33 / 61
第三章:目印
2
しおりを挟む
今回、親族の貸衣装は、新郎側のご両親だけと窺っている。俺は慌ててホールからゲスト入場口へと急いだ。そして何食わぬ顔してお出迎えする。
「山本様、お待ちしておりました。本日は誠におめでとうございます。お日柄にも恵まれ、お二人が最高の晴れの日を迎えられましたこと、我々一同も嬉しく存じます。わたくし、今日一日、真一様と麻希様のエスコートをさせていただきます、土田蒼夜と申します。どうぞよろしくお願いいたします。ではご案内いたします。どうぞ、こちらへ」
俺はご両親を貸衣装ルームへと案内し、その後すぐに新郎の控室をノックした。
中から返事が聞こえ扉を開けると、ばっちり準備の整っている新郎が俺の顔を見てほっと安心したように笑った。
「ご両親が到着されました」
「あぁ、そうですか! 良かった。実家からここまでは遠いから、時間に間に合うかヒヤヒヤしていたんだ!」
「大丈夫でしたよ。真一さんも緊張されているでしょう。何か飲み物でも準備致します。何を飲まれますか?」
「あぁ、いいんですか? じゃあ、アイスコーヒーを。すみません! もう心臓が出てきそうなくらい緊張しているんですよ!」
「はは、大丈夫ですよ。僕がエスコートしますので、安心してください。堂々と、カッコよく居て下さい」
「心強いよ! 本当にありがとう!」
俺は一旦控室から出てコーヒーを入れると、それを新郎の元へと届けた。
「新婦様のご両親がご到着次第、挙式のリハーサルを開始する予定です。今のところ、タイムスケジュール通り進んでおりますので、ご安心ください。また呼びに参ります」
新郎はこくこくと何度も頷き、かなり緊張しているようだ。奥さんがしっかりしている分、プレッシャーも大きいのだろう。新郎に恥をかかせないよう、細心の注意を払わなきゃいけない。失敗は死んでも許されないぞ。
俺は控室から出てインカムの位置を直しながら大きく深呼吸する。
「顔合わせ会場、撮影スタジオ、準備如何ですか」
『顔合わせ会場、準備終了しております』
『撮影スタジオ、現在ライティング調整中です。間もなく完了します』
「了解。ご苦労様です」
インカムでのやり取りを終え、すぐにチャペルへ向かおうとした時、廊下の先で華頂さんが俺を見つめて立っていることに気付いた。
「華頂さん!」
「山本様、お待ちしておりました。本日は誠におめでとうございます。お日柄にも恵まれ、お二人が最高の晴れの日を迎えられましたこと、我々一同も嬉しく存じます。わたくし、今日一日、真一様と麻希様のエスコートをさせていただきます、土田蒼夜と申します。どうぞよろしくお願いいたします。ではご案内いたします。どうぞ、こちらへ」
俺はご両親を貸衣装ルームへと案内し、その後すぐに新郎の控室をノックした。
中から返事が聞こえ扉を開けると、ばっちり準備の整っている新郎が俺の顔を見てほっと安心したように笑った。
「ご両親が到着されました」
「あぁ、そうですか! 良かった。実家からここまでは遠いから、時間に間に合うかヒヤヒヤしていたんだ!」
「大丈夫でしたよ。真一さんも緊張されているでしょう。何か飲み物でも準備致します。何を飲まれますか?」
「あぁ、いいんですか? じゃあ、アイスコーヒーを。すみません! もう心臓が出てきそうなくらい緊張しているんですよ!」
「はは、大丈夫ですよ。僕がエスコートしますので、安心してください。堂々と、カッコよく居て下さい」
「心強いよ! 本当にありがとう!」
俺は一旦控室から出てコーヒーを入れると、それを新郎の元へと届けた。
「新婦様のご両親がご到着次第、挙式のリハーサルを開始する予定です。今のところ、タイムスケジュール通り進んでおりますので、ご安心ください。また呼びに参ります」
新郎はこくこくと何度も頷き、かなり緊張しているようだ。奥さんがしっかりしている分、プレッシャーも大きいのだろう。新郎に恥をかかせないよう、細心の注意を払わなきゃいけない。失敗は死んでも許されないぞ。
俺は控室から出てインカムの位置を直しながら大きく深呼吸する。
「顔合わせ会場、撮影スタジオ、準備如何ですか」
『顔合わせ会場、準備終了しております』
『撮影スタジオ、現在ライティング調整中です。間もなく完了します』
「了解。ご苦労様です」
インカムでのやり取りを終え、すぐにチャペルへ向かおうとした時、廊下の先で華頂さんが俺を見つめて立っていることに気付いた。
「華頂さん!」
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説


ダブルスの相棒がまるで漫画の褐色キャラ
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
ソフトテニス部でダブルスを組む薬師寺くんは、漫画やアニメに出てきそうな褐色イケメン。
顧問は「パートナーは夫婦。まず仲良くなれ」と言うけど、夫婦みたいな事をすればいいの?

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

両性具有な祝福者と魔王の息子~壊れた二人~
琴葉悠
BL
俺の名前はニュクス。
少しばかり人と違う、男と女のを持っている。
両性具有って昔の言葉があるがそれだ。
そして今は「魔の子」と呼ばれている。
おかげで色んな連中に追われていたんだが、最近追われず、隠れ家のような住居で家族と暮らしていたんだが――……
俺の元に厄介な事が舞い込んできた「魔王の息子の花嫁」になれってな!!
ふざけんじゃねぇよ!! 俺は男でも女でもねぇし、恋愛対象どっちでもねーんだよ!!
え?
じゃなきゃ自分達が殺される?
知るか!! とっとと滅べ!!
そう対処していたのに――やってきたんだ、魔王が。
これは俺達が壊れていく過程の物語――
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。


僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる