく返事すると、「また連絡します」と簡潔な返事が来て、十二時前。俺は木崎さんとジャルディーノの二号店で落ち合った。
「二号店、オープニングに少しヘルプに入っただけで、久しぶりに来たな~」
丁度お昼時。店内は良く賑わっていて、待合に客もたくさんいた。だけど、俺達が店内に入ると、かつて一号店でチーフをしていた森本店長がすぐに見つけてくれた。
「いらっしゃい! 久しぶりだな、明智君! 元気? 席空けてるよ。二階だから、こっち来て」
熊のような容姿の森本店長に案内されるまま俺達は二階へと向かう。
「予約しておいてくれたんですか?」
「えぇ。今日は特別な日ですから」
そんな風に言われ、俺の口元は自然と緩んだ。
どこで知ったんだろう。今日が、俺の……誕生日だって。そういうことだろ? ……違うのかな?
ソワソワしながら、案内される日当たりのいい窓辺の席へと案内され、森本店長は着席した俺たちに親し気に話しかけて来た。
「なんか、珍しい二人だよな。俺が一号店抜けてから仲良くなったの? はは、いいじゃん。明智君もなんか見た目めちゃくちゃ落ちついてるし、いいと思う」
「森本さんは、ちょっと~……太りました?」
「あっはっは! うるせぇな~」
そう言って俺の肩をバシっと叩くと、視線は木崎さんへ移った。そして。
「木崎さん。明智君はもう知ってるんですか?」
「いえ。今からお話しようかと」
「あ、そうなんだ。じゃあ、メインだけ聞いておこうかな。スペチアーレでいいんだよね? 肉料理と魚料理、どっちにする?」
「えっ、スペチアーレ?」
すでに一番高級なコース料理で予約取れてるわけ?
驚いた俺に、目の前の木崎さんが可笑しそうに笑った。
「私がご馳走します。選んで下さい」
「え、えぇ? これだって、5600円もするんすよ!?」
そんな俺の反応に、木崎さんも森本さんも可笑しそうに笑った。
「奢ってくれるって言うんだし、社割も三割きくし、さっさと選べよ~」
「えぇぇ!?」
誕生日ランチってこと? めっちゃ嬉しいじゃん!!
テーブルに置かれている今日のメニューを確認し、メインを選んだ。
「じゃ、じゃあ……カルネで」
「おけ。木崎さんはどうする?」
「じゃ、私も」
テーブルセットと一緒に置かれている紙っぺらのお品書きを手に取り、森本店長が階段を下りて行くのを確認してから身を乗り出す。
「木崎さん! いいんですか、本当に!?」
「いいですよ、もちろん」
「嬉しい! いつ知ったんですか? 今日が俺の誕生日だって」
言った俺に彼は驚いたように目を見開くと、初耳、と分かりやすく顔に書いた。
あれ……? そういうわけ……じゃ、なかったのか?
水道業の方も今日は休みなのだろうか、と思いながら、じゃあ、何時にしようかなと悩んでいると、俺からの返事を待たずに続いてこう言われた。
『もし明智さんもお休みなら、一緒にランチでもしませんか』
びっくりした。
「え、え!? ランチ!? いいの、そんな大胆なことして!?」
困惑しながらも「行く!」と威勢よく返事すると、「また連絡します」と簡潔な返事が来て、十二時前。俺は木崎さんとジャルディーノの二号店で落ち合った。
「二号店、オープニングに少しヘルプに入っただけで、久しぶりに来たな~」
丁度お昼時。店内は良く賑わっていて、待合に客もたくさんいた。だけど、俺達が店内に入ると、かつて一号店でチーフをしていた森本店長がすぐに見つけてくれた。
「いらっしゃい! 久しぶりだな、明智君! 元気? 席空けてるよ。二階だから、こっち来て」
熊のような容姿の森本店長に案内されるまま俺達は二階へと向かう。
「予約しておいてくれたんですか?」
「えぇ。今日は特別な日ですから」
そんな風に言われ、俺の口元は自然と緩んだ。
どこで知ったんだろう。今日が、俺の……誕生日だって。そういうことだろ? ……違うのかな?
ソワソワしながら、案内される日当たりのいい窓辺の席へと案内され、森本店長は着席した俺たちに親し気に話しかけて来た。
「なんか、珍しい二人だよな。俺が一号店抜けてから仲良くなったの? はは、いいじゃん。明智君もなんか見た目めちゃくちゃ落ちついてるし、いいと思う」
「森本さんは、ちょっと~……太りました?」
「あっはっは! うるせぇな~」
そう言って俺の肩をバシっと叩くと、視線は木崎さんへ移った。そして。
「木崎さん。明智君はもう知ってるんですか?」
「いえ。今からお話しようかと」
「あ、そうなんだ。じゃあ、メインだけ聞いておこうかな。スペチアーレでいいんだよね? 肉料理と魚料理、どっちにする?」
「えっ、スペチアーレ?」
すでに一番高級なコース料理で予約取れてるわけ?
驚いた俺に、目の前の木崎さんが可笑しそうに笑った。
「私がご馳走します。選んで下さい」
「え、えぇ? これだって、5600円もするんすよ!?」
そんな俺の反応に、木崎さんも森本さんも可笑しそうに笑った。
「奢ってくれるって言うんだし、社割も三割きくし、さっさと選べよ~」
「えぇぇ!?」
誕生日ランチってこと? めっちゃ嬉しいじゃん!!
テーブルに置かれている今日のメニューを確認し、メインを選んだ。
「じゃ、じゃあ……カルネで」
「おけ。木崎さんはどうする?」
「じゃ、私も」
テーブルセットと一緒に置かれている紙っぺらのお品書きを手に取り、森本店長が階段を下りて行くのを確認してから身を乗り出す。
「木崎さん! いいんですか、本当に!?」
「いいですよ、もちろん」
「嬉しい! いつ知ったんですか? 今日が俺の誕生日だって」
言った俺に彼は驚いたように目を見開くと、初耳、と分かりやすく顔に書いた。
あれ……? そういうわけ……じゃ、なかったのか?
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