ジェントルマンズショコラ〜大人だって突然恋をする〜

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なけなしザッハトルテ7

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「何笑ってんすか! 俺真剣なんですけど!」
「あはは、だって……っ、ははっ! じゃあ、そうしましょう。告白の答えを今知ってしまいましたけど、明智さんが真剣ならば、ぜひ、そうしましょう」

 彼が笑っている理由を知り、一人赤面だ。そうか。そういうことになるよな……っ。俺、バカ!

「ふふ、すごく楽しみです。ザッハトルテと、明智さんの告白。楽しみにしています」
「う……うぅ……」
「ただ、良いのか悪いのか、私はチープな恋人になるつもりはありません。それだけは、ご了承いただかないと……いけなくて」

 そ……。
 それを望んでの告白なんだろうが、馬鹿!!!!!

「お、俺だってそうですよ! 軽い気持ちで告白するつもりなんてないですから!」

 木崎さんは「嬉しいな」って独り言のように呟くと、「頑張れそうです」と優しい声でそう言った。

 それは、俺も一緒だ。俺も、頑張れそうだ。会えないことをショックだと思ったけど、なんか……うん、頑張れそうかも。

 今すぐにでも、「好きだ」って言ってしまいそうだ。

「今日会えて、嬉しかったです。本当に有り難うございました。あんまり帰りが遅くなると怪しがられるかもですし、今夜はもう……」
「はい……そうですね。それでは……また。おやすみなさい」
「おやすみなさい」

 切れた通話。
 携帯を見つめ、俺はベッドへダイブした。

 早く……二人きりで会いたい。

 名前……。竹内だって言ってたな。竹内一誠、さん……か。

 ホワイトデーの告白はこの調子だときっとまた延期になるだろう。ザッハトルテはずっとお預けだ。でも、だからいいのかもしれない。ドキドキ・ワクワクが持続するもんな。いつ食べてもらえるかは分からないけど、作る約束も、告白の約束もしたんだからさ。

 だから、そう。頑張れる。

 仕事場で、少し会えるだけの関係。LINEも電話もほとんどない。一週間、二週間、ホワイトデーも過ぎて……三週間……。

 かっちゃんから言わせれば、『よくそれだけ性欲我慢出来るわね』、らしいけど、別にオナ禁してるわけでもないし。そりゃあまぁ、たまってる感じは無きにしも非ずなんだけどさ、木崎さんが頑張ってるうちは、俺だって頑張るよ。

 そして季節は四月へ──。

 極力、LINEも電話も、ましてや二人きりで会うことだって控えていた俺達だけど、今日だけはどうしても会いたいと思った。
 朝、LINEを入れる。

『今日、仕事来ますか?』

 バータイムだけでもいいんだ。どうしても会いたいから。

 だけど返事は『休みです』の一言。
 そっか。だけど、食い下がらずに頼んでみる。

『どうしても会いたいから、少しだけでいいので、時間作れませんか』

 するとすぐに返事が来て『午後からなら、いつでも空いてます』と言われた。
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